第6話 洋館

 なんだったんだろう?さっきの人達?

 私は路地裏を進みながら思う。


「あ!そういえばベリアル!さっきのは何だったの?」

(あー、もしかして【いたずら】の事?)

 ベリアルは私の頭の上を飛びながら、クスクス笑いながら答える。


(あれは、俺のスキルだよ!皆んなの事をいたずらするの!)

 ベリアルは手で口を隠しながら笑う。


 んー…ちょっと分からないな。

 ベリアルの説明では少し分かりづらかった私は

【鑑定】を発動させる。



【いたずら】…特定の範囲にいる敵に悪戯をする。状況によって良い効果になる事もあるが、悪い効果が発動する事もある。



 え!? ベリアルはこんなの発動させたの!? 中々リスキーなスキルだなぁ。


(へへっ! 凄いでしょ!)

 ベリアルは胸を張る。


 ……もう、鼻血出そう。

 私は無言でベリアルの頭を撫でる。



「あれ?」

 私は動かしていた足を止めて、辺りを見回す。

 辺りが夜の様に真っ暗になり、さっきまで上から入ってた光が、どこにも差し込んでこなかった。


(いきなり暗くなったー?)

 ベリアルがそう呟くと、一層暗くなり遂には近くにいたベリアルまでも見失った。


「ベリアル!いる!?」

 私は焦り、大声でベリアルがいるかを確認する。


 ベリアルからの返事はない。


 まさか、街中でこんな事が起きるなんて…

 私が手探りでベリアルの事を探す。


 すると突然



「カァーッ!カァーッ!カァーッ!」

「うわっ!?なに!?もう!!」

 カラスの鳴き声が響き渡る。



 数秒後、カラスの鳴き声が止むと、パァッと暗闇が晴れる。



 そこには如何にも怪しく、洋館がポツンっと建っていた。



「……なにここ。さっきまで路地裏にいたのに…。」私は呆然と洋館を見ながら言った。



「まぁ、何処に行けばいいのか分からないし、ベリアルの居場所も分からない。私の前にあるのは怪しげな洋館……! これは行くしかないわね!」



 私は内心ワクワクしていた。現実ではあり得ないこの状況。恐らく、このゲームだからこそやれる心躍る体験。



 先程まで焦っていた自分は、もういなかった。



「ん?」

 そこは部屋。

 そこには腰がとても曲がっている老人がいた。黒いローブに身を包み、手には本を持っていた。その老人の視線は窓から、門の前にいる黒髪の子供へ注がれた。



「おやおや…!」

 短くも発せられた言葉は、とても驚いている様に感じた。




「よーし! 入るぞ!!」

 私は洋館の前にある門に手をかけた。


 グッ!


「ブヘー!!」

 私は門に手をかけると、門は勢いよく開いた。

 私はもっと重いと思ってたばかりに、地面に顔から突っ込んだ。


 私が顔を上げると、


 ボタッ…ボタッ…

 私の顔についた泥が落ちる。



「なんでこんなに軽いのよ!? 鉄なのに!!」私は両開きになっている門を開けたり、閉めたりする。


「ふん!」

 私は門を思い切り閉める。


 バンッ!!


 ガラガラガラ!!


「あれ?」

 門はあまりの勢いに、崩れてしまった。



「…私、力0だよね?」

 なんなの、この力。

 私を手を開いたり、閉じたりしてみる。何も変わらない気がする…。



「うん……忘れよう!」

 私は門を壊した事を忘れて、洋館に入る。



 ギィッ…ピチョン


 ボロいなぁと、扉の金具の部分を見上げていると

「うわっ!目に水入った!」

 水が目に入った。



 扉を開くとそこはホールだった。壁には絵画、天井近くにはシャンデリア、隅の方には蜘蛛の巣、中央には階段。どこにでもある屋敷みたいな内装だった。



 しかし、私は違和感を感じていた。



 すると



 ギィ〜バタンッ!



 扉が勝手に閉まる。

 私は周囲を警戒する。私はある事に気づく。


「私自分のスキルほぼ知らないじゃん。」

 そう思い私は【鑑定】をする。


【魔力制御】…魔法を使う際、サポートする力。


【影魔術】…影魔術を使う事ができる。自分の影を動かす事ができる。


 あー、なるほどね。これって戦える?私一応、職業幻術師なんだけど?と思っていると



 カタカタカタカタ バタン!

 ギィ〜 カタカタ



 周囲の物が音を鳴らす。


 それと同時に四方八方から、あらゆる物が飛んできた。


「ほぉっ!?」

 と私は華麗にヘッドスライディングを決め、物を全部避けて伏せた状態を維持する。


「小さくてよかった…。」

 身長が小さかったお陰で回避するのは容易になったわけではないけど、当たりにくくはなった。


 私がそう思ってると、今度は洋館の奥の方からありとあらゆる動物が現れた。犬に猫、猿に馬、鼠に兎、蛇に羊、猪に牛。その他にも多様な動物がいた。動物たちが私目掛けて突進を仕掛けてくる。



 私は影魔術で自分の影を動かして、動物達を攻撃しようとした。


 しかし


 私は動物達を攻撃をせずに、そのまま動物達の攻撃を受け入れる事を選んだ。

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