少年は思い出すことを受け入れる ③

遊び──力のある者たちにとって支配的立場から弱者を甚振るのは、それはそれは楽しいことなのかもしれない。

ラウドには全く理解できなかったが、その歪んだ『遊び』を嬉々として受け入れる者もいるのは事実だ。

しかしアーウェンのように産まれてからずっと世間から隔離され、『与えれられるものが全て』として無気力に受け入れざるを得ない状態におとしいれられるのは、絶対に違うと言い切れる。

だからこそ、正したい。

その思いが、思想が、独りよがりだともわかってはいたが、ラウドにとっては貫かねばならぬ信念である。

「お前が自分の身にされていたことを正しく見つめ、本当はどう思っていたのかを思い出すのは難しいかもしれない。きっと長く思い出すことができなかったり、思い出して苦しくなることがあるかもしれない……だが」

「は……い……」

アーウェンの顔は歪み、義父の言葉を聞くことが辛そうではあるが、まっすぐ見つめてくるその目から、自分の目を逸らすことだけはしない。

それこそがアーウェンに掛けられた『呪い』のひとつなのかもしれないが、虚ろな瞳は動かなかった。

「きっとこの父が、母が、リグレやエレノア、カラ、ロフェナ……ターランド伯爵家に連なる者たち皆が、アーウェンを護り支え、助けとなる」

「た……す、け……?」

たぶんその言葉を、アーウェン自身を救う言葉を言われたことはないのだろう。

ラウドは知らなかったが、アーウェン自身は『新たな自分の支配者』として、義父の言葉を刻みつけようと見つめていた。


だから──『支配』ではなく、『救済』の言葉の意味がよくわからない。

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