神影と僕②

 誰かの言った通りに動く。逆らってはいけない。自分を守るためには何でもした。

君はいつも一生懸命で真面目で、協調性があってさ。

その背中を見てからというもの、ずっと尊敬しているんだ。


「目標があるんだ。それはね―」


否定することもなく、ただただ聞いてくれる君に、更に興味がわいた。

伸ばしっぱなしの長い前髪の隙間から覗く目。素顔を見てみたくなった。


文武両道、容姿端麗、クラスの人気者。意識しなくても周りに人が集まってくる。

でも求めているものはそれじゃない。僕は普通が良いんだ。


―今みたいな感情を劣等感と言うのだろうか。


僕は独りだ。ここには何にも無いんだ。

君が創ったこの世界、大事にしようと思ったよ。

人生は簡単だ、努力しなくても生きていける。僕はこの世界が好きだ。


霧雨が降っていた。

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