失踪

 アオイ。君は僕の知っている伊織ではない。

伊織の目はもっと純粋無垢で、君のように灰色がかっていない。

記憶を取り戻した僕は、蒼が居る場所まで向かうつもりだ。

そして、フロントガラスを叩き割る勢いでぶん殴ってやるんだ。

いつも通りの笑顔で接すると思ったか!


「どうして今まで騙してたんだ、ふざけるな。ずっと探してた!」


今まで気づかなかった自分も大馬鹿者だ。一度蹴とばしてやる!


待ちたまえ、どこへ行くのだ!君だよ君。

そこの小柄な…失礼。凄く顔立ちの整った、その、何というか…。


待ちたまえ、どこへ行くのだ!君、足が速いよ。

ああ、そうだ蒼くん。小説の書き方を教えるよ。


ええい、無視するでない!勝手に僕の先を走っている、

「蒼のことだーーーっっ」


栗色の髪。色白。A型。

振り向いた!今度は本物の君だ。


「神影先生!」

「何度も連絡しただろう。いい加減メールを見なさい!」


僕は笑顔で言った。やっぱり蒼も笑顔だった。

出会えた事、再び話せた事、君と共有した思い出が蘇る。


蒼の良いところは真面目なこと。

蒼の駄目なところは真面目なこと。


やっと来られた、この世界まで。

やっとたどり着けた。出会えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る