第14話 登校
朝食を終え、天気のいい外へと出る僕たち。
リーゼはあくびをしながら、マンションのエレベーターに乗り込む。
「何回乗っても不思議な感じがするな、これ」
「まぁ、いずれ慣れるんじゃないの?」
「私たちの夫婦関係みたいにか?」
「僕たちはずっと新鮮な気持ちでいようね!」
慣れ過ぎてぞんざいな扱いしかされないのはごめんだ。
僕はずっと出来立てのスープぐらい熱々の関係でいたいの!
リーゼは特にそんなことを考えていないのだろう。
あくびばかりをしている。
マンションを出て、最寄り駅へと向かう僕ら。
その途中で色んな人とすれ違うが、全員が全員、リーゼに釘付けになっていた。
「なんて美人だ……」
「耳が尖ってる……整形してるとか?」
「あんな美人と付き合ってるのか、あの男は……羨ましい」
付き合っているというか、結婚しています。
その辺の違いをしっかり説明しに行きたいが、赤の他人。
優越感に浸るだけで止めておこう。
リーゼはそんな周囲の視線を気にすることなく、僕の隣を歩く。
そして駅に到着し、電車を始めて見たのだろう、驚き、目をまんまるにしていた。
「凄いな……」
「うん。凄い可愛い」
「? なんの話だ?」
僕は驚くリーゼに見惚れてしまっていた。
いけないいけない。
ちゃんと会話をしなくては。
でもそれだけ可愛い君が悪いんだからね?
「これに乗ったら、学校の近くまで運んでくれるのか?」
「そういうこと。駅の名前だけでも憶えて帰ってください」
電車に乗り込み、動き出すと、リーゼは乗り慣れていないため、コケそうになってしまう。
だがそこは僕が旦那として彼女をしっかりフォロー。
抱きしめて倒れそうなのを阻止しましたよ。
「あ、ありがとう」
「どういたしまして」
僕は彼女を抱いたことにより、興奮し、緊張していた。
それにとてもいい香りがする……
できることならずっとこうしていたいものだ。
だがリーゼはパッと僕から離れ、窓の外を眺め出す。
耳の先まで真っ赤になっているのを見て、僕はもだえ苦しむ。
なんでそんな可愛い反応するんだよ!
普段とのギャップから悶え死にそうになるわ!
周りにいる男たちもそんなリーゼが可愛いと思ったのか、彼女を見てトローンと情けない表情をしている。
人の奥さんに見惚れてるんじゃないよ!
僕は彼女の隣に移動し、そして勝ち誇った顔を周囲に向ける。
「リーゼ。次の駅で降りるからね」
「ああ。分かった」
返事をするリーゼは僕から視線を逸らしたまま。
まだ照れてるのかよ……可愛いな、この!
駅に到着し、僕たちは外に出る。
ここは学校の最寄り駅で、周囲には僕たちと同じ制服を着た学生の姿が沢山ある。
「おい、あんな美女、この学校にいたか?」
「いや……見たことないぞ」
「隣にいる男は知ってる。蓮見だよな」
「ああ……あいつっていつも別の女と一緒にいたよな」
周りから聞こえてくる声に反応するリーゼ。
尖った耳がピクピクと動いている。
「おい、耕太」
「はい?」
僕を見るリーゼの目は、何か怖い。
僕は息を呑み、彼女の言葉を待った。
「他の女って……どういうことだ?」
「さ、さあ……? あ、楓のことじゃないかな?」
「……ああ。なるほど」
リーゼの目の色がいつも通りに戻る。
僕はホッとし、彼女と共に学校へと歩き出す。
周囲の視線は依然として僕たちに集中していた。
僕はあまりにも目立つために、緊張気味に歩いていたが……
リーゼはどこ吹く風。
別段視線を気にするような素振りはみせない。
僕はその胆力のような物に感動すら覚え、彼女に尊敬のまなざしを向けていた。
可愛いだけじゃなく、肝も座っているように見える。
生涯ついて行きますよ、リーゼさん!
なんて心の中で言っておく。
学校に到着し、彼女を職員室に送ることにした。
まずはなにはともあれ、先生と話をしなければいけないであろう。
職員室の前に到着し、リーゼに中に入るように促す。
面倒くさそうに中へと入って行くリーゼ。
リーゼが転校してくるという話はしっかり通っていたらしく、どうやら本当にこの学校に通うことになるそうだ。
君の知り合いって何者?
こんなことを難なくこなしちゃうだなんて……
「じゃあ、僕は教室に行ってるよ」
「なんだ。一緒にいないのか?」
「まぁ……学校の中では流石に一緒にいられないよ」
「そう。じゃあまた後でな」
僕はリーゼを置いて、職員室を後にする。
そして教室に向かい、自席に着く。
リーゼがいない時間ってのも、珍しい。
この間までいないのが当たり前だったのに、今はいるのが当たり前。
なんだか不思議な感じがする。
クラスは別々かな?
……変な虫がつかないだろうなと、少し不安になる僕。
すると教室のドアが開き、担任と共に入って来る女子の姿がった。
それは当然リーゼで……結局同じクラスになるようだ。
リーゼは僕に向かって手をひらひらと動かす。
僕は幸せに満ちた表情で、ニヤニヤしながら手を振り返していた。
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