第144話 日ノ尾峠から
そう、日ノ尾峠に行く途中の道からの景色は最高だった。
高岳のすぐ横を通り、根子岳との間を抜けていくのだけれど、その途中からの風景が日本離れしててたまらない。
草原の向こうのややゴツゴツした高岳の山肌が広がり、山の裾野を走る道は景色も良く
「いいじゃない。確かにいい道だわ」
と内心思っていたのだけれど、
コンクリの道に入ってからは狭いしカーブがきついしで。みんなゆっくり走るのだけれどヨタヨタして危ない感じになる。
私が特に。
でも、途中でバイクを止めて振り返ると、今まで見たことのないような険しい道と大自然の風景という姿が広がっていて。
途中広くなってるとこでみんなでバイクを止めて少し写真撮影。
「いいねここ」
「でも、カブとか小型のバイクでくるところよね」
「私はカーブが緊張してゆっくり景色見れなかった」
そんなことを言うと
「じゃあ今度は南阿蘇側からこっちに向かって走れば嫌でも景色見えて楽しいかもよ」
とはるなっちに言われてしまう。
箱石峠のような綺麗に舗装された2車線道路ではなく1車線から1.5車線だから車が来たら大変。
まぁ誰もいないんだけれど。
ただ、私たちが休憩してる目の前を数台のオフロードバイクが駆け抜けていったので、このルートを知ってる人はいるみたい。
「今どきDRーZ400のモタード乗ってる人いるんだ」
と何やら黄色いバイクを目で追いながらはるなっちが言ってたが、オフロードバイクなんて見た目が同じで全く区別つかないし。
そんなこと言うと、ヒナっちが
「ネイキッドも大体同じ形じゃない」
と突っ込んでくる。
まぁ確かに。
そこからしばらく走ると峠の頂上?についたけど全く見通しが良くないので、ただ森の中にいるだけ。
途中の景色のがよかったわ。
でも、南阿蘇側に入ると一気に景色が開ける。けど道の険しさは変わらないし下りになるのでさらに緊張したりするし。
そして、牧野にきて景色がひらけた!
と思ったら牛が放牧されてる
いいの?ここ走っていいの?
と走っていると、ゲートが見えてきて行き止まり。
え?さっきの人たちどこ行ったのかしら?
すると、しのぶちゃんがさっとバイクから降りてゲートを開け始める。
どうやら牛が脱走しないようにゲートが設けてあるだけで、自由に開け閉めして移動していいらしい。
みんなで終わったらしのぶちゃんが最後にきちんと閉めて、そして移動開始。
しばらく村内を走ってから南部広域農道へと出て、そのまま家まで戻ってきた。
広域農道は何しろ飛ばす人が多くて、大型バイクにも何台か抜かれたけどあの人たち何を急いでいるのかいつも疑問に思う。
いきなり鹿とか出てきたら大変だろうに。
家に帰り着くと、今日はまだ江川さん夫婦がいて
「今日は早かったね」
などと言いながら出迎えてくれた。
私たちも思ったより早く戻ってきたので「これからどうしようか?」なんて話をしてたところ
「これから温泉にでも行ってきたら?私がバーベキューの肉とか野菜の準備してあげるから」
とみどりさんに言われてしまいそのご厚意に甘えて、みんなで近くの白水温泉瑠璃へと向かうことにした。
温泉では、江川さんご夫婦についての話を色々と聞かれてしまったが、
母の後輩のような縁があって、それで色々と親代わりに親身になってもらっている、といった話をざっくりとして納得してもらう。
で、みどりさんが料理があまり上手くなかったので、料理を教えてあげてるという話をすると。
「さくらの料理か、確かに美味しいもんね。
今度さ、私たちにも簡単なの教えてよ。今後男とかできたら料理とか知ってると有利じゃない?」
「それは不純な動機」
「じゃあ、キャンプ飯みたいなの教えてよ。本とか見てもなんかよくわからなくて」
「それくらいならできるかも」
などと言いつつ温泉の中でとろけながら心地よい感覚を味わっていく。
やっぱり温泉はいいわ。前は苦手だったけど、今は体が馴染んでしまった感じ。
「阿蘇の竜とかと契約してると、温泉から竜のパワーをもらうことができるんですよ」
こそっと、しのぶちゃんが教えてくれる。
そうか、だから最近温泉に入ると調子がいいと思うのね。これからはもっと近隣の温泉巡りしないと。
近くの温泉について、地元民のはるなっちたちに聞いてみると、ホテルなども入れるからたくさんあると言うことを聞かされる
それ全部巡ったらいいツーリングにならないかしら。
などと言ってしまったので、次回そんな温泉巡りツアーツーリング、をやることになってしまった。
いや、でもこれから夏になっていくんだけど大丈夫かな。
温泉ではお互いのスタイルを見ては自分と比較してしまうわけだけど。
しのぶちゃんが案外しっかり出るとこでて引っ込むとこひっこんでるのが羨ましい。
このまま成長したらモデル体型になるのではないだろうか。
私は身長が割と高い方なので、そこそこ出てるとこは出てる自信はある。多分一番大きい。
ヒナっちは骨格が反則だから足が長いし腰が高いし、ハーフらしい感じ。
はるなっちは、全てが細やかで細くて華奢な感じが「ライダーやってる」感じがない。
それにしても、裸からは乗ってるバイクのイメージってなかなか浮かばないものね。
なんて話をすると、はるなっちは
「さくらは体型的にハーレーとかアメリカンかっ飛ばしてる感じよね」
「あんな足を前に出すバイクとか乗れないし」
「スタイルだけなら、ひなみなんかヴェスパとか乗ってそうじゃん」
「スクーターとかバイクじゃないし」
「スクーター乗りから文句言われるわよ」
「私はどうです?」
そう言うのでみんなしのぶちゃんを上から下まで眺めて
「HONDAって感じかしら」
「Suzukiって感じがする」
「私はヤマハかな」
「なんで私はメーカーなんですか?」
「チームカラーの服着てキャンギャルやってそうだな、ってイメージがあって」
「それはつまり、バイクに乗らない雰囲気があると?」
「まぁそうね」
「だったらひなみ先輩なんかもっとバイク乗りじゃない感じですよ」
などと、お互い勝手に全裸の状態で似合うバイクを言い合うというよくわからない展開になったけれど、私の場合は満場一致で「大型バイクに乗れ」という話になってしまったので、いずれはそういう免許も取りに行く必要が出てくるのかしら。今乗ってるスーパーフォアでもまだ手におえてないのに。
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