第130話 Vitpilen401

翌日、午前中にはるなっちがまずやってきて、バイクに積み込んでた大きな荷物を下ろしていく。

キャンプじゃないんだから、とそんな話をすると


「庭でキャンプをするから、テント張るのよ」


などとおっしゃる。


「私もソロキャンプとかに憧れてキャンプ道具買ったのはいいんだけど、全く使う機会がなくて。

だから、今回は練習ついでに庭先にテント立てさせてもらうわよ」


何やら、熊本出身の芸人の人がやってるソロキャンプ動画を見て影響を受けたらしい。

女一人でキャンプとかしてたら、危ない人に襲われたりしない?

と聞くと

YouTubeのいくつかの動画を見せてきて


「ほら、一人でやってるひと結構いるし」


「いや、画面に映ってないとこで彼氏とか男子が守ってるんじゃないの?」


「ソロキャンプって言ってるわよ」


割とはるなっちはその辺素直なのかもしれない。

画面の外にはスタップとかたくさんいて、キャンプしてるふりして車の中でぬくぬくと寝てるのかもしれないじゃない。


などと言うと、いくつかのユーチューバーを紹介され「後でこの辺見てから判断してみて」と言われてしまった。


女子一人でキャンプするのは、本当に人のいないキャンプ場か漫画の世界の話であろう。


はるなっちは可愛いから、一人でキャンプとか危なくてさせられないわ。

その時は私もついていくようにしよう。


そうなると、自分もキャンプの知識が必要になるので、後ではるなっちの揃えたキャンプ道具を見せてもらうことにする。


ひなっちは今回また珍しいバイクに乗ってきた

なんか未来感がありつつ丸目でレトロな感じもあって北欧家具のような印象のバイク。


「ハスクバーナじゃないの、相変わらず見た目はかっこいいわね」


とはるなっちが早速よっていく。


「Vitpilen401。“白い矢”を意味するバイクよ」


「401って、401cc?大型?」


「名前だけ、実際は390デュークと同じだから中免で乗れるの」


これは、またお父さんが仕入れたバイクとかで、元々家に125ccバージョンもあってそっちに乗ってこようとしたらしいけど「慣らし運転に使ってくれ」と言われてこっちに乗ってきたのだとか。


「近場を高速道路使わずに走るなら回転数そんなに上げないから、ちょうどいい慣らしになるからって押し付けられた感じ」


「セパハンだと、運転前傾になりすぎてキツくない?」


「長距離移動するならデュークの方がいいけど、今回みたいに近場をうろうろするくらいならそんなに変わんない、はるなもあとで運転してみればわかる」


はるなっちは早速またがって乗り心地などを試しているようで、

自分のCB400s sをセパハンにした時の感覚をイメージしているのかもしれない。


しかし、ヒナっちが乗ってると様になるバイクね。KTMの派手な感じより落ち着いたデザインのこっちの方が似合ってる。

ツインテールになったはるなっちがまたがると、アニメに出てくるSFバイクっぽく見えてくるので面白い。

乗る人間によって、レトロで品がよく見えたり、未来的に見えたりするデザインは北欧ならではなのかしら。


で、自分のスーパーフォアを見ると


なんとなくずんぐりぼってりとした印象。


日本人、って感じだわ。


だから、私にはこれが似合うと思う。

同じバイクに対しても、それぞれ考え方とか色々あるのよねえ。


そこにCB125Rのしのぶちゃんがやってくる。


今回はみんな丸目でネイキッドスタイル。

なんかそういう集会がありそうな感じね、それにしても私たちのバイクのメーカが偏っている。

ヒナっち以外みんなHONDA。


「熊本にはHONDAの工場あるから、地産地消よ」


とはるなっちが言うと


「小型バイクとか海外生産じゃない」


とヒナっちが突っ込む。


「スーパーフォアは熊本工場だし」


「CB125Rはタイでしょう」


「え、じゃあこれ輸入車なんですか?」


とかしのぶちゃんが驚いてたりする。


「最近のバイクは東南アジアとかインドで作ったのを輸入してるの多いわよ。

125ccは大体海外生産」


最近は国内生産と海外生産の違いはほとんどないので、海外メーカーも小型車種は東南アジアなどで作ってるパターンが多いのだとか。


なるほど。

中型以上は国内生産が多いけど、という話だけど250までは海外がメインなのね。

バイクもグローバルな感じなのね。


で、ヒナっちもなぜか大荷物を持ってきていて。


「はるなが庭でソロキャンやるって言うから、私も持ってきた」


とキャンプ道具を広げてくる。詳しいメーカはよくわからないけど、テントに寝袋になんか色々。

焚き火台も持ってきた、とか言ってるけど庭で火を燃やすつもりなのかしら。


「みんな庭でキャンプするの?」


と私が言うと


「私、キャンプ道具とか持ってきてないです」


しのぶちゃんが不安そうにそんなことを言う。みんな庭キャン

すると思ってるのかもしれないから


「私は家で寝るから、一緒に寝よう」


と私が声をかけると嬉しそうな表情をして笑ってくれた。

あ、妹とかいるとこんな感じなのかなぁ。


皆それぞれ荷物を一旦下ろして、一息ついてからバイクでまず「押し戸の岩」へいく計画になっていた。

阿蘇山のパノラマラインを超えて大観峰の峠を登り、マゼノミステリーロードというところを目指していく予定。

途中で阿蘇の「そば街道」を通るので時間が合えばそこで蕎麦を食べていく予定

11時の開店時間に行けば空いてるだろうという計画


この日は押し戸の岩から小国町を通り大分県との県境にある「松原ダム」へ向かう。

これはヒナっちが最近「ダムカード集めてる」と謎の趣味を披露してきたので話を聞くと、ダムそれぞれにカードが存在し、それを集めて回る人たちがいるそうな。

「ダムとか見てなんか楽しいの?」

とはるなっちが聞くと


「ダムができるまでにさまざまなドラマがある。

水に沈む土地に住む人とか、建設する人とか、そして、大自然と戦う人類の姿が映し出されてるみたいでカッコいい」


拳を握り力説するヒナっち。

「初心者向けダムの歩き方」

とかいう本を見せてくるのでちょっと目を通すと、確かに思った以上に面白そうな感じ。


「ダムって、ただそこにあるだけで、全く興味なかった」


「今日は、松原ダムに行った後は菊池の竜門ダムに行こう!」


などと語ってくるが。


「じゃあその後四季の里ふれあい動物公園行って、温泉入って帰ってこようよ」


「温泉とかあるんだ、あそこ」


「そこ、どんな動物いるんですか?


目を輝かせてしのぶちゃんが聞いてくる。


「カンガルーとかがメインね。昔はウォンバットもいたって言うけど流石にもういないわ」


はるなっちがカンガルーの前足の真似をしながら説明すると


「カンガルーとふれあいながら温泉に入れるの?」


ヒナっちが何か勘違いしたことを聞いてきたりする。


そんなこんなで、とりあえず出発して細かいことは考えていこうという話となった。








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