第123話 竜と関わるために

四葉おばさん、さっきは寝てたわけではなく瞑想状態に入って竜と交信していたという話を聞かされた。

白龍と話をする際は、脳波をθ波あたりまで落とす必要があって、それを行う訓練をして白龍の妻となることを認められるのだとか。

脳波の話でδの時が寝てる時、θは寝てるか起きてるかの間の時なんだとか。


よくリラクスでα波が出る、というのはシータよりも上のとこらしく、覚醒状態で人間が過ごしている状態が大体β波なのだとかそんな話。なんかα波が出てると眠くなるのかと勝手に思ってたけど、まだ寝る脳波ではなかったのね。


そのθの状態に自分でなるには、寝るか起きるかその間をまどろみの状態でありながら起きている状態を維持する必要があり。

普通だったらそのままδ波になって寝るのだけれど、それを踏みとどまる訓練をして今に至るのだとか。

なんか面倒なことしないといけないのね。


でも、私何にもしなくても佐藤くん呼び出したら見えるようになるんだけど。


と思って聞いてみたら、その契約者を呼び出した時に強制的にθ波に脳波がさせられているのだろうという話をされてしまう。


「私たちは、自分でその状態を作らないといけないから苦労するんだけど、あなたたちの家は契約者というものを使うことで、本人は苦労しなくても見えるようになるところが羨ましいと思うところなの。

でも、血縁にしか使えないところを見ると遺伝子的なものが影響してるのかしらね」


と言われてしまう。

つまり、私は佐藤くんを呼んだ状態だと、常に寝てるか起きてるかわからない状態で過ごしていることになるらしい。

でも、私しっかり目覚めてると思うのだけれど。さっきもバイク運転してきたし。


「脳波がその状態でも覚醒している人はいるのよ。色々な修行積んだ人とか起きてるのにδ波になってたり、ショートスリーパーと言われる人たちも起きてる時間にδ波になっておきながら寝てる状態を作ってる人もいたりするわ」


と言われても。私には自分の状態がよくわからない。

とりあえず、四葉おばさんが無事であることを岩の向こうのおじさんたちに佐藤くんから伝えてもらったので、私はこのままここに居たらいいのかしらね。


「それにしても、まだ壊れてきそうな岩の隙間をよく通ってきたものね」


「いや、佐藤くんが大丈夫って言ってくれたから通れたんです」


「信頼してるのね」


「信頼、というか、あてにはしてますね」


「普段だったら、そんな危険なことすると思う?」


「いやぁ、なんか急がないとって思ったものですから」


「その直感的な行動をするのも、θ波の状態で出てくるのものなの。

普段しないような行動、感で進んでしまうこと、それが正確であることを見抜くというのかしら」


それ、ニュータイプとか言われるやつじゃないの?

時が見えたりとかアクシズ押し返したりしてるやつ

私がなんとなく、そういえば夜中の峠道をいくら佐藤くんがいるからと言って、あれだけ頑張って走ろうとか普通は思わないな、と考えていると


「霊能者とか超能力者とか言われる人の感覚に近くなるもので、その時に自分は全能ではないかとか思ってしまう瞬間が出たりするものよ。ゾーンとか言われる時もその状態に近いかしら。

さくらちゃんはそういう感じはないかしら?」


「全くそういうことはないです」


「竜とかと縁ができて、自分が特別とか思ったりしない?」


「いや〜そういう世界もあるのだなと驚いたりはしますけど、特別とはそんなに思わないです。周りに竜と繋がってる人が割といるじゃないですか」


そう言うと、ちょっと四葉叔母さんは笑って


「そうか、そうね。お姉さんの娘だものね」


と言って、空を見上げた。

そこには白龍が浮かび、こちらをみている。 


「私が心配してたのは、自分が特別な存在と思い込んで今回のように大竜を操れると勘違いしたりしてないかって事だったのだけれど。

私の家で改めて会ってみると、そんなこと考えてないのがわかって安心したのよ。

だから、春間の家が断ったなら、別にここに連れてくる必要はないかなと思っていたのだけれど。

これも導きなのかしらね、結果的にここに居るというのは」


まぁ、本来であればここに来る必要はなかったわけなので、こんな出来事がない限りは白龍などとの関わりは生まれてこなかったと思う。


「あれが、四葉おばさんが結婚してる竜ですか?」


上に優雅に浮かんでいる白龍を示し聞いてみると、


「結婚、と言うか儀式で繋がっている龍神様よ。私たち大津家の系列が守ってきた竜たち」


「たち?」


「複数いるでしょう。私たちの家は南阿蘇の全ての竜を統べるところ、分家がそれぞれの竜を守っているけど本家である我が家がその全てを把握して、その竜の中で一番力の強い、この竜神様のお世話を主にしているのね」


「つまり、南阿蘇で一番強い龍がこの人ですか」


「人ではないけど、一番古い龍ね」


「今回、岩場が崩れたりしたのは、私が阿蘇の竜と契約したからですか?


恐る恐る聞いてみると、


「たまたまよ。いつもは山の上で寝ている龍がおさえてた岩がずれて落ちてきたの。

その龍が飛ぶ原因を作ったのがさくらちゃんだから、さくらちゃんのせいといえないこともないけどね」


と言って笑ってくれた。

龍神の方も特に怒るとかそのような感情ではなく、阿蘇の大龍が起きたのでそれに対してのアピールを行えるチャンスがきた!と喜んでいるのだとか。


先ほどまで竜との対話を行って、白龍の機嫌が悪いわけではないのを確認し安心したと言ってる。

白龍たちにとっては、数百年ぶりとかで大龍が動いてくれたので、むしろラッキーということらしい。


うーん、龍たちから問題視されてないのはいいけれど、人間社会には地震があったりなんか山が崩れたりと問題しか起こってない気がする。

今回、白龍などが外輪山から飛び立ったせいで南阿蘇の峠が一つ潰れたし、阿蘇市側でも山崩れがいくつか起こっているとか。


これって、私のせいになるのかしら。


四葉おばさんとか冬美おばさんは私を責めるようなことを言わないけれど。

多分迂闊なやつとは思われているんだろうな。


もっとこの竜とか見えない存在たちのことを知らないといけない。


そこで、ちょうどいい機会なので四葉叔母さんに白龍たちの話を詳しく聞いてみることにした。


佐藤くんからの連絡では、そろそろしのぶちゃんたちが到着して重機で岩を退けてくれるということで。

そして、

「僕がそっちに行かなくてもいいですか?」

と聞かれたけれど断ったら。

「おじさんたちから色々聞かれたりするんで、困ってるんですよ」

と泣き言いわれた。


「だったら、トラック誘導して来ますとか言って別行動すればいいじゃない」


アドバイスすると、そういうことには気づいてなかったようで。

精霊だから、おじさんとかとの適度な距離感というのは掴みにくいのかしら。

春間家の人としか接してないから、一般的な日常会話とかが苦手なのかしら。


佐藤くんについても、知っていく必要があるし。

何か、新たな勉強することが増えて来たように思えてしまうわね。



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