鹿児島編
第103話 ユースホステル
ファリーから降りて、またフェリーに乗るための移動。
桜島へ渡るためにフェリーに乗るのだけれど、
「桜島フェリーの中で食べるうどんが美味しいって!」
はるなっちがそんな情報を持ってきて、食べる気満々でいるけれど
「この後、宿で食事でるよ。明日にしたら?」
などとヒナっちに言われてたりする。
ヒナっち、船酔いに陥らず無事に到着できてよかった。
海が穏やかで天気も良かった。春にしては穏やかだったとなんか船の人も言ってたかな。
屋久島種子島に行くフェリーではバイクががっちり締め付けられてたけど、桜島フェリーはそのまま乗り込んで、お金も降りた先で払うとかそんな仕組みでちょっと面食らった。
「荷物満載だけど倒れないかな?」
と私が言うと
「そんな話は聞いたことないから大丈夫よ」
と高藤先輩はざっとTwitterの情報を確認してるみたいだった。
どうやら、高藤先輩のフォロワーに対して問いを投げかけると、いろんな人から答えが返ってくるのだとか。
今はそんな時代になったのね。
船旅はあっという間で「こんな短時間でうどんとか食べられるの?」と思うくらいだったけど。
桜島に到着。
遠くから見ると「火山がそのまま島になってる」感じがあったけど、上陸すると山頂が見えなくなるのであまり迫力がなくなる。
普通に街とかあるし。
よく「阿蘇は破局噴火したら全滅する」とか「火口に人が住んでるとか信じられない」とか言うのがたまに見受けられるが。
桜島に比べれば全然問題ないと思ったりするのだけれど。
こんなジャンジャン噴火してるところに人住んでるんだもんね。
市街地からちょっと上がったところに「桜島ユースホステル」が立っていた。
学校みたいな立派な建物でちょっとびっくり。
青少年自然の家みたいな感じなのね。
バイクを駐輪場に止めて受付に行くと4人で使う部屋を案内された。
人が多い時は相部屋になるらしいけど、今日は少ないから一部屋使っていいと言われたし。
部屋の中にはベッドが8個あるのね。
奥に少しスペースがあって、荷物置くとこもあるし。
「こんな部屋も、旅してるって感じでいいわね」
「でも、なんだか学校の合宿とか思い出してしまう作りね」
と言いながら高藤先輩は動画を撮影している。
一応、撮影の許可は得ているらしく、プライベートとか個人情報が出ないようにしてもらえれば良いとか。
対応はそれぞれ宿で違うのよね。
「温泉があるって!」
はるなっちがそう言いながら部屋に据えられた案内を指さす。
時間が18時から入浴可能と言うことだから、その時間にいけば一番乗りね。
食事は19時からにしているので先に入るか後に入るか。
ロビーではコーヒー紅茶飲み放題。
あの、缶に入った粉のレモンティーが置いてあって、それをお湯でといて飲み放題だったりする。
つい懐かしくて飲んでしまったけれど。
そこで食事の時間と温泉の時間を確認していたわけだけれど
「だったら、先に入って後にも入ればいいじゃない」
はるなっちが最もなことを言うので、みんなでバタバタ準備して温泉に移動する。
男性がちらほら姿を見るけど女性の姿はない。
と言うことは、私たちで占有できる可能性大!
一番風呂には誰もいなかった。
濁ったお湯で初めてみる。阿蘇の温泉は無色透明ばかりだから珍しい。
まずは体を洗い、温泉に入ると自分の体も見えなくなってしまう。ちょっと熱めの温泉は心地よく、旅の疲れを流してくれそうな感じ。
と年寄りみたいなことを考えている横で、はるなっちとヒナっちは泳いでるし。
「行儀が悪い」
「誰もいないからいいじゃない」
と言って泳いでるが、はるなっちみたいに髪が長いと頭の上にまとめるのが大変そう。
湯船に髪の毛が浸かるのは避けるべし。
と教えられていたのか、いつも手際良くくるくるっと髪をまとめる姿に感心する。
長い棒があるとまとめられるらしく、お風呂の時はカンザシのような木の棒を持って入浴してるし。
「カメラ持ってきて撮影したいところね」
「私たちが映り込んだらダメでしょ」
「お湯が濁ってて見えないからちょうどいいと思うけれど」
などとヒナっちと高藤先輩もお湯にゆっくり浸かりながら、そんなことを話している。なんとなく、旅を通じて4人の精神的な距離がかなり縮まったような気がする。
こうやって裸の付き合いもまた良しというものよね。
そんなふうにゆったりしていると、ガラッと扉が開いて誰かが入ってきた。
はるなっちたちはすぐに泳ぐのをやめ、私がなんとなくその人物の顔を見ると
「あら、こんなことろで!」
「冬美さん!」
屋久島のガイドでやってきた、秋子さんの妹、ネイチャーガイドの冬美さんだった。
高藤先輩はよく見えないのか目を細めているけど。
はるなっちとヒナっちが駆け寄る
「うわーまさかすぐ会えるなんて」
って言いながら手を取ってブンブン振り回してるけど、お風呂場では危険なのでやめたほうがいいと思う。
「明日、鹿児島でマイクロバスに一緒に乗って、ツアーガイドとして屋久島を回っていく予定で、そのお客さんが宿泊してるから一緒にいるの」
「お客さんと一緒にお風呂とか入らないんですか?」
「明日から3日くらいずーっと一緒にいますからね。温泉はゆっくり入りたいと思って」
「じゃあ私たちお邪魔ですかね」
高藤先輩が言うと、
「いいえ、あの後の話とかちょっと聞いてみたいから会えて良かった」
と言って笑ってくれる。
その後、湯船にゆったりと浸かりながら、私たちのツーリングの話と、
私が姉の秋子さんとあって話をしたことを伝えたり。
「姉は、変わった人だったでしょう」
と言われ、ハイと答えるわけにはいかず
「割とテンポが速い人でした」
と答えておく
「テンポがはやい、いい言い回しね。性急とか慌ただしいとかそんな表現が合う人だから、何か動いてないと死にそうなサメみたいな姉ですよ」
「お姉さんは今も作曲とかやってんですか?」
はるなっちが聞くと
「そう言う仕事で、何かと島中とび回ってるし、私のネイチャーツアーで野外で皆で音楽を演奏するという内容もあるけど。その時の打楽器とか色々手伝ってくれますよ」
野外で音楽、どうやるのかと興味津々でヒナっちが聞く。
打楽器弦楽器、素人がなんとなくリズムを取れそうなものを用意し、それを皆で演奏しつつ、秋子さんが即興でその風景に合う音をキーボードやギターで奏でていくと言うものらしい。キーボードがウクレレだったりギターだったり木琴だったりとその時によって違うらしいけれど。
その風景のその時間でしか演奏されることのない音楽。
それはそれでとても楽しそう。
「そんなツアーやってたんですか」
「姉の都合もあるので、要予約、悪天候の時は屋久町のホールを借りてやったりするから、雨天対策の内容として使ったりもします」
「やってみたかった〜」
「ふふっ、次回、予約お待ちしてますよ」
まさかのガイドの冬美さんとの再会があって、賑やかな入浴となってしまった。
他に人がいなかったのが幸い。
脱衣所で着替えていると、
「そういえば、姉から「この手紙を九州の方で出しておいて」と言われて渡されたのがありまして。あとでちょっと私の部屋に来てもらっていいですか?」
と冬美さんに言われてしまう。
食後に連絡して、行きますね、と答えておいたけど。
秋子さんからの手紙?なんだろう。
あの時に言い忘れたこととかあったのかな?
そなことを考えつつ、食堂に向かうと秋子さんはお客さんたちのところへ。
ツアーは10人くらいの女性ばかりのグループみたい。
年齢は意外と幅広いから何の集まりなんだろうか?
食堂で出てきたのは「カツ」普通のトンカツ。
今まで海の幸尽だったので、こういう普通の肉が出てきてくれるのは嬉しかったりする。
「豚肉よ!」
とかはしゃいでるはるなっち。なんか私たちが肉も食べられない貧乏な人っぽいから大声で言うのはやめて。
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