第100話 島の夕日
しかし、さっき竜とあった時に「半非物質」な存在とか言ってたけど。
それってなんのことかしら。精霊とも違う何かが存在してるってことなのかな?
竜との用事も済んだので、県道76号をかっ飛ばして長浜の方へといこうと思ったら、道間違って途中で県道583号に入ってしまった。
アレェなんでこっちにきたかな。
人生、迷うことばかり。
とりあえず海岸沿いに出て、そこから右に行けば目的地。
と思ったので海岸まで突っ走ると、何か「雄龍雌竜の岩」という案内を発見。
さっき竜がいたのでちょっと興味を持ったのでいってみると、しめ縄で結ばれた、海にある岩が姿を表してきた。
駐車場とかあるので観光地みたい。
バイクを止め、写真撮って説明を読むと
「向かって左が雌龍岩、右が雄龍岩。
天の神様は、力持ちで働き者の雄龍王に人の住める緑の美しい島を作るように言い。雄龍王は心優しい雌龍姫の協力を得て種子島を作り上げました。
神様は二人に人間の種子をあたえ、二人は生まれた人間を育てながら暮らしていきました。その後年老いた雄龍王と雌龍姫は大きな岩となったと伝えられ、今も種子島の繁栄を見守っている」
という感じの説明文が書いてあった。
もしかして、あの青い竜はここでいう雄龍神様だったのかしら?
その割には女子高生のキッスくらいで舞い上がってたけど、奥さんいたんじゃない。
ということは、雌竜様もどこかに居るということかしら。
今回佐藤くんはあの青い竜しか案内しなかったから、今は一人で単身赴任してるのかしらね。
それとも、奥さんの竜とは死に別れたとかだと、ちょっと可哀想ね。
そもそも、竜って死んだりするのかしら?
さっきも「1000年生きられる」とか言ってたくらいだから、長生きなのだと思うのだけど。
後で、九州についてから佐藤くんにでも聞いてみよう。
それにしても、この島でやることがあるから別行動というのはなんでだろう?こんな感じで、巡回者になっても私は仕事しないでバイク乗ってたらいいのかな。
それだったらいいかもしれない。それでお金も出てくるならさらにいいのだけれど。
もらった青い鱗売ったらいい値段になるのかしら。
とかしょうもないことを考えていると海岸沿いを走る道に出てきて、長浜へと辿り着いた。
そこではみんなが走り回っているのが見えて、近くの駐車場にバイクを止め合流する。
「すっごいね、ここ。屋久島よりも海岸広くていい感じ」
とはるなっちが言いながら、貝殻などを拾っている。
「どう?挨拶は無事終わった?」
高藤先輩が身体中にゴープロをくっつけて聞いてくる。
頭、首、肩にも撮影機材がついてるけど、全部把握してるのかな。
一応、挨拶は無事終わり、このあとは父関連の用事がないことを伝え。
「じゃあ、これから昼食食べにいくか、食事は適当にして時間に余裕があるから今日のうちに宇宙センター見に行くか、どっちがいいか決めようとしてたの」
とそんな話になっていたらしい。
私としては、夕食が豪華なら昼は適当でいいかな。
と伝えると、みんな同じ意見だったらしくそのまま今日のうちに宇宙センターへと移動する。
島なのに国道があるのね。
国道58号から途中のファミリーマートに立ち寄って軽く食事。
屋久島みたいに島の周りを回らないといけないと思っていたけど種子島は真っ直ぐ突っ切って移動できるので移動に自由度がある分屋久島とは違う感じね。
だから、なんとなく屋久島のような「島」って感じが足りないのかも。
道がたくさんあって、普通の田舎って感じに思ってしまいそう。
屋久島にファミマとか普通のコンビニってあったのかしら?
私は見た記憶がないのだけれど、種子島にはあるのね。人口多いのかな?
そこから島の中を走っていくと、なんとも「島っぽくない」風景になるのだけれど、少し走るとすぐ海が見えてくる。
県道586号を通って種子島宇宙センターへと出てくると、
今日宿泊予定のホテルがすぐ海沿いにあって、海岸沿いの綺麗な砂浜を眺めつつ移動することになる。
ちょっとテンション上がるわね。
そこから資料館横を通って駐車場にバイクを止める。
そして、転がっているロケットの模型を発見し、そこで写真を撮影したり。
「ここのどこで打ち上げやってるの?」
「ここはセンターで、打ち上げするところはまだ先の方よ」
「え、ここで打ち上げもしてるんじゃないんだ」
「ロケットって、ミサイルみたいなものだから爆発したら危険じゃない。だから事務所と現場は離しておくとかするのよ」
と高藤先輩が言う。
なるほど、感覚的には発射状の隣に建物があるのかと思ってた。
見学する際は事前申し込みとかツアー参加が必要なのでそちらは行かず。資料館とかこの辺の周辺にある宇宙関係の模型とか見ながらはしゃいでた感じ。
宇宙についてとかよくわからないけど、なんか色々やってるのねー
と言った感想は持つことができた。
それにしても、大きなロケットをこの島で作ってるわけではなくて、他所から運んできてるのにも驚いたけれど。
だったらいっそ船から打ち上げとかできたらいいのに。
と素人なりの勝手なことを考えてみるが、固定するのが大変よね。横に飛んでったら日本の国内に落ちちゃうし。
なんか、さっき見た竜のサイズが大きかったせいもあるけど、ロケットが思ったより小さく見えてしまったりする。
そういえばあの竜は空飛んでたけど清掃権は抜けられないのかしら?
宇宙情報センターを堪能して、ロケット発射場の近くまで行ってみる。
昨日はここからロケット飛んでいたのね。
「この辺、近くであの打ち上げ見たら迫力あったでしょうね」
「屋久島であれだけ光を感じたから。すっごい音とかあるのかな」
とかそんな話をしつつ。
ロケット打ち上げるために、これだけの施設を作る必要があるのだから、そりゃお金かかるわよね。
宇宙に色々飛ばしまくったおかげで、スマホの位置情報とか使えるようになったわけだから。
こういうとこにはもっとお金を使って、もっと便利になってくれるといいものよね。
しかし、
竜とか精霊とか非科学的なものを見た後に、科学の最前線みたいなとこにやってくるのも面白い。
この二つが関わり合って、今の社会が成り立っているのかしらね?
女子なので。
あまり科学的な話にはならず
すっごいね
バイクの後ろにこのエンジン積んだらすごいかな
とかそんな話で盛り上がってたところ。
これらロケットエンジンが使い捨てというのも勿体無い話。
そして、いわさきホテルへと移動してチェックイン。
なのだけれど
「本当にピンクなのね」
結構激しいピンク色。
割と目立たないのは南国のせいなのか。
こんなん都市部に立ってたらラブホよ。
案内された部屋はオーシャンビューの4人部屋。
「うわー海よく見える!」
とヒナっちはベランダへと飛び出していく。
が、すぐ戻ってきて
「なんだ、夕日見えない」
とおっしゃる。
どうやら左側に行かないと夕日はよく見えないみたい。
まだ太陽は水平線まで行ってないけど、夕日見るなら移動しないといけないのね。
じゃあ、夕日は後で竹崎展望台に行って見るという話になり。
まずは部屋の探検。
ベッドが4個あるのかな、と思ってたら畳の部屋と寝室がくっついてて。
寝室にベッドが2個置いてあって、畳に2人分の布団が置いてあったりする
ということは、寝る時はベッドがわと布団側で分かれて寝るわけなのか。
でもなんとなく、みんな和室で寝そうな気もしなくもない。
なんとなく和室でゴロゴロ。
座椅子に座ってWi-Fi繋いでるヒナっち。
窓際のテーブルにパソコンとかを引っ張り出して、撮影した動画を取り込んだり、インターネットに繋いだり。
Twitterで発信したりと一番忙しくしている高藤先輩。
特に何もすることなく、ただ畳にゴロゴロしてるはるなっち。
「なんでゴロゴロしてるの」
「実家の畳の部屋思い出すから落ち着くの」
などと言って、ゴロゴロしている。
高藤先輩がひと段落ついてから、夕食は18時30分くらいにして、その前に夕日を見に展望所まで散歩することに。
20分以内で着くくらいなので、途中にある「象の水飲み岩」とかを眺めながら歩いていく。
海岸沿いを歩くのは気持ちい。
それに、象の水飲み岩、って、なんかもっとこう、昔から言われてる言われとかなんかないのかしら。
「確かに、像が鼻をつけてるように見えるね」
「像は鼻から水飲めないから、あれは水啜り岩だよ」
「何その知識」
「確かに、象は中で水を啜ってから、それを口に運んで飲んでるので人間みたいに鼻腔と口腔が繋がってるわけじゃないのよね」
高藤先輩はそう言いながら写真を撮ってる。
動画の方はカメラをはるなっちに渡して自由に撮らせてるみたい。
どうやら、はるなっちの映像センスがなかなからしく(常識的ではないらしい)動画的に面白い映像が多いからだとか。
一体どんな動画が撮影されているのかしら。
そして、展望所に着く頃には太陽が水平線近くへと降りてきてた。
カップルが妙に多いのは気になるけど。
ゆっくりと海に沈んでいく夕日。
太陽の光が海に溶け込んで、そして完全に水平線の下に隠れたら空の雲を赤く染めていく。
その後、濃い群青色の空が押し寄せてきて、紫色に光る海と空、そしてグラデーションのかかった闇が広がる。
すっかり見惚れてしまった。
カップルとかが肩を抱いたりしてるけど、わかる気がする。
私も思わず隣のはるなっちの肩とか肩とかに手を置きそうになったもの。
種子島に到着して、色々あったけど1日が終わる。
さて、明日はついにこの島ともお別れ、鹿児島では桜島ユースホステルに一泊して家に帰る予定だけど。
明日は昼の船で移動するので、それまでどこに行こうかなぁ。
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