第49話 横浜ロイヤルパークホテル
寒くなる前に、YSPに戻りバイクを返却する。
今回、トリシティは安全な海岸沿いの道でちょっと運転させてもらったけれど、ものすごい安心感があってよかった。
スクータータイプってのもいいわね。150ccもあれば十分な動力性能があるし、後ろに箱つけたらいい通学バイクになりそう。
でも、スーパフォアに慣れてしまうと両手ブレーキはちょっと恐ろしい。
WR250Xの方は、怖かった。
ちょっとXSR155のつもりでアクセル捻って出発しようとすると前輪が浮いた。
「これ無理」
そう言ってはるなっちに交代したんだけど、あんなにガツンってくるなんて、私にはまだ無理だわ。
ヤマハのバイクに今回乗ったわけだけど、何か違いがあるかと言われるとあるのだけれど。メーカーによる違いがわからないくらい乗ったバイクの癖があって。
純粋にどちらのメーカーのバイクがいいとかないんだけど、今回の150ccというジャンルはちょっと面白かった。
あと300ccとかHONDAにはない排気量のラインナップがあるのでそこも面白かったような気がする。
デザイン的に、なんとなくシャープな感じ?がするのがヤマハなのかしら?
今日ヒナっちはホテルに一緒に泊まることを、従兄弟には伝えてなかったらしく何か引き止めるような感じになってたけど。
「友人とイブは過ごすから」
ということで、一緒に移動することになった。
従兄弟さんかわいそう
桜木町駅で地下鉄を降り、地上に出てくると、目の前にランドマークタワーが聳え立っていた。
「あのてっぺんは展望台になってて、そこからみることもできるわ」
とヒナっちが言うけれど。
しかし、いきなりこれが立ってても比較対象物がないので、割と低く見える。
本当に品川プリンスより高いのかしら?
まず「どこから入るの?」と迷ってから、入り口を発見しホテルのロビーへ移動。
何しろ「なんかすごい」ところで、何がすごいと聞かれても「なんか雰囲気がすごい」という感じ。
語彙力がない女子高生にはちょーすごいくらいしか言えないの。
客室は地上200m以上ということで日本で一番高いとこにあるホテルらしく、至る所にそれがアピールしてある。
客室まで無事辿り着けるかしら。
と思っていると、案内してくれる女性がサッと出てきて私たちをエレベーターに誘導して一緒に乗ってきた。
「客室までご案内しますね」
と優しく微笑まれ、さすが高いホテルは違うのね。
とグレードも高いことを実感する。品川プリンスだとこんな人出てこなかったし。
「学生さんですか」
とか
「ご旅行ですか」
とか
そんな会話をしながら上に上がるのだけれど、ヒナっちは慣れた感じで会話を自然に進めてたりして、さすがと言うしかない。
はるなっちは割と初対面の人に弱いのが今回の旅でよくわかった。
そして案内されるときに
「今回はお部屋がアトリエのデラックスツインのお部屋になっています」
と言いながら扉を開けて室内へ案内されると、
目の前には大きな窓、そして窓際にはカウンターがあってそこに座って外が眺められる仕組みになってる。
ベッドは、3つ並んでて、一つが臨時のベッドということだけど、部屋が広い。
でっかいテレビが壁に埋め込まれるようになってて
なんかこう、「リッチな世界」って感じかしら。
案内のお姉さんは使い方などをサッと説明した後に、何かありましたらお気軽にどうぞ。と言って去っていかれた。
「うっわー、何ここ、何ここ!」
いなくなった途端、はるなっちがはしゃぎだす。
この田舎者め
「うっわーすっごい」
ヒナっちもはしゃいでる。壁際にあるコーヒーメーカーを触ったりしてるけど
「これ、無料だって!」
とか言ってお茶のセットとか色々漁ってる。
私も冷蔵庫を開けると飲み物が詰まっててお菓子もあるし「これ、勝手に飲んでいいの?」と聞くと
「これは、自分で飲んだり食べたものを自己申告で伝票に書いて、フロントでお金はらうの」
とヒナっちに教えてもらったり。
なるほど、客を信用してますよ、というわけか。
それとも、ただでがめるような心の貧しい人はここには宿泊しないということなのか。
「あ、バスローブある!」
早速部屋中の全てを開け放してチェックしてたはるなっちが、ベッドの上に転がっているものを発見する。
タオルかと思ってたら、バスローブというのがこれなのね
広げてみると、タオル地の浴衣みたいな感じ。
これを羽織りながら、グラスをクルクル回しながら窓際に立つのね。
「でも、すごい、真下まで綺麗に見えるからほんと、人間がゴミのようだわ」
遠くに東京の街並みが見えて、真下には横浜の街並み。
ギリギリ、東京タワーが見えている。
段々と日が落ちていく時間帯なので、空の色合いがだんだん濃くなっていく様子が見える。街に落ちていく夜の帳。
こんな視点で見られるとか、滅多にないわ。ちょっと感動する。
と思ってたら
「ねぇ、こっから隣の部屋見えるじゃん」
と言われて、視線を横に向けると隣どころが斜め下の部屋も見える。
ご夫婦が窓際のカウンターでなんかのんびりしている風景とか見えたりするんですけど。
ということは、こうやってはしゃいでる私たちの姿も、斜め上の部屋から見えてるわけ?
「これって、全裸で窓際に立ったら丸見えってことじゃない」
「そんなことしないなら問題ないわ」
そう、このホテルは内側に凹んだ面を持っているので、そこに部屋があると端っこに伸びてるお部屋が見えてしまうのだ。
これは、まぁ、そんなこと気にするような人は泊まってはいけないのだろうけど
「クリスマスとかで、窓際でエキサイトしてるカップルとかいたら大変じゃない」
とやらしそうな顔ではるなっちが言う。
まぁそんな場面には遭遇しないように祈っておくとして
「どうする、まずみんなお風呂入る?食事行く?」
ヒナっちが自分の荷物を引き出しの中にしまいながら聞いてくる。
私たち田舎者二人ははしゃいでて荷物解くの忘れてたわ。
前回のホテルもすごかったけど、今回のとこの方がよほど高級感もあってすごい。
「オズっち、ルームサービスとってみない?」
「ルームサービス?」
何それ。
「お部屋に料理を持ってきてもらって、夜景とかみながら食べたりするやつ」
「とる」
そんな贅沢なものがこの世に存在するのか。
私が即決すると、ヒナっちは嬉しそうにルームサービスメニューを開いて
「ほら、クリスマスのコース料理とかあるし、ケーキも頼めるし」
お値段は?
一万円!
何人前?
一人!
それに消費税!
悩む
うーむ、どうしたものか
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