横j浜編 友人との旅路で

第45話 ヨコハマ

結局、寝る前までスーパーカブの話を聞かされたせいで、夢の中に出てきてしまった。

私がオンボロなスーパーカブに乗ってて、はるなっちが最新のハンターカブ125に乗ってて、岩場しかない山を二人で登っていて、山頂に着くと山と山の間に貼ったロープをカブで渡って走るという変な夢だった。


その時に、山の間に広がる雲海が美しくて、まるで天国みたいと思った記憶はある。

なぜか隣の山に母が立っていて、手招きするのだけれどなかなか辿り着けない。


風が吹いてきたり、なぜか雪や雨が下から噴き上げてきたり。

雲が眼下にあるから、という認識だから下から降ってくるのかも知れないけど、あまりの重力異常地帯に夢の中でも「そっちかい!」ってツッコミ入れてた気がする。


なかなか母のところに届かない、スーパーカブでは力が足りない!


と思った時、後ろから図太い排気音が聞こえてきて、真っ黒なスーパーフォアが、細いロープの上を走ってくる。


避けようがないので、そのままスーパーフォアに押されるまま、私はグングン加速し母のいるところへ手が届く


となったところで目が覚めた。


母の夢とか、かなり久しぶりに見たな。

生前と変わらない笑顔で私を手招きしてて、ちょっとその表情を思い出そうと目を閉じる。


ん?そういえば

後ろから推してたスーパフォアにも誰か乗ってたような気がするけど。誰だったかしら。


ベッドから起きると、隣にははるなっちがモニョモニョしながら寝ている姿が。

窓から外を見ると、遠くに富士山が見えた。朝日に照らされて、赤く浮かび上がるように街の向こうに頭を覗かせていて、思ったより近くに見える。


江戸から富士山詣が流行ったというのを授業で習ってたけど、確かにこれだけ見えてたらそれは行きたくなるわよね。


はるなっちを起こし、富士山を二人で見ながらコンビニで買ったサンドイッチを食べ、そしてチェックアウトの用意をする。


「こんな景色のいいホテル、もう泊まることないかもしれないから、もちょっと景色見ておくわ」


そう言いながら、はるなっちはスマホで写真を撮りつつ、眼下に広がる東京の街並みをしっかり記憶しているようだった。


チェックアウトは、カードキーをボックスに入れるだけでいい、と言われてたので

「なんのことか」と思っていたけれど、エレベーター降りてロビーに到着すると、わかるところにその箱が置いてあった。

なんだ、チェックアウトするときはなんか「いってらっしゃいませ」とか言われながら出て行くのかと思ってたけど、案外シンプル。


ロビーでは、すでにヒナっちが待ち構えていた。


今日の服装は赤っぽい髪の毛はそのままロングに流した状態で、ハーフコートにスラックスという出立ち、昨日よりシンプル。

はるなっちは昨日と同じ上着に今日はジーンズを履いてる。

私は昨日とほぼ同じ。中身が違うけど外はダウンジャケットとジーンズ


レンタルバイクに乗る、というのでみんなシンプルな格好にしているのだけれど、やっぱり二人は服の選びがいいので垢抜けて見えるわね。


合流してからは、移動しながら話すという感じでそのまま品川駅に行き、横浜行きの電車に乗る。

ホームにちゃんと「羽田空港行き」「横浜行き」とか書いてあるから、これなら迷わないわね。


「ちゃんとお上りさんでも間違わないようにホームに書いてあるから、二人でも大丈夫だと思ったんだけど」


「この書いてある意味がわからない田舎者には、なにが書いてあっても意味がないのよ」


とはるなっちが開き直ったようなこと言う。


レンタルバイクは、すでにヒナっちが予約してくれてるようで、ヘルメット、グローブなどもレンタルできるという話。


「ヒナミ、ところでなにを予約したの?」


とはるなっちが聞くと


「都市を走るから、400とか使いにくいでしょ。

150から250の間で選んだけれど、3台あるからそれぞれ交換しながら乗っていくといいじゃない」


「150って、トリシティあるの?」


「あるわよ」


「あれ一回乗ってみたかったのよね」


「トリシティって?」


「あの、前輪が2個ついてるスクーター。みたことあるでしょ?」


あ、誰か乗ってきてた気がする。

でも、あれピンクナンバーだったような?だったら125なのでは?


そう思って聞いてみると、125と155と排気量があるらしい。


「ついでにトリシティ300もあるけど、それは借りられなかった。まだ新しいから人気みたい」


300ccとか聞いたことがない。バイクは250、400、とそんな区分けだと思ってたのに。

ヤマハとHONDAは規格が違うのかしら?


「他の二台は?」


「それはついてからのお楽しみ」


と言われてしまったが、


「まさかセローとかじゃないでしょうね?」


「足が届かないのは選んでないわ。街中で転けたら危ないじゃん」


ホームでそんな話してても、電車に乗り込んだらみんな無言。


横浜駅までそんなに時間もかからず到着。

横浜も東京だと思ってたけど、神奈川県にあるところと知ってちょっと驚いたし。

神奈川県がどこにあるのか知らなかったし。


それにしても、横浜駅めちゃくちゃ人がいる。

しかも外人が結構多い。イスラム系っぽい女性とかインド系っぽい女性がベビーカー押して買い物してたりするし。

普通に欧米人もよく見かける。


横浜って国際的な都市なんだ。


ここも人が多いのでヒナっちの誘導に従って移動していく。

横浜駅から横浜市営地下鉄というのに乗り換え、吉野町駅まで移動、地下鉄だと風景が全く見えないのでなんか微妙。


そして、駅から地上に出て思ったのが


「熊本市の端っこみたい」


もちろん人の数などは違うが、「ヨコハマ」ってイメージしてたとことだいぶ印象が異なる


なんか高い建物とかかまぼこみたいなビルとか、観覧車とか船とか港とか、中華街とか。

なんもない。ただの街


「それ湾岸の話。日本の都市部なんてだいたいこんなもの」


とヒナっちは教えてくれて、港側を指差してくれるけど。


街並みのせいで向こうにそんなビルが立っているとか想像がつかない。

東京よりはまだ生活しやすそうな雰囲気。


しばらく歩くと、目の前にYSPと看板があるバイクやさんが見えてきた。


「ここが、私がお世話になってるおじさんの店」


青い感じのバイクがたくさん置いてあって、HONDAのお店とはまた雰囲気が違うのね。


そして、ヒナっちのお父さんが出てきてご挨拶。イタリア人の奥さんをもらった人で輸入バイク専門店をやってる人なので、渋いおじさまを想像してたら。

クマみたいな丸っこいおじさんで、全然伊達でもイケてもない。ヒナっちのこのおじさんの遺伝子が入っているのが想像できないくらいなのだが。


「パピー・・・お父さんは若い時は結構イケメンで、お母さんの料理が美味すぎてこんなになったっていつも言ってるのよ」

なんてヒナっちが教えてくれたけど。人の良さそうな、いい人そうな雰囲気はとても醸し出していて、話してて安心してしまいそう。


その後は叔父さんと言われた人が出てきて、こちらは「バイク屋の人」って感じのつなぎの似合うおじさんだった。ヤマハのバイクと店の紹介と今回貸してくれるバイクの説明をし始めて。

その背後に、同じ年齢くらいの男子が突っ立っているのを確認した。


ヒナっち曰く、従兄弟らしいのだけれど。

最近はエロい目線を向けるようになってきたから嫌だわ、とかぼやいてたりする。

見た目スッとした感じの好青年ぽいけど。


でも、さりげなくはるなっちに声をかけたり、はるなっちの方にサポートに入っているのを見ると、ヒナっちの言うこともそうなのかと思えてくる。


借りられるバイクは、


トリシティ 155

WR250X

XSR 155


トリシティはまだ見たことあるけど、他の二つは知らない子だわ。


WR250X、と言われたのは、オフロードバイクのタイヤが丸っこくなった感じで。アスファルトの道走る専用にしてあるやつみたい。シートは低いのかな?

XSR155、は丸目で可愛いしレトロな感じがいい。

このデザインなら、ちょっと欲しいかもって思えるくらいだわ。

それの横に来ると、トリシティってでかいのね。


なんだか排気量も見た目もバラバラなものが用意されてるけど、これ私乗れるのかなぁ。最初はXSR155がスーパフォアに似てるからこれにのらせてもらいたいなぁ。




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