第41話 レンタルオフィス?
目黒駅のすぐ目の前にあるビル、そこにレンタルオフィスというものが入っているらしい。見上げるほどのビルディング。
駅の近くはビルが立ち並び、空が狭いなぁ。
漫画やらに出てくるビルには、わかりやすい看板があったりするのだけれど、ぱっと見よくわからない。
もっと映画で見るみたいに看板がたくさん下がっているかと思ってたけれど
「それアメリカ映画に出てくるTOKYOじゃないの?」
とヒナっちに言われてしまう。
そもそも、『東京』はいつもテレビの画面越しにしか見ない世界だから、映画やテレビドラマの中に入ったように感じてしまうのだし。
思い出してみると、確かに怪しいアメリカ映画だったような気はする。
ビルの入り口に、ちゃんと入っている企業がわかるような看板があり、そこに高藤先輩から教えられた会社名を見つける。
レンタルオフィス NOVARIE
とか書いてあるのを発見、ビルの6階にあるらしいのでみんなでエレベーターを使って上がっていく。基本的に階段は非常口扱いらしい。
エレベーターとか乗るの、何年ぶりだろう。
6階に着くとまずガラスの入り口が前面にあり、その奥にまたガラスの扉が並んでいるのが見える。
そして、手前に受付カウンターがあり制服姿のお姉さんなどが待ち構えているのだ。
「あの人たちに聞けばいいのかな?」
「アポイントメント、とってあるんでしょ?ちょっと行ってきなさいよ」
「なんて言えばいいのかな?」
「ちょっとその人の名前とか教えて」
と言われ、ヒナっちにスマホにメモした画面を見せると、ふんふんとうなづいて
颯爽とお姉さんたちのとこに向かう
「こんにちは」
「こんにちは、本日は何のご用件ですか?」
「本日、13時から ベネシュの代表取締役、石山 武様と約束をしてまして、少し早くこちらに着いてしまいましたが、いらっしゃいますでしょうか?」
「少々お待ちください、確認しますので」
と言って、お姉さんはささっとパソコンのキーボードを叩いてなんかしてる。
それよりも、ヒナっちかっこいい。まるで慣れてますよ、って感じでカウンターに片手ついて話しかけてたりして。
私だったらしどろもどろになってあわあわしてたかもしれない。
私一人だったらダメだろうと、はるなっちを誘ってみたわけだけれど、後ろを見るとはるなっちはこの空気感に押されてしまい、表情がなくなっている。
なんか、私よりもっとダメっぽい感じがするわ。ほんと、ヒナっちと出会えてよかった。
「石山さんはすでに中で、別の方と今面会されてるようですね。
もう少ししたら終わると思いますから、ここで少しお待ちいただいてよろしいですか?」
とお姉さんが言うので、そこにあるソファーのとこで待たせてもらうことにした。
「ねぇ、何聞くかメモかなんかしてる?」
ちょっと復活したはるなっちが聞いてくる。新しいことに遭遇するたびになんか機能停止してる感じがあって、臨機応変度がない人だというのが今回の旅でよくわかった。
でも、私が書いたメモ、スマホに書いてたのを見せると
「なるほどね、お父さんの話については、日本滞在中の話とかもっと聞いた方がいんじゃないの?もしかしたらあの別荘にこのプロデューサーさんも行ったことあるかもしれないじゃない」
臨機応変な才能はなくとも、一旦冷静になれば必要なことをちゃんとやれる人って感じかしら。
さらにはるなっちと相談して、内容をもう少し詳しくまとめていく。
ちょうどこんな感じで待たされててよかったかもしれない、のまま聞きに行ってたら重要なとこ質問し損なったかもしれないし。
「ありがとう、質問内容がまとまってきた」
「身内だと忘れるとこも、他人が見ると見えてくるとこあるもんよ」
と言うはるなっちは、東京に来て初めて頼もしいと思えた瞬間だった。
ヒナっちは受付の近くとかで、画面を色々と観察してるようで、中に入っている会社、人、それらをチェックしているとこがある。
「すごいのね、ここは有名なフリーでデザインとかしてる人も所属してるみたい。
東京でオフィス持たなくても、地方で起業してここに拠点を持っておけば割といけるのかもしれないのね」
何がいけるのかわからないが、ヒナっちの将来について何か参考になることでもあったのだろうか。
そんな話をしていると、ガラス戸のところにおじさんが3人やってきて、そのうちの2人が外に出てお辞儀をしながら去って行く姿が見られた。その後、受付のお姉さんが私たちを呼んで
「石山様、13時からのお客様がこられてます」
とガラス戸のとこにいるおじさんに声を掛ける。このお姉さんの声、涼やかでいい響きだわ。
身長は170以上はありそうで、少し背が高く見える。痩せ型だけれどちゃんと鍛えていそうな体型。
長くもなく短くもなく、その辺にいる普通の髪型という感じと、身につけているのも襟付きの柄のあるシャツに綿のスラックス。四角いメガネに、黒い革靴という、
「大物プロデューサー!」
って感じのオーラが全くない、ショッピングモールの紳士服売り場に居そうなおじさんがそこに立っていた。
年齢は50歳〜60歳くらいかしら
石山さんは私たちをさっと見渡し、そして私と目が合うと目を細めて
「ああ、確かに少し面影があるな。
あ、どうぞこちらに。3人できたのかな?」
と言って、中へと招き入れてくれた。
「ここはセキュリティの問題で、本人が迎えに出てこないといけないのが、ちょっと面倒くさいのだけれどね」
と言いながら、奥へと歩いていく。
レンタルオフィス
と聞いていたので、部屋みたいなのがずらっと並んでて、部屋ごとに区切られた空間なのだろうと思ってたら、そこは、まるでバーやカフェのような空間だった。
壁際には座り心地の良いソファーのボックス席が広々といくつも作られていて、それぞれは少し高い背もたれで区切られているけれど、完全に個室ではない。
中央にはカウンターと丸い椅子とか並んでて、飲み物のサーバーがずらっと並んでいる。そこで二人の、スーツを着た外国人が会話していたり。
奥には会議室もあるようで、ちらっと隙間から中を見ると、長テーブルと椅子がたくさん並んでいるのも見えた。
液晶画面がいくつか存在していて、そこには株価とかなんだかよくわからない数字とグラフが並んでいるものが映し出されていて、それを見ながらおじさんが数人ソファで会話してるよこを通り過ぎたり。
「ファミレスみたい」
ボソッとはるなっちが、感心したように安っぽい感想を言った。
いや、そう見えるけど、もっと高級そうな感じするじゃない。
内装はおしゃれな作りだから、私はバーとかそんな感じに見えるけどな。行ったことないけど。
中に入ってから、なんとなく視線を感じる。
女子高生が入るような空間ではないので、目立ってしまうのは仕方ないけれど。
落ち着いた内装の空間にギャルが入ってきたらそりゃ場違いかんはあると思う。
石山さんが空いているブースへと案内してくれて、そこにはすでにカップに注がれたコーヒーが置かれていた。
「まずは飲み物を自由にとってもらっていいよ」
と言って、石川さんは椅子に座りながら中央のドリンクサーバーを示してくれる。
あ、ここでさっきまで人と会ってたのかしら。
とりあえず、私たちはファミレスにあるものより高級な感じのする、ドリンクバーに行って飲み物を取ってきた
「全部タダなのかしら?」
「飲み物勧めてて、後でお金取りに来ると思う?」
「念の為、安そうなものもらっておこうかな」
とかめいめい勝手に好きなことを言いながら、備え付けのカップを取って飲み物を注ぐ。
ふと石川さんのいるソファを見ると、通りすがりの知り合いが声をかけてきたらしく会話している声が聞こえてきた
「何、新しいユニットの子?今度紹介してよ」
「違うよ、まだデビュー前だからダメだ」
「秘蔵っ子ってことか、また楽しみにしてるよ」
とかそんな声が聞こえてきたりして。
そうか、石川さんが音楽プロデューサーだから私たちはそういうメンバーだと思われているのか。
それで結構みられてる感じがしたのね。場違いな子がフラッと迷い込んできた、って感じでみられてたわけじゃなく、ほっとしたわ。
ちらっと横にいる二人をみると、
確かに、このまんまテレビに出てもそれなりに行けそうな気はするわね。
熊本、同じクラスにも「お前白人やろ」という女の子や、男子が一人くらい紛れてたりする。話をすると純粋な熊本人なのだけれど、小学生の時のあだ名がドイツ人という男子もいる。
そういえば、私のお母さんも綺麗ではあったのよね。
長女は父親に似るっていうから、私は父の血が強く出て母には似てないんだけれど。
母に似ていれは、3人のユニットに見えるようになったかしら。
なんて思いつつ、石川さんの席に戻る。
石川さんの向かいに、はるなっち、私、ヒナっち、の順ですわり。
「さて、今日は何を聞きに来たんだい?」
広いテーブルの向こうで、石川さんは人の良さそうな笑顔を向けてきた。
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