第29話 父のパソコン
いつの間にか、テストなんかがあってバタバタしていたら、秋を通り越して冬になってた。
11月は、阿蘇ではすでに冬だ。
中頃には霜も降り始め、バイクで走っていいのかどうか迷うときもあるくらい。
「バイク通学の人は、冬はどうするんですか?」
と高藤先輩に聞いてみると
「雪が凄まじそうな時は前の日からホテルに泊まるわよ」
と言われた。
阿蘇は雪が降るとは言われるけれど、本当に危ない状態になるのは年に数回。
それ以外は大丈夫だから。
と先輩に言われるので多分大丈なのだろうけど。
「主な国道とかは除雪もされてるし、私の家の周りの方に比べたら南阿蘇とか全然大丈夫よ」
と言いながら、去年の雪の風景を見せてくれたりする。
熊本市内に住んでた時は、雪が積もることが全くなかったので、ついそんな気持ちでいたのだけれど。
阿蘇って九州じゃないみたいに雪が積もるものなのね。
雪の中をSRで走ってる写真とかあるけど、
「バイクって雪道走れるんですか?」
「一回試そうとしたけど無理だったわね。これはその時の写真で庭先で撮影してるだけ。両足で支えてやっとだから道路は無理。
大津さんのスーパーフォアだと200kgあるから絶対無理よね」
どう考えても無理そうだ。一度こけたらそのままバイクに押しつぶされながら滑っていきそうだ。
私も雪が積もりそうな時はホテルにでも泊まった方がいいのかしら。
「大雪の日は休んでも怒られないから、連絡入れてたら欠席扱いにはならないのよ。だから無理はしないようにね」
そう教えられると、少し安心する。
雪が降ったら堂々と休めるなら、そうした方がいいような気がするし。
今日は高藤先輩に家に来てもらうことになったので、駐輪場でそんな話をしてたのだった。
しかし、バイク乗る時は夏の革のグローブだけでは手が冷たくなってくるし、ジャケットも普通の上着では寒くてたまらない。手袋は内側が毛布みたいになった、自転車通学の時に使ってた厚手の革手袋に変えてなんとかなったけれど、
自転車ではとても暖かかった木綿の綿入りのコートなどを羽織って行こうとしたら、バイクのスピードでは冷気が全て貫通してくるので急いで着替えたこともあったし。
ウインドブレーカーの内側に厚着することでなんとか耐えることができるくらいにはなったけれど、着膨れだるまになるし。
それでは身動きしにくいので、冬用のバイク用のジャケットなどを見ると大体お値段がかなりするので手が出ない。夏用の倍以上するのね。
そんな時、はるなっちに相談してみたら
「内側にプロテクター付けてるなら、普通にダウンジャケットが寒くないわよ」
と言われ、それ以来通学の時には今まで来ていたダウンジャケットを使うようになった。確かに暖かいし風は通さないからとてもいい感じ。
足元は近くのコメリで買ったオーバーパンツとでもいうのか、防風防寒用のを履いてみたら、ちょっと運転中滑るけど暖かく走ることができた。
はるなっちはスーパーカブは風よけが十分できるから冬はいいのよ、なんていって、作業服専門のところで買ってきたというジャケットとズボンを履いている。
値段を聞くと結構お手頃。ワークマンとかなんとかそんなとこだったかしら。
「電気で温まる手袋とかジャケットとか電熱グリップとかもあるのよ」
と言われたけれど、バイクから線引っ張ってくるのは、ひっかけそうで怖いし。
こけたときにちぎれたりするとか、それが絡まって手がもげるとかなったらと思うと、怖くてたまらない。バッテリーを入れるものも、それがこけた時に破裂したらと思うと怖いし。
なので、電気系は今回は選択肢に入れないでおくことにした。
ただ、真冬になると「外の気温が2度くらいでバイクに乗ると、体感温度はマイナス5度とかそんな感じになるから」と脅され、真冬の時はまた着込むものと変えないといけなさそう。マイナス5度くらいにたえられる服装かぁ。
今日はるなっちは後で来るというので、高藤先輩と一緒に我が家へと向かう。
はるなっちはお泊まりの準備をしてくるということで、先に一度家に帰ったのだ。
明日は土曜日なので、高藤先輩も今日はそのまま泊まっていくつもりらしい。
「こんな別荘で、自分のバイクを眺めながら生活するとか大人になったらしてみたいわね」
なんて言いながら、私の家に着くと途端にカメラを抱えて撮影開始。
今日は私の両親につなる情報を得るため、先日高藤先輩が前に来た時に話したiMacを動かしてみるために、それが扱える先輩を呼んだのである。
私は全く使えない。Windowsは学校で使ってるからなんとかなるけど、マッキントッシュとか、最初から「スイッチどこ?」とかなって全く起動すらさせることができなかったし。
「昔のはキーボードに電源スイッチがあったんだけどね」
と江川さんに言われたことがあるけれど、本人もよく使い方がわかってないようだった。
そうなると、実際に家で使っている人を招いで使い方を教えてもらおうということになり、試験も終わり余裕のできたこの時期にお願いすることにしたのだ。
「今の時期、受験とかで忙しいところお願いして申し訳ありません」
とカメラを片付けている高藤先輩に声をかけると
「私は地元の私立大学に推薦で行くから、試験勉強とかしなくてもいいから大丈夫」
「推薦だと勉強しなくていいんですか?」
「評定平均で大体決まるから楽よ」
ということは、日頃の成績が結構いいのだな。
高藤先輩は何をやってもそれなりに結果を残せる人のようで羨ましい限りだ。
それに見た目もシュッとしてかっこいいし。
はるなっちが来る前に、先にiMacのところに移動し起動方法などを聞くことにした。
今まで全く開いたことなかったけど、この中に父親に何か情報が入っているのだろうか。
「うっかりお父さんの保存した、えっちなファイルとか見つけたらどうする?」
と高藤先輩に聞かれてしまったが。
この場合、娘としては見ぬふりをして消すべきなのか、そのままにしておくべきなのか。悩ましいところだわ。
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