第15話 俵山峠

自動二輪部、は技術を高めてそう言う大会に出たりするらしいのだが、私は興味がないのでそこまで部活に頑張ろうという気はなかったりする。

でも、はるなっち以外のバイクに関わる人たち、バイクに乗ってる人たちと接触する場所でもあるので時折顔を出そうとは思っている。


と思いながら1週間が過ぎた。

実際、いく用事ないと足を運ばないもんであるが。


今日ははるなっちが私のバイクの点検予約を入れてた日なので、二人でバイク屋さんまで移動する。


菊陽にあるHONDAのお店で、はるなっちのスーパーカブもそこで購入したのだとか。

それで今回は一緒に行ってくれると言うことだけれど、

4車線の国道を走っていくことになるので、それが怖いのだ。

「東バイパス怖い」

と言ってはるなっちに違う道を走っていくことを提案する。


「確かに、熊本人は運転荒いから、バイパスも高速道路も変わんないもんね。

それに、バイクが前を走っていると追い抜かないといけない、と思う謎の人種がいるから怖いのよね」


「何それ?」


「遭遇したことないでしょう。

二輪車が前を走っていると、車間距離を保つのじゃなくて、追い抜いてくるのよ。それも至近距離で。大抵、おばさんが多いんだけどね」


「まなんで追い越してくるの?」


「わかんないわ。私の場合は50ccのカブだと思ってるんでしょうけど。本気になれば80kmとか出るんだから、普通に走ってておばさんの運転する軽自動車なんかに追いつかれることはないわ。でも、そんな感じで追いかけてきてすごいスピードで追い抜いていく謎の人達がいるから注意することよ。

その人たちは250ccでも1000ccでもバイクはみんな同じだと思うみたいだから」


「こわい。そんなのがいる道走るなんて」


「いや、滅多に出てこないから気にしなくていいわよ。

じゃあ、俵山峠を超えて、いきましょうか」


「俵山のトンネルじゃなくて?」


「峠、旧道よ。とってもいい道なんだから。

80年代、90年代あたりまではローリング族ってのが走りまわってたくらいいい峠なのよ」


そう言ってはるなっちは笑う。

いい峠、ということは結構カーブが急なのだろうとケニーロードで学んだが。


「車が滅多に通らないから楽よ」


と言われ、そちらを目指すことにした。


俵山峠はトンネルより手前を、ススキの原を左に曲がるといけるらしい。今までそんな道の存在自体知らなかった。


確かに全く車が走ってないので、のんびり風景を眺めながら走ることができる。

ススキの中を通るような道はなんとも素敵で、ススキの穂が一面に広がっている。まだ開いてないので銀色の感じではないけれど、緑の葉っぱに赤っぽいススキの花が咲いている感じもいいと思う。


上まで来るとススキの中を道が通っているのがよく見えてとてもいいかんじ。そこから阿蘇山も谷も見下ろすことができる。


「ソバの花が咲くくらいに来ると、谷がとてもきれいなのよ」


とはるなっちが教えてくれた。

カーブも急なところはあるけれどゆっくり走っていれば問題ないので、車がいない峠道は気持ちよく走れていいかもしれない。


そして、てっぺんにある駐車場から西原村の方を見ると、巨大な風車が10機、ゆっくりと回っているのが見えてくる。


うわー、映画とかに出てきそうな風景!


そこから降っていく道が、結構怖かった。

道路の舗装が荒れているので砂利が浮いてたり。カーブが狭くて、反対車線にはみ出すんじゃないかってくらいだし。

いわゆるブラインドカーブというものが連続してたりするのでスピード出してたら対向車に突っ込んでいきそう。


昔のバイク乗りって、こんなところをじゃんじゃん走ってたって言うの。

信じられない!


それくらい、狭くて危ないコーナーが連続していて全く気が休まらない。

風車のある素敵なところなのに、ゆっくりそれを楽しむこともできないまま峠を超えていくと、視界が急に開けて熊本平野と有明海と、その向こうに雲仙を見ながら走るようになる。


ここも、風景はとってもいいのにカーブがキツくてよく景色を堪能できない。

はるなっちはスイスイ曲がっていくけど、まだ私には難しいところだわ。


狭くてブラインドコーナーが多くて。たまに1車線くらいに減るし。

木の枝とか結構落ちてるし、砂利は浮いてるし路面は荒れてるし。


初心者向けではない道


でも、ちょいちょい見る景色はとっても素敵で。

なれてきたらもっと景色を楽しめるようになるのかしら。


俵山峠の下まで来て、改めて上を見上げると、草原の向こうに白い風車が立ちならんっでいる様子は圧巻。


「今度は、こっち側から登っていくとまた雰囲気が変わるわよ」


とはるなっちは帰りも通るのだと言うが、私は帰りはトンネル通って帰るからいいわ。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る