僕と俺が演ずる喜劇

作者 いそね

生意気なイケメン俳優&その世話を押し付けられた地味な役者のドタバタ劇!

  • ★★★ Excellent!!!

この作品の魅力を一言で表すとしたら、【強烈な面白さ】。

場面のひとつひとつが魅力的で、良質なドラマを見ているようです。
「面白い! 続きが気になる!」「でも一気に読んだら勿体ない!」と何度悶えたことか。
ジャンルとしてはBLですが、それ以上の魅力がたっぷり詰まっている名作です。

   ***

内容は、タグにもあるように『トップモデル×地味役者』です。

主人公の【大斗】は、役者ひとすじで生きてきた青年。
そんな彼には大きな悩みが。同じ事務所に所属する【道也】の世話係を押し付けられるのです。

道也はイケメンで華がある存在。
世間からの人気も高いですが、モデルと役者を兼業しており、役者ひとすじの大斗からみれば面白くない存在。
しかも、道也はかなり生意気な性格なのです。

とある舞台の練習中、コミカルな役のはずの道也は、相手役の大斗に色っぽく迫り困惑させます。
しかも、演出家がそれを気に入ってしまって大変なことに。
道也のわがままが周囲を振り回し、ついには二種類のラストシーンが用意されることに。

大斗は、どちらの結末にするか選ぶようにと脚本家から言われます。
重大な役目を任せられ、悩む大斗。
しかし、物語は思わぬ展開へ。

   ***

この作品は、主役も脇役も個性豊かな登場人物ばかり。

やることがとにかく派手で、人を引き付ける魅力がある道也。
美しく天真爛漫に見えるけれど、実はしたたかな芽衣子。
スペインバルの世話焼きイケメンお兄さん。
なにか思うところがありそうなマネージャー。
そして主人公の大斗も。彼は自分のことを「地味」だと思っているようですが、実は……。

個性豊かな登場人物たちが繰り広げるドタバタ騒ぎから目が離せません。

個人的に興味を惹かれるキャラは芽衣子です。
BLの間に挟まる女はいらない? まあ、そういわずに。
彼女もまた、舞台を回す重要な役者の一人なのです。

スペインバルのお兄さんも行動がイケメンなので、ぜひ注目してみてくださいね!
゚・。*(´∀`*)。・゚+

   ***

この作品の興味深いところは、「舞台裏」を描いているところです。

たとえば、ゴミ捨て場をあさる老人を見かけた主人公がその背景を想像して感情を作り上げるシーンが見事です。
また、同じセリフでも言い方ひとつでがらりとニュアンスが変わる場面があり、その表現にハッとさせられました。

作中でもっとも衝撃的だったのは、
「今までの稽古なら、たとえ夜の駐車場にいても真夏の海を想像できたし、ジャージを着ていても銀行の頭取になりきれた。猫のぬいぐるみを生きた豹に見立てて、冷や汗を浮かべながら怯える演技だってできたのだ。(本文より)」
という部分です。
まるで舞台の幕の裏側を覗いているようで、読み進めるたびに知らない世界が広がるのを感じました。

舞台の裏側で、あんな騒動やこんな駆け引きが起きているのかと思うと、テレビや映画の俳優を見る目も変わりました。

構成の素晴らしさにも、ぜひご注目ください。
台本の中の登場人物たちの関係性と、役者同士の関係性が次第に入り混じり、やがて重なり合います。
その様子が巧みに描かれており、ピリピリとした緊張感に何度もハラハラします。

   ***

この作品の魅力を挙げ始めるとキリがありませんが、そのすべてを支えているのは何よりも「文章力」です。

豊富な語彙で表現された感情。その豊かな表現力に震えます。
細部まで注意を払って書かれた文章であろうことが伝わってきます。それは舞台の上の役者が緊張をもって演じている様子とも重なります。

気の利いた文章がそこかしこに点在し、どれも印象深く記憶に残ります。
とくにチャリティーショーの様子にはドキドキしっぱなしでした。

また、作者様の豊かな知識や教養についても驚きます。
幅広くいろいろなことをご存知で、だからこそこのような魅力的な作品を書くことができるのでしょうね。

創作をしている人にはぜひ読んでいただきたい作品です。
読み終えたあとにはきっと新しい視点が増え、視野が広がると思います。

惜しむらくは、この作品がわずか3万字あまりの短さということ。
もっと……もっとじっくり読みたい!

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