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 はたして、人間の記憶には実質的な時間や空間の概念は存在しない。例えば、秋刀魚さんまを食べた記憶があったとしたら、それが食べたものであるか、という情報はほぼ残らない。


 特に時間や空間を隔てれば尚更なおさらで、ただそこに食べたという記憶のみを保持していくものなのだ。


 つまり、記憶とはただの、何の具体的な情報を持たない映像。想像にすぎない。


 そして、また逆もしかり。を、寝ていた時に見た悪夢、ただの劇、悲劇、とすることも可能なのだ。


 そうやって逃げる術を人間は持っている。


 僕は次の話を夢の中の話だと思っていた。いつか見た、だけれど、いつの事かは覚えていない。しかし、内容だけははっきりと覚えている。そんな夢。


 昨晩、久美に話したようなただの夢。


 悪夢、想像に過ぎないと思っていた。


 だが、目の前で、白髪の叔父おじさんが語るには、これは夢ではなく現実であったらしい。


 以下、夢の話。

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