大御グループ
〜前回までのあらすじ〜 かしら。
ああ、なんて事でしょう。
わたくしが、ツカサさんの欲求の暴走を制御出来ず呑み込まれてしまった事もそうですが、彼の『社会的欲求』が無くなってしまうなんて……
『
まあ、わたくしが封印を常に見守れる立場にはなったけど…
ツカサさんはもう『
あれ程の逸材がそうそう居る筈もないし、
次の罪人が見つかるかどうか…
このままでは、モノガタリに勝てないわ。
ああ、困った事に……
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「そんな…お父様が、元凶ですって……?」
やっとの事で口にしたリラの言葉は、震えていた。
「せや、あんたの親父さんは『巣』を生んでしまう程、金に魅入られていたって事やな」
カアクは腕組みのまま何度も頷く。
「じゃあ、僕達がその『巣』を破壊すれば、リラさんのお父さんは正気に戻るんだよね」
ふと、リラの抱える家庭の問題を解決出来るのではないか? そう思っての言葉だったが、カアクは「人としては…そうやろうな。せやけど、親父さんの金儲けの
「それは、つまり?」
僕の質問に答えたのはカアクではなく、リラだった。
「会社に居られなくなるって事ね。私…お父様は嫌い…だけど尊敬はしているの。お金儲けの執着は尋常じゃないけれど、大御グループで働く大勢の人とその家族を支えているんですもの…… あれ程の重要な決断が正しく出来る人って居ないわ」
その複雑な心境を現す様に、彼女は苦笑いを浮かべていた。
僕が次の『巣』を破壊することはつまり、リラの父親を失脚させる事になるのだろう。
それにより、グループで働く人達にも何かしら不幸が降り掛かる可能性だってある。
会社が傾いた時、リストラがあるかも知れないし、その数は一般企業のそれでは無い筈だ。
そんな僕の葛藤を吹き飛ばす様に、リラは強い声で言った。
「やる事は決まっているわ。ユウト、力を貸して頂戴!」
僕は『うん』と頷きながら思う。
そして、彼女のように強く美しい
「ユウト?なんで苦笑いしとんのや? あんたの不甲斐ない姿を苦笑いしたるのはウチの仕事やで?」
……そして、この邪神の余計な一言が無くなるのは、いつの日か?
カアクの言葉に、笑顔を取り戻したリラを見て僕の胸は高鳴った。
「ほんじゃあ、そろそろモノガタリの封印に戻るわ。皆んなに任せっきりやと、後で怒られるからな!」その言葉でカアクの姿は消え去り、不意に二人だけとなった部屋に静寂が訪れた。
その微妙な空気を払う為に僕はリラに語りかける。
「僕にはお金持ちの生活がわからないけれど、庶民っていうのもいいと思うよ。小さな出来事に一喜一憂する生活は、リラさんに向いてるかも知れないし…」
……何を…口走った!? これは告白を通り越して、プロポーズに受け止められるのでは!?
「バカね、お父様は賢いわ。一度、
…杞憂だった。
「それにしてもユウト、あなた調子が悪いみたいだけど、大丈夫?」
突然のリラの質問に僕の背筋が強張る。
「いつも食事はがっつくのに、今朝から様子が変よ? モノガタリと何かあったんでしょう…」
リラは賢い。だから、隠しているつもりでも僕の異変に気づいているのだろう。
「……うん、モノガタリに酷くやられてね。奇跡的に勝てたけど、それが幻影なんだから本体が復活したら勝ち目が無いのかなって…
ちょっと、弱気になってたんだと思う」
嘘は言っていない。でも、食欲が失われたなんて彼女には知られたくない。心配させたくないから…
リラは…「そう…」と、呟き僕に背を向けた。
「ユウトの代わりは居ないの、私はあなたの役に立てる様に努力する。だから…一人で抱え込まないでね」
…… こ、これは!?
どう捉えるべきですか!?
僕以外代わりが居ないって……つまり?
僕のことを気に掛けてくれている?
いやいやいやいや、相手は『僕』だよ?!
学校でも『村人1』の立ち位置だよ?
そうだ! 明日ツカサ先輩に助けてもらおう! リアル乙女心ってヤツを教えてもらおう!!
「……うん。リラさんは僕が守るし、僕を守っても欲しいんだ。リラは…ずっと仲間だよ」
その言葉に、「えっ!?」と、背を向けたまま短く叫ぶリラさん。
……勢い余って呼び捨てにしてしまった!そしてっ!僕の姓字は『仲間』です。
ずっと『仲間』って……
グハァ、これもプロポーズっぽい!脳内の空回りが過ぎて、頭が発火しそうだぁ!!
その時!隣の部屋、つまりツカサ先輩の部屋からハムの鳴き声が!!
気まずい空気から助けてくれる咆哮が!
「あ、あ、ハムが呼んでいるみたいなので、見てきます…」
僕は慌てて玄関から飛び出すと、隣の部屋に駆け込んだ。
「せ、先輩! た…助け……て?」
……ノックしなかった事は僕が悪いです。
鍵を掛けてなかったのは、先輩が悪いです。
目に飛び込んできた光景は…
ハムが尻尾を千切れんばかりに振る姿と、
先輩と沙奈江さんが唇を重ねているところでした……
【次回予告】
はい、わかっています。 私には恋愛が書けない事くらい…
おほん!さあ、次は金持ちの『巣』だよ!
物語も青春も恋愛も…突き進め!!
……え?
次回!『超越』
お楽しみに!!
––– 僕の
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