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  〜前回までのあらすじ〜 よ!


 皆さん如何お過ごしかしら? なんとか窮地を脱したリラです。

 はあ、全く此処の擬態ロブスターイヴェ、強すぎるのよ!

 少し私の銃の威力が落ちている気もするし…

 それにしても、何度もハムのバリアを破壊されて、そのたび心臓が止まりそうになったわ!!

 …でも、息を呑んだのはそのあと。

地下室に辿り着いた時、カアクしか居なくて…

 彼女は辛そうに言ったの。

ツカサさんは、私達を裏切ったって…

そして、ユウトがエデンというモノガタリ封印の地に1人で行ってしまったのだって……


「カアク!ユウトを追いかけられないのっ!?」

 リラの叫びに似た強い言葉に、カアクはうつむききながら答えた。

裏側世界バックサイドが解除出来んのや、多分『ネスト』を壊さん限り、こっから出れん……」

 それに…と、カアクはリラを見据えると、「…『巣』はツカサが持っとる。手を組んだモノガタリと共にな… ユウトはその二人に勝たんとあかんのや」と、拳を握りしめた。


 …ここに、カアクがいる。

それに、床には赤いメダルが落ちている。


 リラの心情を察した様に、彼女の握った青い銃からナロゥが呟いた。

『つまり…ユウトは『あの力』を使わないと戦えないと…? それに…相手はモノガタリのみならず、ツカサも居る。…か』

「ナロゥ!?『あの力』って何!? ユウトは、『ギルティ』の力を使えるの?」

 リラの問いかけに『ああ…』と返すナロゥの声は低く、この地下室に立ち込める瘴気と臭気に勝る不穏な空気が、リラを包んだ。


「せ…ん、ぱい」

言葉が、想いが伝えられないとは、これ程辛いとは思いもしなかった。

 僕は伝えたかった。 モノガタリの望む未来には破滅しかない事を。

 先輩の葛藤や迷いに、背中を押す一言を。


「ユウトくん。教えてくれないか? 俺は…何を信じたら…いい?」

 遺伝子改造の『ネスト』を手に眺め、そう語る先輩の声は震えていた。


 ––– 自分を…信じて欲しい。あなたは分かっている筈だ。自分への罪から目を逸らす為に、闇雲に走り続けている事を。

 彼女を救うという勝手な理想に囚われている事を!

 …しかし、僕の想いは口にする事は叶わなかった。


「ユウトくん、君の正義を…証明してくれるかい?」

 そう言い、ツカサ先輩はレーザーブレードを構えると、モノガタリの示した方向へ駆け出した。

 先輩が言いたいのは、彼が封印を解くのが先か、僕が阻止するか…… つまり、結果で決着をつけるという事なのだろう。

 人類の歴史がそうであるように…


 僕はすぐさま先輩を追いかけるが、身体能力の差か、その差は縮まるどころか更に開いていく。

 そんな最中、頭にアニメの言葉が浮かぶ。

『男は間違いに気付いても突き進む生き物だ。だから、徹底的に叩き潰してあげることが、その男への救いになる』

 当時は意味が分からなかった。でも、今、

僕は理解した。

 先輩を…救えるのは僕しかいないと…

その想いが僕の足を加速させた。


 先輩に続いて、小高い丘を駆け上がった僕の目に映ったのは、ローマ建築でよく見る柱に囲まれた台座…

 その上には身の丈もある黒い結晶が自立して居た。

 太陽の光に照らされた結晶の中には、朧げながら人の輪郭が浮かび上がっている

 …あれが、モノガタリの本体、

 カアク達が封印している者の正体なのだ。


 先輩は台座の手前で脚を止めると、僕に振り返った。

「ユウトくん、俺はモノガタリの封印を解くよ。君は…阻止するんだろう?」

 そう言い、レーザーブレードを僕に向けて構える。


「………」

 僕は拳を前に突き出すも、勝負の行方は先輩の目を見た時に分かってしまった。

 刹那、ツカサ先輩はレーザーブレードを振りかぶり、真っ直ぐに僕の頭上に振り下ろした。

 それを右手のガントレットで受け止めた次の瞬間、僕の耳に響いたのは破砕音。

 ……ツカサ先輩のレーザーブレードは砕け散り、その中から気を失ったシブが投げ出されたのだった。

 …僕は分かっていたんだ。先輩に殺意がない事を。止めて欲しいという願いを。

 先輩の願いを叶えるべく、僕は彼の右頬に向けて左の拳を思い切り打ち込んだ。

 まともにそれを受けた先輩は、ゆっくりと体勢を崩し大の字で空を見上げる様に倒れ込んだ。

「め…が…覚め…まひた…か?」

僕のつたない言葉に、先輩は「全く…締まらないな…」と呟き、「でも、どんな言葉より心に響いたよ…」と、握っていた『ネスト』を、僕に投げてよこした。


 そして、僕は受け取った『巣』を、ガントレットで打ち砕くと、虹色の粒子と化した粉末が、風に吹かれ消え去っていった。

 それは、まるで先輩に憑いていた悪霊が去ったかのようで、先輩は優しく微笑んでいる様だった。


       【次回予告】

 あれ?確かここで神様の封印が解かれて、この物語が文学作品になる筈でしたよね?

 一体、どうなって?

 この作品、『私』の手を離れてしまったのですか?

 神様?どうしたのですか?


『やっと見つけたで! あんたが…モノガタリに操られてた作者やな? まかせとき、ウチらがハッピーエンドにしたるさかい』

 あ…あなた方は? 新しい神様……?


    次回!『三度目の真実』

            お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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