学園定番のイヴェント

 あれから数日が過ぎ、学園は落ち着きを取り戻していった。

 しかし!ここに落ち着きを取り戻せない人物がひとり…

「ツカサ先輩〜! 学園祭中止ってぇ! 酷いですよね? 僕にとっては初めてのイベントだったのに!!恋が始まる可能性があったかもしれないのにぃ!!」 …それは僕だった。

 「ユウトくん?君の鈍感さにはお手上げだよ…… 恋が始まっている事を気づいていない君には、この先思いやられるな」

 「……先輩!? 僕にはフィギアがお似合いという意味ですか? 流石に僕でもフィギアに恋は出来ませんよ!?」


 そんな中、僕のスマホにメール着信の知らせが入った。

 唯一アドレス登録している女性…

「あ…リラさんからだ!」

この喜びは特筆すべきものだ、僕のスマホに女の子の名前が表示されているという事実!

 それは、如実に真実だぁ!

「ユウトくん?顔面が盛大に大災害アポカリプスになってるよ?」

 先輩の言葉はさておき、メールの内容は…


『今日の放課後暇でしょ 付き合いなさい』 との一文。

 ……これが真実だった! 辛辣だったぁ!なんで、♡とかつけてくれないのかなぁ!?


「君達は、まったく…」

そういうツカサ先輩は、微笑んでお手上げのポーズをとっていた。


「待ち合わせには、ちょっと早かったかな」

放課後、僕は呼び出された場所のベンチに腰掛けていた。

 ここは、街一番の大型ホームセンター。

つまり、デートではない事が確定している。

…わかっていたけどね?


「お待たせっ♡」

背後から聞こえる女性の声に、僕は振り向くと……

「誰ですか!?」

 そこには赤い髪と瞳をした少女と少年が。

双子かな?いやいや、突っ込むべきはそこじゃない!

 髪と瞳の色が赤なんて、アニメでは見た事があるけれど、まさか現実に存在するなんて…

 いや、それでもない!

「人違いですよね?」 そう、これこれ。


「いやねえ、青春真っ盛りの年頃にベンチでひとりって…可哀想で、あくびが出そうで、見てられなかったのよ。ふぁあ〜」

 …出てますよ?あくび。

「おねーちゃん、お腹すいた」

 …大変ですね?色々カオスな状況ですね?


「あのぅ、何か?」

やっと出た僕の言葉に、彼女らは微笑むと、

「わたしはネム。そしてこっちが弟のクゥ。食いしん坊なんだよ〜、よろしくね♪ ふあぁあ〜」と、盛大なあくびと共に名乗った。

 一体何事?これは新手の勧誘か? ハニートラップか?

「おにーさん、ご飯食べさせて」

 マネートラップかぁああ!!


 クゥの言葉に『こら!我慢しなさい』とネムは一喝すると、僕を見つめる紅の瞳に鋭い光が走った。

「今日は挨拶だけ。また逢いましょう…

 過酷な運命を義務づけられた『サガ』のギルティー…ユウトさん」

 そう言葉を残して彼女達はきびすを返すと、人混みの中へ消えていった。

 僕は突然の出来事に、なか呆然ぼうぜんとその背中を見送っていた。


「……ユウト?どうしたの? いつもながらにボケっとして?」

 ……あれ、リラさん?いつの間に!

僕はモヤ掛かった頭を振る。

 ––– ついさっきまで、『誰か』と話していた様な……

 しかし、此処に着いてからの記憶がスッポリ抜け落ちていた。


「…あ、リラさん、こんにちは。ユウトです」

「はい?ユウト頭大丈夫?」

何故か自己紹介しなければならない気がして口走ってしまったが、結果、リラの不審者を見るような視線を頂くこととなった。


「それよりユウト、来てくれてありがとね。今週の学園祭準備が追い付かなくて」

 …ほう? 聖シエスタ学園の学園祭とな?

「そうなんだ、僕達の学校は中止になっちゃったよ」

 …あわよくば

「ふぅん、それは残念ね。じゃあ…」

 …じゃあ!

「ウチの学園祭に来る?」

 …しゃぁああ!!

「いく!」

「なんか即答とギラつく目が怖いんですけど……ま、いっか。これ招待券、ツカサさんにも渡しといてね」

 そう言って、リラは2枚の招待券を僕に手渡した。

 …手に入れた!夢への切符!『モラエもん』でさえ出せないであろう秘密道具!

「その代わり…今日の荷物運びお願いね!」

「了解!リラさん!」

 …ふと思う。いつから僕は女性とこんなに気軽に話せる様になったんだろうと。

 僕の恐れていた世界は、こんなに気軽で…そして、すぐ側にあったのだと。

「何ニヤけてるの?」

彼女の声に僕は答えた。

「なんだか楽しくってさ!」

 その言葉に、何故かリラは顔を背けた。


       【次回予告】

 ユウト、色々変わってきたね!

そうだよ!青春は辛い事も有るけれど、楽しいんだよ!!

 時は戻らない。だから、必死に今を生きるんだ!

 そう言えば、最近出番の無い『彼ら』はどうしてるかな? 


   次回!『一方、ハムリスタ』

            お楽しみに!!


––– 僕の歴史に、また新たなる1ページ!

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