復旧が完了しました
〜『モノガタリ』封印の地にて〜
カアクは、
「ホンマに……ビビってもたわ。思念体いうてもチョイっと神力を行使しとったで?」
その言葉に、ナロゥは苦虫を噛み潰した様子で「弱まっているんだ…俺たちの力が。リラ達の力で今度こそ『
「そうじゃな!人間達が暮らすこの世界を消されてたまるものか!」
同じく結晶体に手のひらを向けているリスタは眉をひそめ、『のう?』とシブに視線を向けた。
「でも…今回も最後まで罪の力が保たなかったら……」
結晶体に神力を向けながら、不安そうに視線を落とすシブに対し、『せやから』と、カアクが邪な笑みを浮かべる。
「間に合えば、ええんやけど…… 三度目の正直って言うやろ?コイツが、切り札や!」
そう言う彼女の手のひらには、赤い二つの小さなカケラと……
一部が欠けた黒いメダルが鈍く輝いていた。
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『巣』を破壊した直後、カアク達は血相を変えて姿を消した。
彼女達の『何かを見守る役目』とは、きっとあの少年の監視だったのだろう。
そして、バックサイドから戻った僕達が目にした校内は混乱を極めていた。
一斉多発した『
「ユウト…さっきの男の子が、元凶って事よね…? 私、今でも震えが…止まらない…」
そう言ってリラは両肘を抱えていた。
「……ユウト?」
僕は目の前で気を失い倒れ込んでいる、一人の男子生徒を見下ろしていた。
見覚えがあるその顔は、ツカサ先輩の取り巻きの一人だったのだ。
「薬物を売り捌いて、佐々木くんを酷い目に遭わせたのはコイツか…… それとも…悪いのは……あの白い少年か……」
僕は拳を握りしめて叫びそうな感情を押し殺す。
––– 何故だ!? なぜ、こんな酷いことが出来る? 薬物中毒者の末路は破滅でしか無い事は分かってるだろっ!!
「ユウト……なんて表情…。落ち着いて……ね?」
リラが僕の震える拳を、そっと手のひらで包み込んでくれた。
「…ごめんね、リラさん。僕…本当に悪いのが何なのか分からないよ」
その時、担任の先生だろう女性教師が教室に入ってきた。
「皆んな!落ち着いて……って? 何故、他校の生徒がここに……?」
––– マズイ、リラさんの制服っ!
「行こうっ!」
僕は彼女の手を握りしめ、教室を飛び出した。
辿り着いた保健室に佐々木君の姿は無かった。
「やあ!ユウト。『巣』を破壊出来たんだね。よくやった……って、お熱い仲を邪魔したかな?」
ツカサ先輩の言葉の意味を考えあぐねていると、「ユウト…いたい…」と、リラさんの呟きが…
ああっ!リラさんの手を握ったままだった! 「ごめんなさいっ!」
僕は慌ててリラさんの手を離す。
彼女は顔を真っ赤にしていて…
––– だいぶ怒って……ますよね?
「そうだ、ユウトくん。佐々木君はシブが毒素を抜いてくれたが、念のため救急搬送してもらったよ。 だけどその後に、シブは慌てて消えちゃったけど…どうしたんだろうね?」
ツカサ先輩の言葉に、『その事なんですが…』と、僕は『巣』の元凶だったハーブの売人であろう先輩の取り巻きだった男子生徒と、『白い少年』の件を話した。
「ユウトくん、ふざけて済まなかったね。そんな事が…」
ツカサ先輩は顎に指を当てると、「それに……あいつ、そんな事をしていたなんて。友達だったのに、気付かなかった自分が許せないよ…」と、唇を噛んだ。
「そんな、先輩が自分を責める事じゃあ…」
僕の言葉にかぶりを振る先輩。
「いや、分かっていたんだ。あいつが俺を妬んでいた事をね。…俺はその事を知りながら、見て見ぬふりをしたんだ。むしろ、それに優越感すら覚えていたんだよ…軽蔑するだろ」
ツカサ先輩は、『ふぅ』と一息つくと、窓の外に視線を移して続けた。
「誰しも皆んなから頼りにされたいって想いはある。ただ、あいつの努力する方向性が間違っていたんだな……『巣』を破壊出来たんだったら、きっと…あいつは自首してくれる筈だ。でなければ、俺が連れて行く。それが、友達というものだと思うから」
僕は何も言えなかった。
それは、先輩に失望したわけではなく、むしろ逆。こんな真っ直ぐな人が居るのだと自分の小ささを感じたからだった。
その間も絶え間なく続くサイレンの音…
平穏を取り戻すには、まだ時間が掛かりそうだった。
【次回予告】
あ〜あ〜 テス、テス。
うーん、何だったんだ?このエラーは?
あれ? 繋がっている?
大変失礼しました! 3つ目の『巣』を撃破したユウト達!次回は息抜き出来るよね!
…あれ?読者のテンションが低いですねぇ?
どうしました?
はい?……白い少年?
誰ですか? それは…
次回!『学園定番のイヴェント』
お楽しみに!!
––– 僕の
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