擬態イヴェの正体
『どうしたんや!? しっかりするんやユウト!』
「カアク…あの、鱗粉…だ。このままりゃ、マズひ」
僕の口が痺れに犯され始め、
更には、地面が綿のように感じ始め、踏ん張る力さえも奪っていった。
そして…僕は「うぇぇええっ!」遂にその場で吐いてしまった。
『
こんな状況で…名言を汚すなっ! ああ、ツッコむのもキツくなってきた…… ん?
「あれ? なんだか、
それは背後から聞こえる断続的な機械音。
ツカサ先輩の傍らにある集塵機が、イヴェの鱗粉を吸引する事で、僕達の症状は治まったのだ。
『ナイスイメージだ、リラ。正に
ナロゥめ、こんな時にでも
「そんな事より、あのイヴェはどうするのよ!? あんなに高い位置じゃ狙えないわ!」
リラは空に向け銃弾を放つが、思いのほか素早い動きをするイヴェの急所に命中させるのは困難を極めていた。
鱗粉はどうにかなったが、仕留める術が見当らず、焦燥感が募ってゆく…
だが!その時、僕は閃いた!
「あのぅ、無視して進んだらどうでしょう?」
『虫だけにか?上手いこと言うやん!』
いや、そんなボケは求めてないよ、カアクちゃん。
「ユウトくんの言う通りだ、今のうちに北棟に入ってしまおう!」
ツカサ先輩の声で僕達は噴水を迂回し、腰高の花壇を飛び越え中庭を駆け抜ける。
北棟の重厚な扉を潜ると、不気味な静寂の中、その空間は僕の荒い息遣いで満たされた。
「ヤバかった…ツカサ先輩、リラさん、有難うございます」
肩で息をする僕に、リラは「ユウトは貧弱すぎるのよ!もっと身体を鍛えなさい!」とのお言葉。
…はい、前向きに検討させて頂きます。
「イヴェの巣はこの建屋の一番上だね、そこには何の部屋があるんだい?」
ツカサ先輩の涼しい顔での問いに、リラは「理事長室よ」と端的に答える。
『理事長か…そいつが巣の元凶だな』
ナロゥの呟きの意図がわからず、僕は意味を問うと、『イヴェの巣とは、人間の強欲によって形成されるのさ。さっき遭遇した『蝶』の擬態イヴェはその人間の欲に起因する。つまり、『綺麗になりたい』『飛びたい』いや…『甘い蜜を吸いたい』だろうな。そんな想いからイヴェの巣が形成されるんだ』と、答えた。
…つまり、『
ツカサ先輩はしばらく考えている様子だったが、リラの青い銃に向かい問いかけた声には疑念の色が濃く含まれていた。
「ナロゥと言ったか?では、この先『巣』に近づくなら、あの蝶の様なイヴェだらけになると…」
『そうだね、だけど
ナロゥの言葉に、その場の緊張感が一気に張り詰める。
「行きましょう」リラの静かな一言で僕達は階段を登ると、そこには夥しい擬態イヴェが待ち構えていた。
【次回予告】
迫る理事長室!押し寄せる擬態イヴェ!
そして遂に辿り着き目撃する【巣】とは!?
次回!『【巣】〜ネスト〜』
お楽しみに!!
––– 僕の
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