Kapitel Ⅲ(第三章)

第44話「秋の来訪者。そして修羅場の予感」


秋になった。ドイツの秋は、グンと気温が下がるとマリアは言っていたが、日本の秋は残暑が残る。


そんなある日、俺の狭いワンルームをさらに狭くさせる事件が起こった。



「しばらく泊めさせてもらうわ」



そう言う、身長150cmの俺の姉貴、咲良(さくら)。


最近イメチェンしたらしく、それまでショートだった髪が、今はロングになっている。そしてストレートだ。


聞く話によると、彼氏にこっちの方が好みだと言われたらしい。


まぁそんなことはどうでもよくてだな。



「帰ってくれないか?」


「なんでよ!?」


「それはこっちのセリフだわ」



現在、この狭いワンルームには俺とマリアが暮らしている。


なんでここに泊まりたいのかは知らんが、二人ですら狭いというのに、三人なんて無理に決まってます。


んで、そのマリアさんなんですが、現在はバイト中なのでここにはいません。


姉貴にはまだマリアのことは言っていないので、できることなら姉貴にはマリアの存在をバラしたくはない。


いづれは紹介するかもしれないが、まだその時期じゃないことは確かだ。



「実家に帰ってください」


「絶対いやよ」


「ここに居候されるのも絶対いやじゃ」


「ケチ臭いわね。お姉ちゃんがいいコトいっぱいしてあげるわよ」


「いや、そういうのマジでいいんで」



義理の姉弟とかならまだ分かるけど、さすがに血のつながった人とはねぇ・・・。


そういうのは、創作世界の中だけなんです。



「そんなに拒絶されると、お姉ちゃん悲しい・・・昔は、さくねぇさくねぇって言って、私にべったりだったのに」


「いつの話だよ」


「とにかく、一週間ぐらいだから、お願い」


「お断りです」


「どうしてよ!? あっ・・・まさか」



何かを察したように、口に手を当て、身体を引くように拒絶をする体制になる。



「なんだよ」


「愛斗、もしかして、彼女でもできたの?」


「んなわけ・・・」



そう言いかけた、まさに絶好のタイミングで、玄関のドアが開く音がした。


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