貴方の熱で孤独の夜を終わらせて。独りとふたりの、運命に立ち向かう物語。

 人間と精霊、それ以外の種族が住まう世界で、特殊な事情と呪いを身に負う主人公ディルが孤独に生きぬき、やがて恋に出逢う物語。

 銀の髪、空の色を映す不思議な瞳、中性的な美貌を持つ若者ディル。実の親を知らず自身の種族さえも不明な彼女(?)は、その美しさと非力さゆえに虐待され、誰にも顧みられず孤独に生きていました。酒場で知り合い、ディルに惹かれた薬師のロイは、去ってゆく彼女を放っておけずに後を追い、凄惨な現場を目にすることになります。
 一度は去ろうと思いつつも、結局ロイはディルと、彼女の側にいた黒狼を家に連れて帰ることに。
 そうして明かされた彼女の過去は、凄絶なものでした――。

 虐げられることに慣れすぎて、自分を顧みるすべを知らなかったディルが、黒い狼青年と、お人好しな(でも手が早い)薬師によって、少しずつ孤独を癒やされていく、というこの物語。けれど世界はディルを呪い、死のさだめが容赦なく彼女を追い立ててゆきます。
 ディルが穏やかに幸せに暮らせるどこか――そんな場所はあるのでしょうか。

 やや大人向けの色香が漂う異世界恋愛ファンタジー、完結もしており安心です。ぜひご一読ください。

その他のおすすめレビュー

羽鳥(眞城白歌)さんの他のおすすめレビュー963