第38話 お偉いさんの所へドナドナされちゃいました

 小田原城のダンジョンを制覇した2人はドロップアイテムを売るために換金所へと向かう。祐樹がリュックの中に隠しているマジックバックからドロップアイテムを取り出し次々とカウンターに並べていく。だが、A級の魔石を見た途端係のお姉さんの顔色が変わった。


「あの、お客様こちらの魔石はどちらで入手した物でしょうか?」


「これは小田原城のダンジョンで30階層のボスを倒して手に入れました」

 祐樹が30階層で手に入れたと聞いてさらに驚いている感じだった。


「換金はこちらで済ませるので、そのお話を別室で伺ってもよろしいでしょうか?」

 祐樹はどういうことか分からなかったので理沙にどうするか確認すると頷いていたので大丈夫だと伝えると4階の支部長室まで連れてこられた。


 トントン

「支部長緊急の要件なのですがお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」


「ちょうど一休みしようとしていた所だ。入って来てくれ」


「失礼します」

 中に入ると40代ぐらいのスーツを着たおじさんが書類が積み上げられた机から顔を出してこちらを見ていた。


「それで緊急の要件とはなんだ……。うん、君の後ろにいる2人は誰なんだ?」


「このお二人は小田原城のダンジョンを制覇したらしいのですが、30階層のボスがA級の殿様コボルトだったそうです」


「なんだって、それは本当かい?」

 おじさんはガバット立ち上がり祐樹たちの方へと近づいてきた。


「本当です」


「そうか、もう少し詳しく話を聞かせてもらってもいいかな?この子たちから話を聞くから君は仕事に戻ってくれ」

 おじさんに2人はソファーに座るように促されたのでおとなしく座る。換金所のお姉さんは退出していった。


「そう言えば自己紹介がまだだったね。私は小田原の支部長太田俊也だ」


「俺、いや、私は如月祐樹といいます」

「私は吉田理沙といいます」


「そう硬くならなくて大丈夫だ。普段通りの言葉使いで構わないよ」

 太田さんはお茶とお菓子を二人の前に並べてくれた。


「それでダンジョンの事なんだけど詳しく教えてくれるかい?」


「俺たちは30階層で日本語を話せる殿様コボルトというモンスターと戦いました。俺が鑑定を持っているのでステータスを確認すると剣術Lv.3、眷属召喚Lv.2、味方強化Lv.1、統率Lv.3を持っていました」


「日本語を話し意思を持っているモンスターなんて聞いたことがない。それにボスはそんなにスキルを持っていたのか。君たちは二人で潜っていたのだろ?よく帰ってこれたね」


「テイムのスキルを持っているので仲間を召喚して戦いました」

 祐樹はユニークスキルのことは誤魔化しつつ説明することで納得してもらった。


「君たちが無事に帰ってきてくれてよかったよ。それにしてもおかしいな……。あそこのダンジョンは自衛隊の方に30階層まで確認してもらってC級の武士コボルトが30階層のボスだと言っていたし、しゃべる魔物なんて聞いたことがないんだよな。それにレベルが30に近い魔物が12体もいる中で戦うのは危険だ。しばらく封鎖してもう一度確認してもらう必要があるな」


 太田さんが言う通りならA級のモンスターがあそこにいることが異常だということが分かる。だが、我々人間にはこれが普通なのか異常なのか分からないのだ。


「情報提供ありがとう。ついでに高校生にとっては大きめの額になるだろうからお金の支払いもここで済ませよう」

 太田さんは内線で換金所の人に連絡を入れてお金をこちらに持ってきてもらった。


「まず、コボル刀はレアドロップなので2万円、素材系と魔石系は数が多いので結構な額になり7万8000円、最後にA級の魔石ですが数も少なく希少価値が高いので10万円、合計19万8000円となります。ご確認ください」


「「A級の魔石ってそんなにするんですか!」」


「A級の魔物がいる階層まで潜れる人も少ないし、強いということもあってA級はなかなか出回らないんだよ」


「そうなんですか」


「疲れているところを引き留めて悪かったね」

 太田は二人を見送ってから、冒険者ギルド本部の部長兼ダンジョン管理省の大臣である酒井大臣に電話を入れる。


「酒井大臣、小田原の支部長太田です。緊急のご報告がありお電話させていただきました」


『太田支部長か。緊急とは一体何があった?』


「それが……」

 太田が一通り説明し終えると酒井大臣は困っているようだった。


『しゃべる魔物と突然現れたA級の魔物か。なにか異変が起こったのかもしれないな。取り敢えず小田原城に自衛隊の攻略班を派遣するからそれまでダンジョンは封鎖ということで』


「分かりました。直ぐに封鎖します」


『それはそうとその情報をくれたのは誰なんだ?』


「高校生の二人組の冒険者でした」


『たった二人でダンジョンを制覇したのか!う~ん、もしかしたら何かしらのユニークスキルを持っているのかもしれないな』


「ユニークスキルですか?」


『あぁ、私はその可能性が高いと思っている。そのうちその二人と会ってみたいものだ。はっはっはっ』

 大臣は楽しそうに笑っていた。


「程々にしてくださいよ」


 二人は国のお偉いさんに注目される存在になってしまったなんて思ってもいなかった。


◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇

 いつもダンドリを読んでいただきありがとうございます。

 作者のモチベーションにつながるので、面白いと感じてくださいましたら☆☆☆評価とブックマークと♡を押していただけると嬉しいです。

これから週3~4回の投稿に変更させてもらいます。それと同時に過去の話を修正していこうと思います。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る