第34話 小田原を守る侍魂②

 レベル差もあり大した相手でもない魔物を次々と蹴散らしながら20階層のボス部屋まで向かい中に入る。ボス部屋は10階層と同じ広い場所であったが中に居る敵の姿が大きく変わっていた。足軽の甲冑は頭に被った三角形の陣笠、下半身を守る「臑当」《すねあて》、手を守るための「籠手」《こて》も簡素なつくりの頭部と胴体部分を守るだけの最低限の軽装であった。しかし、目の前の敵は室町時代末期から戦国時代にかけての時代に活躍した当世具足骨を身に着けたコボルトが床几しょうぎという椅子に座っていた。骨の形をした前立が付いた兜をかぶっておりそこは犬らしいなと思った。

 祐樹は直ぐにリーダー格と思われる敵を鑑定した。


 種族 武士コボルト

 レベル 20

 HP  146

 MP  0

 物攻 124

 魔攻 0

 防御 100

 スキル

 剣術Lv.2 統率Lv.2 日本語Lv.2


 他のモンスターは足軽大将2体と足軽6体でレベルが先より高かったこと以外は大したことはなかったが数が多かった。


「こいつ話せるのか?」


「えっ、モンスターが喋れるの!」

 祐樹に続いて理沙も驚いたすると床几に座ったコボルトが声を発した。


『コレヨリサキニハイカセナイ。モノドモカカレ!』

 片言ではあったが確かに日本語を話していた。そして、武将風のコボルトの指示に従い全員が抜刀した。それに対し祐樹はカッパーゴーレム、ストーンゴーレム、もやもやライオン、ビッグスライム、足軽大将、ハクサイを召喚して立ち向かう。


『ムッ、ドコカラアラワレタ? ウラギリモノモイルノカ……。ダガ、イカニカズガフエヨウトカンケイナイ。カカレ!』

 一瞬、驚いてはいたが直ぐに気を持ち直して突撃するように命令した。部下たちは大将1体と足軽3体の二手に分かれ襲い掛かってきた。


 足軽たちは立ちふさがるゴーレム2体を斬ろうとするが、もやもやライオンの咆哮で怯まされて動きを止めた。その隙にゴーレム2体が叩き潰す。レベルが上がりさらに強くなった彼らを20レベル以下の魔物が敵う筈がないのだ。


『ナ、ナントイウコトダ。テキハココマデツヨカッタノカ……。シカタガナイワタシミズカラオマエタチヲコロシテヤル』

 武士が立ち上がり己の刀を抜いた。


『サァ、ドコカラデモカカッテコイ‼』

 残す敵は一体。誰が止めを刺すかということになり全員で目を合わせたところもやもやライオンやる気に満ち溢れていた。


『ガウ、ガウ!』


「キングが行きたそうだけど、理沙もそれで大丈夫?」


「大丈夫よ」


「じゃあ、キングに任せるよ。行っておいで」

 許しを得たキングは敵目掛けて一気に詰め寄り鋭い爪を振り下ろす。それを武士コボルトも刀で受け止める。


『グッ、ツヨイ。グハァッァァー』

 レベル差があるのだから耐えられるはずもなくざっくりと切り裂かれたコボルトは大ダメージを受け鎧が避けたがまだ息をしていた。


『ハァ、ハァ、ハァ、キングトヤラジツニミゴト。ハァ、ァ、トノ……モウシワケアリマセ……ン』

 最後に殿という存在に対する謝罪の言葉を残して消滅した。そこに残っていたのは綺麗な作りの刀が残っていた。


コボル刀……武士コボルトのレアドロップ品。武士コボルトが愛用していた刀。普通の刀より頑丈。


「コボル刀だって。この刀貰ってもいい?」


「私は刀なんて使わないから別にいいわよ」

そろそろ新しい武器が欲しかったので、理沙に聞いてみるとお許しがもらえたから早速腰に差す。日本人といえば刀だと思ったのでかなり嬉しかったが武士が最後に謝罪した存在について気になった。


「ありがとう。それよりもよりも殿ってことはラスボスは殿様なのか?」


「多分そうだと思うわ。天守閣はお殿様がいる場所って相場が決まってるのよ」


「じゃあ、最後の敵は殿様か。どんな滴下は分からないけど気を引き締めないと」


 目指すは最上階。そこに待ち受ける殿とはどんな敵なのか?

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