第13話 総理の悩みの種
ダンジョンという不思議な場所が現れたのは日本だけであった。様々な恩恵をもたらしてくれるダンジョンが自国にもないか、各国の政府は隈なく探したが見つかることはなかった。そのため日本政府には毎日各国の首脳や国際機関や企業からの問い合わせが来る。この対応に追われた菅原総理は秘書に対して愚痴を漏らしていた。
「はぁ……もうこの2週間で色々ありすぎだ。地震が発生して日本全国が揺れたと思えば、ダンジョンなんていう未知の存在が各地に現れ、見たこともない化け物が闊歩するようになった。死者も出たことで封鎖しようとすれば国会を囲むぐらいのデモまで起きて、国内が落ち着いたと思えば国外の対応に追われるなんて。もう、総理辞任しようと思っているんだがどう思うよ?」
もう辞めたい発言をする総理に秘書はまたですかと言わんばかりに頭を抱えている。
「総理に今辞任されると大変困ります。ただでさえ忙しいのに選挙する余裕なんてないですよ。それと絶対に記者団の前とか野党がいる場で言わないで下さいよ」
「それぐらい私も分かっている。だが、あいつら我が国の軍隊を日本に派遣するとか、ダンジョン周辺の土地を買い取らせろ、ダンジョンから持ち帰ったものをこちらにも流せなんて許可することができるわけないだろう。許可した日には荒れるだろうな……」
どこの国もダンジョンから手に入る未知なるアイテムや力や資源が欲しいのだ。日本の土地を買い取り基地でも建てられて軍を送り込むなんてされた日には周辺住民のデモとか絶対に起きる。それは嫌だなと菅原総理は遠い目をして窓から外を眺めながらコーヒーを飲んでいた。
「絶対に荒れますね」
「だろ?今の私を癒してくれるのはこれだけだよ」
そう言って総理は自分の机から異世界物の小説を取り出して秘書に見せた。
「見事にハマりましたね。読書もいいですけど仕事はきちんとこなしてくださいね」
「大丈夫だ。私がさぼるわけないだろう」
今日も総理は諸外国に悩まされつつも日々楽しく生きているのだ。頑張れ総理!!
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