第二話 黒く塗れ!

 東京タイムズタワーに匹敵する高さを誇るペグモパレスを上下に貫く水路に落とされたラルナさんは、すぐ下の階の水車部屋に落水しました。そして水車に巻き込まれるように下の階に落ちて行きます。

(あ、やばい、これ死ぬ……)

 両手両足を拘束されたラルナさんは泳ぐこともできずアヒルのおもちゃのように流されるばかりです。

 数度の落下の後、ラルナさんの進路には垂直な水路を挟み込むような大きな歯車が噛み合っていました。

 ぐるぐる回る歯車に挟まれば分厚いラルナさんの体はあっというまにオカモトのコンドームのような薄さしかなくなってしまうでしょう。

 ラルナさんは恐怖で目を閉じました。

「もう! 見てらんないね!」

 激しい水流の中、ラルナさんの二の腕が何かに掴まれました。そのまま引きずり込まれるようにラルナさんはどこかに消えてしまいました。

「重すぎんだよアンタ!」

 目を開いたラルナさんは、見覚えのあるラブホの部屋にいました。

「ブヒヒン!」

 ラルナさんの前にいたのは、死神のおばちゃんでした。

「アンタ! 脳みそ金玉でできてるのかい!!」

 死神のおばちゃんは、肩で息をしながらラルナさんに怒鳴りました。

「アタシ、この部屋を出たら良き行いを積み重ねなさい、それが試練だっていったはずだよ!」

 おばちゃんは、いつものソファに腰掛け、バージニアスリムに火をつけました。

「ったく、異世界についてそうそう性欲の赴くままに女の子にひどいことして、そんなに地獄に落ちたいのかい!?」

 ラルナさんは(そんなこと言われても、生きかえったところであんな上玉とパコれることなんてないだろうし、それなら取り敢えずハメたほうがいいじゃん)と思いました。

「ロスタイムにボールじゃなくてスタンドの女の子を追いかけるようなもんだよ…」

 おばちゃんの吐き出した煙に部屋に置かれたパナソニックの空気清浄機が反応して音を立てます。

「とにかく、その“アンティオキアの聖なるギャグボール”はあんたにはちょうどいい試練かもしれないね」

 おばちゃんはラルナさんの側に歩み寄ると、後頭部にある“アンティオキアの聖なるギャグボール”の結び目にハート型の錠前をかけました。

「フゴゴ! ブヒヒ!」

 ラルナさんは抗議の声を上げましたが、おばちゃんは「おだまり!」と一喝します。

「とにかく、良き行いの第一歩は誰かに信用されることだよ」

 おばちゃんは、部屋の出口を開け放ちました。そこはペグモパレスの水路につながっていました。

「誰かが、きっとこれを拾ってくれる。それは誰かはわからない。あんたが誰からも信用されるよう人間になればきっとその鍵を外してくれるさ」

 おばちゃんは手にした真鍮色の小さな錠前の鍵に、「うちのタマ知りませんか?」のタマのキーホルダーをつけました。

「誰からも信用されるようになりなさい」

 おばちゃんは水路に紙くずを投げ捨てるように鍵を投げ込みました。水流に飲み込まれたタマはあっというまに見えなくなります。

 おばちゃんはまたラルナさんに近づくと「特別サービスだよ」と言いながら手足の拘束を解いてくれました。

「フゴゴ!」

 ラルナさんは立ち上がると手足をぶんぶんふってストレッチしました。

「さすがのアンタもあの歯車に飲み込まれたら死んじまうだろうからね、扉は水路の出口につないでおくから」

 おばちゃんはタバコの灰を手に持った灰皿におとし、ラルナさんに背を向けました。

「さあ、さっさとお行き! 現世には待ってくれてる人がいるんだろ……」

 ラルナさんは(これはOKのサインだろ)と確信しておばちゃんに背中から抱きつきました。

「バカ、あんた、ちょっと離しなさい!」

「フゴゴ」

 ラルナさんはボールギャグから唾液をしたたらせながらおばちゃんの胸を服の上からまさぐりました。

「いい加減にしなさい!」

 おばちゃんはラルナさんのみぞおちに肘鉄を入れました。ひるんでいるラルナさんの耳をつまみあげるとラルナさんを連れて歩き、「ほんと油断もすきもないねこの淫乱テディベアは!」と言いながら扉を開きました。

「悔い改めなさい!」

 ラルナさんは扉の外につまみ出されました。



一方その頃……。



「今日からあんたはこのゴミためで、死ぬまでクソをかき出して過ごすんだよ!!」

「はい……」

 汚いつなぎをきている、ボサボサの髪をお団子にした中年女性はそう言うとクッコロに熊手のような道具を押し付けました。

「あたしのことは班長とよびな。今日からあんたの教育係だよ」

「はい……班長……」

 クッコロはぶかぶかでサイズのあっていない、つなぎを身にまとっています。

 ここはペグモパレス最下層、通称「地下」と呼ばれるエリアです。

 ここペグモパレスは高層建築です。最上階でも生活用水は天から降り注ぐマン湖の水で得ることができます。しかし糞尿や残飯、その他あらゆるゴミ捨てに難儀することになります。そこでペグモパレスでは各階にダストシュートが設けられており、水路から分岐した水を流して地下に送り出しています。

 そしてこの「地下」こそが、神の宮殿ペグモパレスのすべての穢が集められる終着駅なのです。

 先程、ペグミに「地下行き」を言い渡されたクッコロは、すべての特権を剥奪され「地下」の作業員として死ぬまで働くことになったのです。

「ふん、女王陛下にはかわいがられていたみたいだけど、ここじゃ関係ないよ」

「はい……」

「まだ悪夢を見ているような気分みたいだね。安心しな、これは現実だ。明日の朝目覚めてもクソと腐ったゴミの匂いがするここから逃げられないし、明後日もその次も永遠だ」

「はい……」

 班長に言われた通り、

 

 

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異世界ラルナ メガマラノンケボーイ @zockyosida

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