2-5.エンディング
GM 荒くれ者たちから聞いた話によると、リアンはキングスフォールでそれなりに名前が知れた冒険者の恋人だったらしいね。
ユイ アルヴの恋愛か~。なるほどねー。
GM その冒険者、名前はアドレーっていうんだけど、いわゆる人格者でいろんな人から慕われていたのね。ただ、恨みを持っている人もいて。アドレーに恨みを持つ人がアドレーの死後、リアンを狙った……って感じ。
ユイ あー、死んじゃったんだ……。そっかぁ。それはわかったけど、それがどうしてアイドルに繋がるんだろー?
GM そこはリアンが話してくれるね。
リアン 「……私たちアルヴは、他者からマナを吸収しなければ生きられない、ですよね。あの方が、アドレー様がこの世を去ってから、マナを吸う相手に困って……。それで、その、アイドルになればファンがつくじゃないですか。だから、マナを吸う相手に困らないかなって……」
ユイ そこでアイドルに行きつくあたり、だいぶ思考がぶっ飛んでるよね~。
お前がそれを言うのか。
リアン 「あのあの、たぶん、幼い頃に見た旅芸人の方への憧れもあったんだと思います。歌と踊りを披露して、キラキラと輝いていて、いろんな人たちから喝采を受けていて……だから、楽しかったんですよ? 歌やダンスの練習をするのも、路上ライブも」
リアン 「でもひたむきに、純粋な気持ちでアイドルを目指してがんばっているユイさんを見て、思ったんです。マナを吸いたいなんていう不純な動機でやってはいけないことなんだ、って。応援してくれている人たちを騙してマナを吸うなんて……自分の欲望のためにアイドルをやるなんて、そんなのはダメだと思って、それで――」
ユイ そこで遮るように口を開くよ~。「別にいいんじゃないかな~。自分の欲望のためにアイドルをやっても」
GM お、じゃあリアンはその言葉に、「え……?」と声をあげる。
ユイ 「それって生きるために必要なことだし、要するにちょっとずついろんな人からマナを分けてもらうってだけの話でしょ? みんなを楽しませて、そのお礼にちょっとだけマナを分けてもらう……それってぜんぜん咎められるようなことじゃないと思うな~」
リアン 「そう、なのでしょうか……」
ユイ 「悪意を持って、とかなら別だけど、そうじゃないよね~? それに、楽しかったんだよね、アイドル活動が。ただ利用するだけじゃない、憧れがあって、やりたいっていう気持ちもあったんだよねー? だったら、その“やりたい”を全力でやればいいんじゃないかなー。だって、それができるのは“今”だけなんだから」
GM その言葉にリアンはハッとした表情になって、ユイが短命種であることを思い出す感じだね。
――静かに微笑みながら、ユイは言葉を続ける。
「アルヴが長い寿命を持つって言っても、1年後も今やりたいことができるかどうかなんてわからないよね? 後悔しないため、今やりたいことに全力で向き合うべきだって、アタシはそう思うな~」
「ユイさん……」
「なんだったらカミングアウトしてもいいと思うよー? 生きるためにマナが必要だからちょっとだけ分けてください、って。“むしろ吸ってくれ!”って言ってくる熱心なファンができるかもだし」
ユイは空気を軽くするように悪戯っぽく笑んだあと、トン、と小さくステップを踏んで、まっすぐにリアンを見つめる。
「だからさ、やりたいことをやろうよ。アタシはまだまだ冒険者としていろんなことがしたいから、事務所に所属して、っていうのはできないけど……でも、同じ夢を持つ友だちとして、切磋琢磨はできると思うし」
夕日に背を向けて、咲き誇る花のように微笑んで、ユイは告げた。
「――後悔しない未来を、掴みに行こうよ」
GM リアンはユイの言葉を聞いて、大粒の涙をこぼしながら何度も頷くね。声にならない感じ。
ユイ リアンをそっと抱きしめるかなー。それで背中をポンポンってする。
GM そうするとスイートピーも、「わたしもいっしょだよ、リアンお姉ちゃん!」と言ってギュッと抱きつく。
ユイ うんうん。リアンは事務所に所属してアイドルを続けて、アタシとスイートピーは冒険者を続けながら経験を積むって感じかな~。
GM とりあえずエンディングに行こうか。
ユイ はーい。
GM あのあと、アドレーと仲の良かった冒険者がギルドに依頼していたらしくて、リアンを狙っていたヤツまでたどり着いて上手いこと処理できたみたいだね。ユイが手下どもを捕縛したから、そこから繋がった感じ。
ユイ お、それじゃあ本当に後顧の憂いもないね~、よきよき。
GM で、アドレーが人格者だったっていうのは言ったけど、それもあってリアンを応援してくれる人たち、じつはそこそこいたみたい。結局はリアンが周りに心を開けなくて、結果的に自分で自分を追い詰めていたっていう。
ユイ このGMとは思えないハッピーエンドだー!
GM その一言は余計ですぅ! ユイが負けてたらけっこう酷いバッドエンドになっていたから釣り合いは取れてるよ! リアンだけじゃなくユイもスイートピーも酷い目に合う感じで追加シナリオを別日に……とか。
ユイ うわぁ……。
GM コホンッ。で、そういったことがありつつ、一週間くらい経って。ユイはスイートピー、そしてパーティの仲間たちとともに新たな冒険に出かける――んだけど、そんなキミのもとに、リアンがやってくる。
ユイ あ、待って。アタシ、このあとの展開わかったかもー。
GM おう、鋭いな。そうだよ。リアンの胸元には“冒険の紋章”がついてる。
ユイ そういうエンドか~。うん、個人的にはそっちのほうが好きかなー。かわいい女の子が増えるし。
GM ああいうロールプレイをされたらね、憧れちゃうし追いかけたくなっちゃうよね。
冒険の紋章――冒険者ギルドに正式に冒険者として認められた者が付けることを許されるそれを身につけたリアンは、満開の笑顔でユイに告げる。
「後悔しないように生きろ、やりたいことをやれって、言ってくれましたよね! 冒険者系アイドル! 一緒に目指しましょう!」
愛した人がかつて歩んだ冒険者という道。大切な友だちが歩んでいるアイドルという道。
ふたつの道が重なるその先へと、アルヴの少女は一歩を踏み出す。
たとえその先に、寿命の違いによる別離があったとしても――それが今、自分がやりたいことだから。
---
GM ということで、シナリオ終了! おつかれさまー!
ユイ おつかれさま~。それで、改変前はどうなる予定だったのー?
GM 裏取りするとリアンの過去がわかって、冒険者ギルドに行くとアドレーがすごく慕われていたこと、そんなアドレーが大切にしていたリアンをギルドの人たちも応援したいと思っている、っていうのがまずわかる。ここでギルドからリアンを助けてほしいっていう依頼を受ける。
ユイ ふむふむ。
GM で、トレーニングするなかでいろいろ話を聞いて、仲良くなって……っていう流れのなかで、寿命の短い種族と長い種族がどうやって一緒に生きるべきなのか。先に逝った人が遺した意志を受け継いで生きていくことが、短命の者と長命の者の共生のひとつの在り方なんじゃないか……っていうのを、スイートピーを絡めてやりたかった。
ユイ なるほどね~。
GM ちなみにライブとP登場からのスカウトは即興だった。
ユイ え、そうなんだ(笑)
GM トレーニングも最初は本当に5回判定するだけだったし。いろいろショートカットになったぶん、イベントのボリュームを増やしたいなーっていうのと、依頼受けないぶんの報酬を渡したいなーって思ってね……。
ユイ だからMP周りの処理がちょっと強引だったんだね~。
GM そこはちょっと反省点かな。いや、でもやりたいこととは違う形になったけど、この方向性も超絶好き。
ユイ アタシもやりたいことができて満足ー。なんだかんだこっちの無茶ぶりに付き合ってくれるよねー(笑)
GM ここまでシナリオ投げ捨てることはこのメンツ以外だと早々ないけどね(笑)
ユイ 次の予定、7月のどこかだっけ?
GM そうそう。まだ決まってないけど、一ヶ月に1回のペースで集まって、毎月1セッションぶんのエピソードを投稿できればいいなーってなんとなく思ってる。
ユイ なるほどね~。アタシは比較的自由が利くけど、アタシばっかり参加していると経験点に差がついちゃいそうだな~。
GM そのへんは追々考えるってことで、とりあえずおつかれさまー。
ユイ おつかれさまー!
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