第156話 薄緑


それはまだ冷たさの残る風が吹き荒れている日のこと

僕らは薄緑の繭のなかをゆらゆら揺蕩っている

うっすらと透けて見える光はどこか弱々しくて

半透明の僕たちの体をほんのり緑色に染める


その先の世界のことを考えなければならないのだけれど

今はまだ何も気づかないふりして目を閉じていたい


五感を研ぎ澄ませただこの緑の中を漂っている

信じられるのはここに在る自分の体と

蠢きながら漂いながら感じる音や光

それだけで「生きている」のを感じられるから

僕らは生まれ落ちることを肯定できる


それはまだかすかな春の兆しを探している日のこと

僕らは薄緑の繭のなかをゆらゆら揺蕩っている

揺蕩いながら静かに新しい生命を待っている

この薄緑の世界で

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