第156話 薄緑
それはまだ冷たさの残る風が吹き荒れている日のこと
僕らは薄緑の繭のなかをゆらゆら揺蕩っている
うっすらと透けて見える光はどこか弱々しくて
半透明の僕たちの体をほんのり緑色に染める
その先の世界のことを考えなければならないのだけれど
今はまだ何も気づかないふりして目を閉じていたい
五感を研ぎ澄ませただこの緑の中を漂っている
信じられるのはここに在る自分の体と
蠢きながら漂いながら感じる音や光
それだけで「生きている」のを感じられるから
僕らは生まれ落ちることを肯定できる
それはまだかすかな春の兆しを探している日のこと
僕らは薄緑の繭のなかをゆらゆら揺蕩っている
揺蕩いながら静かに新しい生命を待っている
この薄緑の世界で
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます