第3話 以心伝心といえる全て
事故に遭う前の幼馴染と俺は簡単に言えば相反した存在だった。
クールで生徒会長に抜擢されるぐらいのレベルの感じであったのだ。
その存在はまさに本当に神といえるかもしれない。
俺はそんな美里が好きだった。
昔から好きだという恋心を密かに胸に抱いていたのだ。
まあ幼馴染は全然振り向かなかったが、である。
しかし今は全く違う感じだ。
交通事故に巻き込まれてから、だ。
何というか先程も言ったが甘くなっている。
糖度100%の甘ったるい果実ぐらいに。
「えへへ。すりすりすりすりー」
「やめーや!」
いきなり何すんだよ!
甘える猫じゃ無いんだから!
昼休みの俺と仁が飯を食っている最中。
甘えてくる美里。
突然やって来たのだが.....。
まるで本気で猫の様に紅潮しながらすりすりしてくる。
や。やめーい!!!!!
割と接触した肌がゾクゾクする!
ヤバいってこれは!
と思いながら仁を見た。
仁はジトっとしながら俺を見ていた。
「ワハハ!お前愛されてんな!.....割と殺して良いかガチで」
「言葉が纏まってねぇぞ!つーか良い訳ねぇだろ!俺は殺される為に居る訳じゃねぇんだ!」
「おうお前ら!ぶっ殺して良いってよ!」
「どう捉えればそうなるんだよ!お前!?」
仁が周りに大声を掛ける。
それが拍車になった。
おっしゃ!真面目に埋めてやるぜ!三菱くんヨォ!、と周りは言ってくる。
因みに俺の名前は山菱だが冗談めかして三菱と言ってくる。
親しみを込めてかどうかは知らんが。
何というか俺は鉛筆か洗濯機か?
全くもう.....と思っていると美里が何かに気が付いた様に俺を見てくる。
俺は目を丸くする。
「あ。ご飯粒付いてるよ。頬に」
「.....え?ああ。すまな.....」
「えいっ」
いきなりパクッと俺の頬にキスをしてくる。
そのご飯粒を咀嚼してから艶かしくゴクリと飲み込む.....美里.....オイオイ!?
えぇ!!!!?、と思いながら慌てて頬に手を添えながら俺は真っ赤になりつつ.....美里を見る。
周りが、オラァ!!!!!、と逆三角形の目で絶叫した。
それからありったけのブーイングをかましてくる。
「ふっざけんなコラァ!!!!!」
「このクソ野郎!卒業したからって言い気になるなよ!このカスが!!!!!」
「殺す!絶対に許さん!!!!!」
仁も愕然としていたが俺の手に手をゆっくり添えつつ。
裏切り者、とニコッと微笑んでから俺を束縛した。
ケケケ、と言いながら、だ。
ちょっと待て!俺のせいかこれは!?
明らかに違うだろ!!!!!
「みんな静かにして。私の達也は悪くないんだから」
「お前な!!!!?私の達也って言うな!?火を点けているからな!」
ガルルルル、と声がする中で言うのかそれを!?
しかも何、能天気に答えてんの!?
全く良い加減に.....、と呟いた所で更に爆弾を落としてきた。
美里は、そういえば達也。最近エッチな事をしてないけど何かしよ.....?、と。
流石の俺もその言葉には美里の口を直ぐに塞いだ。
しかしながらこのクラスの男子全員が暴走モードに突入した。
背後に怒りの日がなっている様な.....そんな感じである。
何かを口ずさみながら俺に近付いて来る。
「チャーラーラララーララー.....」
「ぶっ殺す!!!!!」
「真面目に殺す!!!!!」
「死ねぇ!!!!!コラァ!!!!!」
怒りに塗れた童貞ども。
もうどうすれば良いんだよ!
俺は混乱しながらそのまま美里を連れて逃げた。
その場を、だ。
このままこの場所に美里と俺が居たら何もかもがヤバいと思ったので、だ。
マジに困る。
すると美里は目をパチクリしながらも俺の手をゆっくりと握り返してきた。
そしてこう呟く。
「何処行くの?もしかして楽園?」
「アホ!頭を冷やすんだよ!みんなと俺達もな!」
「そうなんだ。まあ達也が行く場所なら何処でも行くけどね」
「.....お前な.....ああもう!」
それから俺達は逃げてから屋上まで逃走した。
そしてドアを閉める。
鍵も閉める。
これで暫くは.....、と思った。
仁も怒り狂っていたしな.....うん。
溶岩が冷えるまで待とう。
花崗岩になるぐらいまで、だ。
「達也」
「ゼエゼエ.....何だ」
「.....私。何かミスを犯したかな」
「.....何も。ミスってないよ。.....ただ頭を冷やした方が良いかなって思ったんだよ。俺とお前も。そしてクラスも」
「成程ね。.....良かった.....」
全く能天気なんだからよ。
と思いながら、取り敢えずベンチに座らないか、と美里を案内した。
それからベンチにそのまま俺達は腰掛ける。
全く困ったもんだ.....、と額に手を添えて考えながら少ししてモジモジしている美里の顔を見る。
「.....お前本当に性格が全て変わったけど.....本当に記憶無いのか?前のクールな時の.....」
「.....無いよ。それに私はこの性格が気に入ってるからね。そんなもの無くて良いの」
「.....そうなのか.....?」
「勉強力もそのままだし。.....全然。達也とこうして関われるだけ幸せ」
「.....まあそれならそれでも良いが.....うん」
そして苦笑しながら前の青い空を見る。
そうしていると今まで無い感じの真剣な顔を美里がした。
俺は?を浮かべて美里を見る。
美里は、ちょっと待って。私は記憶が無くなる前も後もずっと君が好きだったよ?、と目をパチクリしながら答えた。
俺は、え?、と俺も目をパチクリする。
「幼馴染が嫌いな訳が無いじゃない。恋愛対象にならない方がおかしいよ。幼馴染をね」
「いや。それは.....まあ全部が全部そうじゃないかもだけど.....俺はクールになってからお前が俺を嫌っているんじゃないかって思っていたぞ。だから.....苦しかったんだが.....」
「私は昔から。そして今もずっと君が好きだよ?.....憧れの存在をそんな簡単に嫌いになる訳ないじゃない。ヒーローだもん」
「.....マジか.....?」
「だから私は逆にクールな記憶を失って良かったって思ってる。貴方に気持ちが素直に伝えられたし全部が良かったって思ってるよ」
「嘘だろお前.....」
有り得るとは思ったが.....マジか?
途切れずにずっと俺が好きだったって本当か?
俺が憧れて好いていた奴に.....ずっと好かれていたのか?
そんな馬鹿な事があるのか?
俺は赤面しながら.....口元に手を添える。
嘘だろ.....何ていう嬉しさだよ。
と思っていると俺の手に手を添えてきた美里。
それから笑顔を浮かべた。
「私、嘘だけは本当に嫌いなんだ。だからこれは本心だよ。絶対に嘘を吐かないし.....ずっと君だけしか見てなかったよ」
「.....信じられないぐらい嬉しい」
「.....じゃあ心から信じ込ませてあげようか?.....今からキスでもしてあげるし。何ならエッチな事も全部してあげるしね」
「いや。それは流石にしなくて良いが。マジか.....」
信じられない。
俺をずっと好いていてくれたなんて.....思ってくれていたなんて。
それも憧れの存在に、だ。
俺は.....真っ赤になりながら.....美里を見る。
そして赤くなりながら段々と顔が近付いていく俺達。
「.....」
「.....」
するといきなりバァンとドアが開いた。
それから.....仁が飛び込んで来る。
ここか、オラァ!、と、だ。
そして勢い良く顔を離した俺達を見つけてからニヤッとする。
追い詰めたぞ、的な感じで、だ。
「.....逃げるとは卑怯なり.....君主よ.....」
「.....お前.....」
そしてキラーンと目を輝かせてから。
ワキワキ手を動かして俺の首を素早く締め上げてくる仁。
俺は、ギブギブ!、と言いながら暴れる。
だけど何だか爽やかな気持ちになれた。
それは.....日常が変わっていっているからだろうけど。
晴れ晴れって感じだ。
ちょっとかなり惜しかったが.....。
と思いながら、だ。
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