212話_サキュバスともうそろそろ寝ていいですか夜
ソフィアの恥ずかしさを知らぬまま、問題は続いていく。次のターゲットはミュウだった。
「シオリのことが大好きなミュウくん。いつも彼を誘惑するものの全く相手にされない時、彼女を慰めてくれるのはシオリの抱き枕である。○か×か?」
「ぴゃっ!!?」
ミュウから変な声が出た。変だったのでそう表現する他ない。
「どうしたの、ミュウ?」
「な、なんでもないわ姉様…」
冷静さを取り戻そうと大きく息を吸い込み、再び座る。
「さぁ、では札を上げてください」
皆×の札を上げる。
「皆×ですね……正解!!」
一呼吸おいて、シェイドが正解のボタンを押す。
「ミュウが抱き枕を持っているのは見たことがなかったから」
「持っていたらただの変態ですわね」
「そ、そうよ。何を言ってるのかしら。ホホ」
ミュウはひくついた笑みを浮かべながら虚勢を張る。
というのも、ミュウは辛いことがあるとシオリの抱き枕を抱き締めて眠っていたのだ。
しかも朝目覚まし用ボイス付き。
ガッツリ頼っていることを公表出来るわけもなく、シラをきるしかない。
これを問題にするということはシェイドは知っているということなのか。ミュウはチラリとシェイドの顔を見やる。涼しい顔をしてこちらを見ているシェイドを見て、「こいつは黒だ」とミュウはそう思った。
だからと言って何も抗議できるわけでもなく。後で2人になった時に問い詰めてやろうと恨みの目だけを向けるのであった。
◆◆◆◆◆
ソフィア、ミュウと標的になり、最後はレティの番である。
「さぁ、これが最後の問題です。シオリのことが好きなレティくん。彼女はシオリとラブラブになれるように日課にしていることがある、○か×か」
「!!?」
レティの顔つきが、明らかに驚きに変わる。
「ちょっ、ちょっと待ってくださらない!?あなたは何を問題にしているのかしら」
レティはシェイドに近付きカンペを取り上げようとする。
「こらこら、問題は見せられないよ」
「シェイド、、あなた何を知っていますの?」
「ん?何がだい?」
ここでレティは、何かがおかしいということに気付いたらしい。それぞれ1人ずつをピンポイントとした問題、狼狽していたミュウとソフィア。
そして、自分の番……。
ミュウとソフィアの顔を見ることは出来ない。何故なら、自分の焦っている顔がバレてしまうから。
ちなみに、やっていることはシオリの写真が入ったロケットにお祈りすることである。悪魔なのにお祈りとはお笑い草だ。
なので、答えは○である。しかし、これをシオリに知られるのはとても恥ずかしい。彼には知られたくない。
ここでこれ以上取り乱すのは、2人に不信感を与えるだろう。
ここは2人同様流すしかない。レティはあきらめてベッドに座り直す。
「続きをどうぞ」
レティは一呼吸置くと、シェイドに続きを促した。
「さぁ、気を取り直して○×札をあげてください」
レティはスッと×の札を上げる。他の2人も×の札。
「全員×ですね……正解!!」
シェイドが正解のボタンを押しピンポンと軽快な音が響く。
「(こういうことでしたのね……)」
レティはシェイドが出していた問題の裏に気付き、自分が一番不利だったことに気が付いていた。
しかし、今ここで自分が我先にとそのことを指摘することは出来ない。何故なら、それは自分が嘘の札を上げたことを宣言してしまうことになるからだ。
「(謀りましたわね…)」
それは2人も思っていたらしい。今なら、彼女達の表情がひとまず問題が終わったことに対する安堵ということがわかる。
「なんと、決着がつきませんでしたね。それではさらに問題を───」
「ちょっと待った、ですわ」
レティがストップをかける。これ以上こちらの暴露が続くのは精神的にきつい。
「も、もうよろしいんじゃないかしら?旦那様も眠いようですし。ここは全員仲良く寝るということで」
レティは2人の方を見やる。無言の停戦申し入れである。これ以上傷口は広げられない、という判断である。
「え、ええ、私は悪くないと思うけど」
「私もいいわ。そろそろ眠たくなってきたし」
交渉成立。
2人も同じことを考えていたらしい。
「いいのかい?まだまだ沢山問題はあるというのに」
「いえ、もう結構ですわ…」
寂しそうにするシェイドにもういらないと手でジェスチャーする。
この守護天使ならぬ守護悪魔にこれ以上情報を漏洩されてはたまったものではない。後で口を封じておかねば。
「それじゃあ寝るとしようか。シオリも寝ちゃったみたいだしね」
「あっ」
気付けば、シオリは毛布にくるまって寝息を立てていた。
「可愛い…」
シオリの横に寝ようとするミュウの尻をレティが蹴飛ばす。
「いたっ!?なにすんのよ!!」
「どうしてあなたが旦那様の隣に寝られるんですの、そこは私の場所です」
「あんたは外で寝てなさいよ!!」
喧嘩を始めた2人をよそに、ソフィアがシェイドに近付いて耳打ちする。
「(シェイド、どうしてあのことを知っていたの?)」
「(それはね、見てればわかるのさ)」
シェイドは、顔を真っ赤にするソフィアにそう言って微笑んだのであった。
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