199話_欲望は誰のせい?
ある日、ソフィアは悩んでいた。
深く、深くため息をつく。
その悩みの種というのはシオリのことなのだが、それは日が増すごとに大きくなっていた。
大きな変化として現れたのは、つい最近、朝目が覚めるとシオリの布団の中に潜り込んでいた時───。
「ソ、ソフィア…?」
「ふやぁ…シオリ…?」
眠たい目をこすりながら、声がした方を向く。驚いているシオリの顔。たしか、私は自分の部屋にいたはず…どうしてここにシオリが……。
「…シオリ!?どうしてここにシオリが!!」
異変に気付き、一気に飛び上がる。
「どうしてって、ここ、僕の部屋だから…」
そう言われて、周りを見渡す。確かに、シオリの部屋だ。自分は寝ているうちにシオリの布団に潜り込んでしまったらしい…。
「あぅ……ごめんなさい…」
顔を見られないように、シオリの胸に突っ伏す形になる。
「大丈夫だよ、にしても、珍しいね。ソフィアがこっちに来るなんて」
「そんなつもりはなかったんですが…」
顔を真っ赤にしながら弁明する。百歩譲って、その日は良かったのだが……。
また、別の日───。
「やぁ、ソフィア…おはよう…」
「ふやぁ……」
次の日も、シオリの布団に潜り込んでいた。
「ひやぁぁあ!!?」
◆◆◆◆◆
「というわけで──」
顔を真っ赤にして俯くソフィア。
「余程シオリのことが好きなのだな」
その話を聞いていたシェイドは、テーブルに置いてあった紅茶を手に取り口を付ける。
「……うぅ、言わないで…」
顔から火が出んばかりの恥ずかしさ。ここ最近では、眠っている間にシオリの部屋に潜り込んでは一緒に寝るということを無意識に繰り返していた。
これがまた、サキュバスの発作とは一切関係ないのがソフィアの悩みの種だった。ただ単純にシオリを求めているだけ、ということになってしまうからだ。言い訳のしようがない。
何回かは、シオリに自分を触らせるよう手を添えていたり、といった心当たりもあるため、そのことが一層彼女の精神に影響を及ぼしていた。
「いっそのこと、一度吐き出してしまった方がいいんじゃないか?」
「そうは言っても……」
シェイドの言うことも一理あった。シオリのそばにいたい欲求は、日に日に大きくなっている。このまま放置していたら、どういった行動に出るのか、自分でも想像がつかない。
それに、シオリとはあくまで一緒にいたいのであって、それ以上はまぁ、場合に応じてというか時に応じてというか。しかし、一般男子がそれをそのまま受け入れられる、というのは生理的に難しいというのも、ソフィアは薄々感づいていた。
端的に言うと、健康的な男子が可愛い女の子を目の前にして我慢できることは、まぁないだろうと。
シオリが求めてくれば、別に拒否する理由も……いやいや、そういうことは考えないようにしないと。
「シオリなら、一緒にいたいと言ったら、いてくれるだろう」
「でも、旦那様は苦しむことになりますわよ」
いつの間にか、リビングの扉にもたれ掛かっていたレティがソフィアの方に近付いてきた。
「旦那様だって男。いつまでもくっついたり離れたりの関係で満足できるはずがありませんわ」
レティはズイッと顔をソフィアに近付ける。
「ソフィア、あなたは旦那様をどれだけ気持ち良くさせたのかしら」
「気持ち良くって……」
そういうことをした記憶はない。いつもシオリに発作をなんとかしてもらっていた記憶しかないからだ。
「私だったら、口だったり脚だったり、胸だったり。旦那様を気持ち良くして差し上げる方法はいくつでも持ち合わせておりましてよ」
フフンと勝ち誇るレティは、ソフィアを見下ろす。
「ソフィア、気にするな。レティはまだそれをシオリに行使していない」
「何故シェイドが言い切れるんですの!!」
「レティがシオリに相手にされているところを見たことがないからな」
「くっ…いいでしょう。だったら、どっちが旦那様を気持ち良くさせられるか勝負しましょう!!」
バン!とテーブルを叩くレティ。
「いいだろう、受けて立とう」
「えっ、勝負って、シェイド」
何故かレティと勝負をすることになってしまったソフィア。かくして、シオリの隣を賭けた勝負の幕が開けるのであった。
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