171話_狙いを定めた獲物

囮作戦から数日後、僕達は自宅に戻り一度休養をとっていた。


マミーと呼称された犯人の手がかりもあれ以来追うことが出来ない状態だったが、幸いにしてまだ被害者は増えていなかった。


レティは学校、ミュウは喫茶店。今日はソフィアと僕とシェイド、チャミュの4人である。


「次はどうやって探そうか」


「マミーの動きがない以上、探すといってもなかなか難しいものだ」


「まぁ、シェイドの言うとおりだよな。あの少年の言っていた左腕が変な化け物というのも、他に見た人はいないし」


「被害者が干からびた状態で発見された以外に情報はないのかしら?」


「私が聞いた情報だと被害者3人に接点はなく皆若い一般的な天使だということだ。特に恨みを買うような天使というわけでもなかったらしい」


チャミュはミュウに向かって答える。


「じゃあ無差別ってことなのかしら」


「恐らくそうなのだろう、としか今は言えない」


「そもそもの話なんだけどさ」


僕はこの事件で思っていたことを口にした。


「なんで被害者は皆干からびていたんだろう?」


そこが疑問だったのだ。


殺害方法に規則性があり、ターゲットも外的要因がありそうなこの事件。犯人の狙いは一体なんなのか。


「ふむ、シオリの疑問は確かに気になるな。調べてみることにするか」


「調べるって、どうやって?」


「詳しい者がいるだろう」


そう言ってシェイドはニッと笑った。



◆◆◆◆◆



「エデモア~そういうのは専門じゃないんだけど~」


僕達が訪れたのはエデモアの骨董屋だった。エデモアに何枚か写真を見せるチャミュ。


それをエデモアは上から見たり、下から見たりする。


「どうだ、何かわかりそうか?」


「これだけの情報だと~断定は~出来ないよ~。ただ~可能性があるとしたら~血液吸収~じゃないかな~」


「吸血鬼ってことか?」


「そうだね~。でもそれだと吸血痕がないといけないけどね~、あとは生命吸引かな~」


「それはどんな方法なんだ?」


「生命エネルギーを抜き取っちゃう方法だよ~。若返りたい時に使う方法の1つだよ~」


「若返りか……。他には何かわかりそうか?」


「あとは実物を見てみないとなんともだね~」


「そうか、ありがとう。この礼はまたいつか」


「君が実験に付き合ってくれたらエデモアは嬉しいな~」


「か、考えとくよ……」


返事をごまかしてエデモアの骨董屋を出る。


「吸血鬼か、若返りたい誰か、が犯人ということですかね?」


「そうみたいだね。その線で、捜査を再開してみようか」


4人は再び霞郷近くの町へと足を運ぶ。

そこに、チャミュに天使警察のダイゾという男から連絡が入った。


「シオリ、どうやら4人目の被害者が出たらしい……」


「なんだって!?」


ダイゾに教えてもらった場所に急いで向かう4人。


「おお!チャミュさん!こちらです!」


チャミュに気付いたダイゾが、チャミュに手を振る。


「ダイゾさん、ありがとうございます。こちらが現場ですか?」


「はい、ただ今現場検証をしているところです。チャミュさんであれば、確認もよいでしょう。警察官には私の方から話をしておきます」


「ありがとうございます。シオリくん、確認してみようか」


ダイゾに促される形で僕たちは現場に立ち入った。



◆◆◆◆◆



「シェイド、この人って……」


「あぁ、あの時の青年のようだな」


シェイドが囮作戦をした時に現れた酔っ払いの青年だった。服装もあの時から変わっていないようだ。体の水分を失ったように完全に干からびている。


「ダイゾさん、被害者はいつからここに?」


「詳しい時間帯まではわからんのですが、おそらく昨日の夜中頃ではないかと。お二人の知り合いですか?」


「いえ、知り合いというほどではないです。たまたま数日前にこの青年を見かけたことがあるというだけで」


「なるほど、今回も犯人の姿を見た者は誰もいなくてですね」


「あの天使警察の人なら何か知ってるんじゃないかな?」


酔っ払いの青年を介抱した警察官がいたはずだ。


「クルモロさんってこちらには来てないんですか?」


「クルモロですか、彼は別な現場の方に行ってましてね。そう言えば今回の情報も彼からでしたな」


「今回も?」


「ええ、彼は優秀な警察官でしてね。マミーに関わる事件は彼が全て第一発見者なんですよ。おかげで周りからは気味悪がられてますがね。彼の行くところに死人が出るって」


「そうなんですか…」


ダイゾの話を聞きながら、俺は頭の中で色々な考えを巡らせていた。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る