146話_リアとズィアロ

勢いよく振り下ろされたリアの刀はズィアロの脳天めがけて振り下ろされる。


ガギィィィィン!!!


ズィアロも長物を取り出し、その刀を弾き返す。


二撃、三撃と剣を交えるリアとズィアロ。

シオリがズィアロの攻撃を受けて動かなくなったことは、リアにも影響を及ぼしていた。


愛しい者を失う感情、それはリアが避けたい心の慟哭どうこくのひとつであった。


「私は大事な人を傷つける奴が許せない。絶対に、許せない!」


リアは刀を宙で回転させた後、その刀でズィアロに突きを繰り出す。


ギィン!


「どうして私達がいつも辛い目に遭い続けなければいけないの?せっかく得た平穏を邪魔しないで!!」


ギィン!ギィン!


怒りと共に振り下ろされる刀、ズィアロが打ち負ける程にリアの威力は増す一方だった。


「あんなに怒る姉様は、初めて見た…」


「あれはもう姉様のもう一人の人格よ」


「もう一人?」


「そう。あなたの世界では、姉様は姉様でしかなかったのね。彼女は、姉様の中でずっと眠っていたの。大事な人を助けるために自分を犠牲にしてね」


ミュウはリアを寂しそうに眺める。


「だから…誰よりも、大事な人を大事にしたいと思っているのよ」


リアの刀は間髪入れずにズィアロに襲いかかる。しかし、ズィアロもその太刀筋を見切り、反撃の糸口を見つけていく。


「くっ…!!」


「威勢は良かったが、徐々に力がなくなってきているぞ。私にはわかる、お前の体は仮初めのものだな」


「元々私のものだから!」


剣を弾いた後距離をとる。


「ふむ、奴の姿になることは出来ないとなると…お前自身に絶望を味わってもらう他あるまい」


ズィアロは長物をしまい、大きな鎌を取り出す。


「姉様、奴は何かを企んでいる。気をつけて」


ミュウラゼルドがリアの前に立つ。


「随分大きくなったのね」


雰囲気の違う姉に戸惑いの表情を見せるミュウラゼルド。


「どうしたの?」


「いや、私の知らない姉様もいるんだと…」


リアはニッと笑った。


「姉は秘密が多いのよ」



◆◆◆◆◆



一方、シオリ達の方では────。


「この棺が、奴の弱点?」


「その可能性はある。私達と同じく目覚める可能性も」


「その可能性は捨てられませんね。人に対して執着のなさそうな敵にしては、ここは随分と仰々しい……そういえば、奴は自分のことをズィアロと名乗っていました」


「ズィアロ……魔界では『無』を意味することばだな」


「えぇ、その通りです」


「チャミュ、棺の蓋を外してみよう」


「わかった」


「大丈夫なのか?」


不安ながらも、棺の蓋を開けて中を覗く。

死者にむち打つ形で気乗りはしないがこれも必要なことだ。


「これは……完全に死んでいるようだな」


脈がないことを確認するチャミュ。


「死んでいるのか」


シオリも、眠る男性に軽く触れる。

すると、脳内に膨大な情報が流れ込んできた。


「これは……!!?」

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