141話_ラヴェラポーム《愛しき者で塗られた林檎》
レティは三節棍を構えると、白いローブの男に向かって距離を詰めた。
「ハッ!!」
分離した棍がローブに命中し、ローブの男の体勢がねじれる。
「上手い!!」
クリーンヒットした棍を戻し、続けざまに2撃目を放つ。攻撃を与えた後はカウンターが届かない距離にすぐさま下がる。
ガガッ!!ガガッ!!
ローブの男は攻撃に対応できず防戦一方だ。レティの身のこなしは見ていて惚れ惚れするくらい鮮やかで気持ちの良いものだった。
「別に大したことないんじゃないの?」
レティが圧倒する光景を見て、ミュウラゼルドが恐れるほど脅威には思えないミュウ。
「奴の恐さはそこではない」
「一体なんだって言うの?」
「奴は全てを取り込む」
「取り込むって、あなたさっきも言ったわよね」
その時、ミュウは自分が早合点をしていた事に気付く。
【何を】取り込むと思っていたのか。ミュウラゼルドは言っていたのだ。あれは奴が奪った姿のひとつに過ぎない、ということを。
「青女!!敵の動きに注意しなさい!!」
「言われなくても!!」
レティが再び白いローブの男に攻撃しようとした時、敵の様子が明らかに変化した。
三節棍の軌道を完全に読み切り、レティを掴もうと手を伸ばしてくる。
「なっ!?」
すんでのところで、その腕をかわし相手から離れる。
白いローブの男の体が少しずつ変異し始めていく。顔の輪郭が変化し、背丈も今より大きくなる。
「これは……」
白いローブの男は、筋骨隆々な大柄の男に変化すると、レティにあっという間に詰め寄った。
「そんなっ!?」
三節棍で敵の拳を防ぐがパワーの違いに吹き飛ばされてしまう。
「きゃぁああっ!!」
「レティ!!」
「なんなの、あいつは!?」
「奴が奪った姿のひとつだ…だが、何故だ。私が見たことのない姿だ」
シオリは倒れるレティを抱え、ゆっくり歩いてくる敵から逃げる。
「一旦逃げるぞ!!」
「逃げるっ、てどこに逃げるのよ!?」
「わからないけど、このままじゃダメだ!!」
「全く、仕方ないわね!!」
ミュウは黒薔薇と白薔薇の剣から、無数の薔薇の花びらを繰り出し目くらましをした。
敵を
幸いなことにレティの怪我は大したことはないようだ。
「さっきのは一体どういうことなんだ」
「あれも奴が奪った姿のひとつだ。奴は相手を取り込み、その能力を自分のものにすることが出来る」
「それならそういう風にちゃんと説明しなさいよね。まさか相手を取り込めるなんて思わないじゃないの」
「そう言ったつもりだったが」
「伝わってないわよ!!」
「まぁまぁ、で、敵に近付かない方がいいと言った理由はそれか。他に気をつけることは?」
「姉様とシオリが掴まらないこと。奴の最大の目的はそこにある」
「また、なんのために?」
「ラヴェラポーム《愛しき者で塗られた林檎》でしょう?」
レティが少し体を起こす。
「レティ、まだ横になっていないと」
「いえ、もう大丈夫です。この話はきちんとしておかないといけません」
「ラヴェラポームを知っているのか?」
「えぇ、あれは魔界の道具です。それを知っていること自体不思議じゃない。けど、使うとなったら話は別です」
「一体なんなんだ?そのらべなんとかって?」
「端的に説明すると、生命を具現化させるアイテムです」
「生命を具現化――わかるようでよくわからないな。死者を蘇らせるとかではないのか?」
生命を具現化、どういうことなんだ。
「別に死者でなくてもいい。アイテムを使う者がイメージした者を生み出せるんだ
。シオリ、愛する人の姿形を思い浮かべて見て」
ミュウラゼルドに言われて、愛する人の言葉に戸惑う。
「今、イメージしたその姿、中身が現実に具現化する。それは、実際の本人と同じようで違うもの、願ったものの理想になる」
「そんなことが可能なのか……」
「シオリは私のことを想像したのよね」
「いえ、私に決まってます」
林檎の話よりも、シオリが誰を思い浮かべたかで揉め始めるミュウとレティ。
「とにかく、奴はそれを求めていると。それで、僕とソフィアが必要なのか?」
「別に姉様とシオリに限った話ではない。だが、ラヴェラポームを使う条件は決まっている」
「条件って?」
「愛した者を殺し、その血で林檎を塗らすことだ」
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