第60話


 夜ご飯を食べ終えたかなで達が和やかに過ごしていると、いきなりかなでが大きな声でみんなを呼び集める。




「よし、みんなで一緒にお風呂に入りましょう!」


「どうしたのだ? 急に?」


「そういえば一緒に入ったことないって思ったから。こういうのは思い立ったら即行動かなって。昨日一緒に入ろうと思ってたけどもみじちゃん達入ってから来てたから」


「それはしょうがないのだ。でも、今日からは一日一緒にいるから元気出してほしいのだ」


「そうね! というわけで一緒にお風呂入りましょうね!」


「う、うむ? まぁわしはいいのだ。もみじ達はどうするのだ?」


「私もいいよー! 青藍ちゃんも一緒に入ろう?」


「え? ここのお風呂ってそんなに大きいの?」


「お風呂にだけは力入れたからね。大人が二人入っても余裕よ!」


「そうなのだ? それならみんなで一緒に入るのだ」


「お兄ちゃんも入る?」


「あはは、僕まで入っちゃうとさすがに狭いからね。僕はやめとくよ」


「そうなのだ? それならわしらだけで入ってくるのだ」


「ふふふ、シャンプーとかいろいろ用意したからね。あれ、そういえば髪質とかシャンプーで変わったりするのかしら」


「どうだろう。変わったりしないような気もするけど。でもいい匂いにはなるからそれでいいんじゃないかな?」


「たしかに。いい匂いになるからいいかな。こんなことならみどりちゃんに聞いておけばよかったかしら」


「明日来るんだしその時に聞けばいいんじゃないかな?」


「それもそうね。よし、それじゃあ一緒に入りましょうか」


「はーい」




 楽しそうにお風呂場に向かうかなで達を見送った静人は残った食器を見て洗い物へと向かう。




「さてと、僕は洗い物でもしようかな」




 洗い物を片付けているとお風呂場から騒がしい声が聞こえ始める。




「元気だなー。あれ、そういえば着替えって用意したのかな。洗い物終わったら確認しにいかないとね。意外に洗い物多いな……」




 普段そこまで洗い物が多くなることがないからか、いつもより量の多い食器類に少し戸惑いつつも少しずつ終わらせていく。




「よし、こんなものかな。さてと、かなでー?」


「こら逃げないの、うん? どうしたのしず君?」


「じっとしてるの苦手なのだ……」


「手ぶらで入ったように見えたから、着替えとかは用意してるのかなって思って」


「あ、忘れてたわ。確か昨日みどりちゃんから受け取ったのよね。しず君。昨日みどりちゃんから預かったカバン持ってきてー」


「あはは、分かった。脱衣所に置いとくからね?」


「ありがとー。よろしくね!」


「はいはい。えっと、これのことかな」




 やや大きめのカバンを持った静人は脱衣所に戻るともみじ色の髪が見えた。




「あ、お兄さん!」


「こらこら、そんな恰好でうろついてたら風邪ひいちゃうよ? 何かあったのかいもみじちゃん?」


「お兄さんが着替え持ってくるって聞いたから楽しみで我慢できなかったの!」


「あはは、それならしょうがないのかな? 風邪をひくのかも怪しいし……。それじゃあここに置いていくね。あ、でもちゃんと体拭かないと着替えが台無しになっちゃうよ?」


「あ、ちゃんと体拭くね!」


「うん。それじゃあかなでに着替え持ってきたこと伝えててくれるかい?」


「うん! いいよ!」


「それじゃあよろしくね」


「はーい!」




 体が冷えるのを心配した静人は少しだけいつもより早口で伝えるとその場を後にする。少し心配なのかその場から離れ後もそわそわしていた。




「風邪をひいたりはしないと思うけど大丈夫かな。よし、温かい飲み物でも用意しとこう。ホットミルク、あ、ココアのほうがいいかな。えっと、ココアパウダーあったかな」




 体が冷えていること前提で飲み物を用意することにした静人は小さめの鍋を用意してココアを作り始める。




「えっと、たしか最初にココアパウダーを弱火で煎って、水を少しずつ加えていく。ココアパウダーの色が濃くなって艶が出てきたら砂糖を加える。と、牛乳を少しずつ加えていって沸騰させないように気を付ける、と。いい感じかな? あとは茶漉しでさらに口当たりを柔らかくして完成。っとあはは。上がってたんだね」


「いい匂い!」


「甘そうな匂いなのだ。飲んでいいのだ?」


「もちろん、そのつもりで作ったからね。みんなで一緒に飲もうか」


「熱い?」


「あはは、今作ったばかりだからね。冷ましつつ飲もうね」


「うん。気を付けて飲む」


「しず君。さっきはありがとね。あ、ココアは私の分もある?」


「仲間外れになんかしないよ。もちろんあるさ。あ、ちゃんと皆パジャマ用意してたんだね」


「今気づいたのだ? ふふん。わし好みなのだ」


「もっとフリルをいっぱいつけたのを用意しようと思ってたんだけどね。みどりちゃんに止められたのよ。でも、これはこれで可愛いわよね!」


「あはは、うん。かわいいと思うよ。っと、これで全員分かな?」


「それじゃあ乾杯なのだ」


「乾杯!」




 皆で一緒にココアを飲んでほっと一息をついた静人達は美味しいと言いながら話に花を咲かせた。しばらくして体が温かくなったからか眠くなった子供たちを寝室へと運び、楽しくも騒がしい一日が終わった。


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