第50話
唐揚げを食べてしばらくして帰るときにかなでがみどりを呼び止めて三人で同じ場所に出る。みどりはかなでが呼び止めたことが何なのか分からないのか首を傾げてかなでの言葉を待つ。
「というわけでもみじちゃんたちを家に呼びたいから手伝って」
「いや、ええけど。何を手伝えばええの?」
「みどりさんには晴れ着をもう頼んでるからね。他に必要な物ってあったかい?」
「う、たしかに晴れ着頼んだし……、他に何かって言われると。うーん」
「というか集まるのはいつになるん? 晴れ着が必要になるって言うんやったら正月に集まるん?」
「今のところ三が日かな。あ、その時に保護者としてみどりさんに来てもらうだけでもありがたいですね。子供だけで集まるよりかは大人の姿があったほうがご近所さん的にも大丈夫だと思いますし」
「あー、確かにそのこと考えてなかったわ。とはいえ動物の姿で来たらええんやない?」
「いや、さすがにずっとそのままはかわいそうじゃない? 敷地内は人の姿でいられないと窮屈じゃないかしら?」
「それはたしかに窮屈やろな。まぁ、変な人についていかんように敷地内から出ていかんようにせんといかんな」
「さすがにそこまで子供じゃないと思うよ?」
「いや、まぁ、嘘をつく人とかは見抜けるけど嘘をつかずにつれていこうと思えばいけるからなぁ。自分からどういう嘘をついている可能性があるかを常に考えとかんとあまり意味ないんよ。それに茜はともかくうちらは別に力持ちというわけではないからな。力づくで連れていこうと思えばいけるんよ?」
「そういうこと言われるとあれね。一時も目を離せなくなるわね」
「とはいえさすがに大人三人だけやとなぁ。あ、確か二人には桔梗たちのこと知っとる大人の知り合いおったよね?」
みどりは他の二人のことを思い出したのかその二人を呼ぶように提案する。そのことでかなでも思い出したのかそれは名案だと身を乗り出す。
「あ、グラさんたち! でも、正月に会ってくれるかしら?」
「あー、まぁ、聞いてみるだけ聞いてみればええやろ。駄目やったらまたそんときや」
「それもそっか。あ、しず君二人呼んでもいい?」
「もちろんいいよ。みどりさんはいいのかい?」
「うちもええよ。というかうちから提案したんやから拒否なんてせんよ」
「よし、それじゃあ連絡入れとくね! 正月家に遊びに来れませんか? っと。よし!」
「どうせならみんなで晴れ着着ること提案したらどない?」
「たしかに! みんなで着れたら楽しいわよね!」
「無理強いはしないようにね? まぁ、あの二人なら嬉々としてやってくれそうだけどね」
「はーい。あ、しず君その日は料理たくさん作ろうね!」
「その日は腕によりをかけて作ろうか」
「うちもその日は手伝おか?」
「みどりちゃんの得意料理を所望します!」
「いや、得意料理って言うのは無いんやけど。まぁ、作ったものを持ち寄るくらいはしよか」
「楽しみにしてるからね! 他に正月っぽいことって何があるかな?」
「うちもそんな気にしたことないからなぁ。正月は挨拶回りが忙しいくらいしか覚えとらんわ」
「あー、確かに忙しそう。まぁ、元々正月って親戚同士で集まるってイメージしかないし。あ、年越しそばとかどうしよう」
「大晦日は一緒にそばを食べればええんやない? どうせ夕方はいつものようにみんなで食べるんやろ?」
「それもそうだね! だったら年越しに食べるそばは諦めようかな。おせちとかどうする?」
「おせちとかあったね。あれもいろいろとたくさん詰めれるからいいかもね」
「うち年越しそばには天ぷら欲しいんやけどええ?」
「天ぷらはどんなのがいいの? エビとか? それとも野菜?」
「あー、海老天やろか」
「それじゃあ海老天作りましょうか。えびの天ぷらは作るの得意ですからまっすぐなえびの天ぷら作りますね」
「そうなん? それなら楽しみにしとくわ。他に何かしたいことは無いん?」
みどりの質問に他に何かあったかと腕を組むかなで。少し悩んだ後にあることを思いつく。
「したいことかー。あ、お菓子作り! あっちだとしにくいけどこっちの家ならオーブンとかあっていろいろできるから一緒にしてみたい!」
「あー、確かにここでしか出来ないかもね。あっちだと機材的に難しいと思うし」
「確かになぁ。ガスは提供できるけど電気はさすがに無理やさかい。ピザ窯でも作る?」
「さすがにピザは作ったことないかも。しず君つくったことある?」
「さすがにピザは無いかな?」
「お、ピザやったら茜が確か作れたで?」
「茜ちゃんが? それならもしもピザ窯を作れたら頼んでみようかしら」
「おお、おお、頼んだらええ。喜ぶで」
「もみじちゃん達とは一緒にお菓子作りして茜ちゃんとはピザを作って、みどりちゃんとは料理を作って。楽しみ!」
「あれ、料理は持ち込むみたいな話やなかった?」
「一緒に作ろうね!」
「……まぁええよ」
さっきまでの提案と少し違うことに疑問を覚えたみどりだったがかなでの顔を見て諦めた様子で頷く。そんな二人を見つつ静人が気になっていたことを質問する。
「そういえばもみじちゃん達は何日間滞在させる予定なんだい?」
「あー、長くても一週間やろか。短くて三日。とはいえいつもとは逆で夕方に一回帰るってすればしばらくは滞在できるんやない?」
「やっぱり長く空けることはしないほうがいいんですか?」
「せやな。もしかしたら気にしなくてもええのかもしれんけど要人はした方がええやろうし。もしかしたら向こう側に繋がりがないと帰れんくなるかもしれん」
「それは確かに用心したほうがいいね」
「帰れなくなったら大変だもんね。一応夕方には一回帰るようにして三日間だけにしてみましょうか」
「せやな。それでも期間延長したいって話になったら七日間ぐらいまで延ばせばええちゃうん?」
「そうだね。それじゃあそういうことで!」
「みどりさんはこの日は来れないとかあります?」
「一日、二日はもしかしたら来れんかもしれん。まぁ三日目には来れるようにしとくわ」
「それじゃあ三日目に一緒に料理作ろうね!」
「ええよ。あ、大晦日の海老天そばは食べるさかい用意しといてな」
「分かりました。さすがにそば作りとかはしないので市販品ですけど」
「ええよ。あーいうのはみんなで食べるからのものやし」
「それじゃあとり合えず話し合いはこんなものですかね」
「そうだね。さすがに凪さんとグラさんからは返事着てないからその時はまた伝えるね!」
「おんおん。そん時はよろしゅう」
「明日には返事来ると思うからその時に教えるね!」
「おんおん、明日やな」
「それじゃあまた明日。食べに来てください」
「うちの楽しみやさかい。もちろん来るで」
「また明日ね!」
もろもろの話し合いを終わらせた三人は解散することに決めて、みどりのことを見送ることにした。みどりはいつの間にか読んでいたのか迎えの車に乗り静人の家から立ち去る。
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