第39話 最強vs.悪魔

第四試合、三期生同士の激闘の末、


『そこまで!A3クラス全滅により、S3クラスの勝利とする!!』


沸き起こる大歓声。


これで決勝はS3vs.E1となった。





「ライン、レインお前らに話がある。」


決勝を目前に控え、ライトは2人を呼び出す。


「正直言っちゃいけないことだと分かってる。先に謝っとく。すまない。」


頭を下げるライト。


「その上でお願いしたい。決勝戦、俺1人で出させてくれ。」


「「……」」


無言の2人。


「散々利用して来た身でバカなことをって分かっている。だが、頼む。」


沈黙が3人の間に流れる。


「…お前はズルいな、本当に。」


ラインが声を上げる。


「あぁ。兄貴の言う通りだぜ。」


レインも声を上げる。


2人の言葉を聞いて苦しい表情をするライト。


「「友達にそこまで言われちゃ断れないじゃん」」


ハッと顔を上げるライト。

そこには満面の笑みを浮かべた2人がいた。


「事情が事情だしな。ぶっ飛ばすんだろ?あの腹黒生徒会長!」

「ま、元より俺たちお前に最悪なことしまくったしな。拒否る理由もない!」


ライトの肩を叩く2人。


「「その代わり、絶対勝てよ?」」


2人の励ましが、思いが、ライトの目尻を熱くさせる。


「おいおい?泣くのは勝ってからにしろ。」

「そうだぞ?エレン様もお前の勝ちを望んでいるぞ?」


「…あぁ!ありがとう!本当にありがとう!」


「おら!なら行けリーダー!!」

「負けるなよ!ライト!!」


ドンッと2人がライトの背中を叩く。

それに後押しされるように、ライトは会場へと入り、フィールドに立つ。目の前にはS3の3人。それに対し、たった1人で来たため、会場にはざわめきが広がる。


「…ライト=ファーベル。他の2人は?」


審判の教授に声ををかけられる。


「棄権します。決勝戦は俺1人ででます。」


その言葉に驚愕の雰囲気を醸し出す会場。


「え?どういうこと!?」

「あー、どうせ仲間は怖気付いて逃げたんだろ。」

「うわ、かわいそー。」

「けど、まぁ仕方ないだろ。一年対三年の決勝戦なんか期待してなかったし。別にいいわ。」


「…では、E1クラスはライト=ファーベルのみの参加とします。」


教授が淡々と告げる。彼も事情を理解しているのだろう。その心遣いが、ライトにはありがたかった。


会場が怪訝な雰囲気に包まれる中、


『それでは、第五試合、決勝戦、S3対E1、始め!』


アナウンスが鳴り響く。と、同時に—


「グフゥッ!!」

「ガハァッ!!」


神速の初動でS3の2人を吹き飛ばすライト。

その勢いは凄まじく、2人は遥か先の観客席へと吹き飛ばされて行った。


「なっ!!」


会場全体が唖然とする。


ライトは驚愕の表情のフラインの腹を蹴飛ばす。


「グハッ!!」


苦痛で顔を歪ませ、跪くフライン。


そんなはフラインを前に、木刀を肩にかけたライトが告げる。


「…立てよ。」


地獄の底から絞り出すようなドス黒い声がフラインを襲う。


ライトの脳裏に映るのは—


傲慢な、上から目線のドヤ顔。

頬を赤く染め、恥ずかしそうに、元気いっぱい笑う笑顔。

その笑顔のカケラもなく、恐怖の表情で自身の腕の中で涙を流す少女。

強く抱きしめたら壊れてしまいそうなほど、

繊細で儚い、どこにでもいる『普通』の女の子。


怒りの声でライトが告げる。


「…努力、才能、自尊心、想い…、

お前の今までの全てを、俺が———





 ———捻り潰してやる。」






ライトの表情はどこまでも暗かった。







「…口も頭も悪いって言いませんでしたっけ!?」


そう言うとフラインは手に雷の剣を作り出す。


フラインの職業 魔剣士。

魔術により剣を作り出す。通常の剣より付加魔力や、効果は数段上だ。

要するに剣士の完全上位互換である。


そして


「はぁぁぁぁぁぁっ!!」


叫びながらライトに斬りかかる。—が、


「馬鹿な奴だ…。」

観客席でフォルトが呟く。


「剣で奴に挑むとは……、即ち—」


ズバンッ!と鈍い音が鳴り響く

と共に、消滅するフラインの魔剣。


「なっ!?!?」


目を丸くするフラインの顔面に膝蹴りを喰らわせる。


「グフゥ…」


フラインが苦痛で顔を歪ませ、鼻血が滴り落ちるが、すぐに立て直し、


「はぁぁぁぁ!!」


もう一度斬りかかるも、今度はライトの木刀を腹に受け、吹き飛ばされる。


「—ワシ(剣聖)を相手にするのと同義だな。」


腕を組みながらフォルトは淡々と呟いた。



一方的な試合が形成される。

『それ』は誰もが予想をしてた。

逆の想定で…


会場全体が異様な雰囲気に包まれている。


競技大会決勝戦。

学園トップの3人と、予選で存在感を示したとはいえ、学園最低編。しかも、1人対3人。

この場にいる殆どが、S3クラスの勝利を確信していた。しかし、蓋を開けてみると…


「ガハッ!!」


満身創痍で倒れ伏すS3キングのフライン。

他の2人は開始と同時に吹き飛ばされ、戦闘不能状態。


フィールドに立つのは、息一つ切れていない、ライト=ファーベル。


「あ、アイツあんなに強かったのかよ!?」

「う、う、嘘でしょ!?フライン様が手も足も出ないなんて…」

「予選の時はまぐれかと思ったけど…これは…っ!!!」


騒ぎ立つ生徒、観客たち。


「グハッ!!」


ライトの回し蹴りがフラインの横顔にヒットする。血を吐き、歯が飛び散る。


「はぁ…はぁ…そ、そんな…馬鹿なっ…!」


平伏すフライン。

しかしライトは止まらない。


「…立てよゴミクズ。」


全てを否定するかの如く、フラインを追い詰めるライト。


圧倒的な格の違い。


フラインとて、弱くはない。

今まで絶えず己の力を磨き続けてきた。

実力は学園においては2、3番だろう。

しかし、トップとの差がありすぎた。

ライトの前では皆、天才も凡夫と等しい。


努力をねじ伏せる、圧倒的な才能と実力。


彼のフィールドでの存在感を

一言で言うならば…


『魔王』


このまま、試合はライトの圧勝に終わる—





—かと思われた。


急に、跪くフラインが一瞬、ほくそ笑む。

そして一転。怒りの表情に変え、叫んだ。


「僕はッ!!君を許さないッ!!!!」

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