作品

バブみ道日丿宮組

お題:輝く博物館 制限時間:15分

作品

 夢の一歩はいつだって重要だ。気が付かないだけで多くの人が毎日一歩を踏み出してる。

 私といえば、その一歩に身震いをしてた。

「緊張してます?」

「し、してない」

 声が詰まった。

「あなたの作品が博物館に展示されるのだからアタリマエのことだと思いますよ」

「そ、そうかな?」

 一人の少女の言葉に、うんうんと頷くクラスメイトたち。

「わたしたちの作品は取り扱わないくせにどうしてあなたの作品が入ってるのか大変興味があるわ」

 頷かなかった少女が文句を口にする。

「べ、べつに特別なことはしてないからね!?」

 身体を売るとか特にやってない。

 多少先生と話すことはあっても、それは生徒と先生という間柄の相談ごと。

「否定するたびに怪しくなるからもういいけどさ」

「さぁ行きましょう」

 リーダー格の少女が先導する。

「ここのエリア全部作ったって言うならおかしくないかもしれないわね」

 頷かなかった少女が指差す場所にあるのは聖域。

 人物画、風景画、オブジェクトなど、さまざまな作品が飾られてるが、作品名は1つ。普通の人は目にしないが、その道にいる人は気づくだろう。

 この聖域にあるものを1つとして作品が存在してるということに。

「わたしたちと同じ授業、部活をしてたのに、どうしてここまで多くの作品ができるのでしょうか」

「そ、それは、い、家で作ってたから」

 作品の大半はそうだ。

 全体の構図は一番最初に描いた。

「この絵が元ですね?」

「そ、そうです」

 クラスメイトたちがその絵を見るために列を作る。

「人気者は辛いですね」

「そ、そんなことないです」

 私より彼女のほうがよっぽど人気がある。

 絵を見るために並んでるというよりは、彼女との話題性を作るためにクラスメイトたちは並んでる。彼女と話をするための情報集めというものだ。

「誰もあなたの本質を理解してないのね。このエリアを見るのが本筋だというのに」

「そ、そうですね」

 ぷにっと頬をつねられる

「もうちょっと自慢げにしてなさいよ。まぁあの偉そうな態度になるよりはいいけど」

 頷かなかった少女はリーダー格の少女を見る。

「彼女もまたあなたの作品を見てない。作品名が1つなのを疑問にも思わない」

 悲しいものねと彼女はいって、聖域を後にした。

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作品 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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