夏の残り香


 辺りには、規則的な潮騒だけが響いていた。

 すっかりと夜の帳が下り、月の光が君の横顔を照らしている。


「綺麗だね」


 微笑む君の手には、小さく弾ける手花火。パチパチと砂を彩っては、消えていく。


「残り物だけど、結構いいな」


「ね。今年初の手持ち花火」


 夏の香りが、海風に乗って夜空を舞った。

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