第9話 お茶会は楽しい。

ジェームス:

「このクッキー美味っ!」


フリージア:

「ジェームス、貴方は貴族ではないですからそれ程、求めはいたしませんが、それでも私達とお茶を飲むのでしたら最低限のマナーは身に付けてくださいませ」


エル:

「え?ジェームス君って貴族の子じゃないの?こんなに綺麗な格好してるから何処かの下級貴族の子かと思ってたよ。それじゃあ、高級商人の子とかかな?」


ジェームス:

「違う違う、俺はこの伯爵家のただの庭師の倅だよ」


フリージア:

「そうですわ、ジェームスはウチの庭師の子息ですの。ただ昨日、余りにも汚れていたので私が綺麗にしたのですわ」


ジェームス:

「あれ、凄かったな。帰ったら、かーちゃんが何処から服かっぱらってきたんだって開口一番それだぜ?親父が間に入って来なかったら延々とグダグダ言ってたぜ絶対」


エル:

「そうなんですね」


フリージア:

「エル様も体感してみます?私の浄化スキル」


エル:

「フリージア様はそんな事も出来るのですね」


フリージア:

「シアでよろしいですわ。親しい方はそう読んで下さいますの」


エル:

「そうですか。…ではシア様」


フリージア:

「はい!エル様!」


ジェームス:

「俺もそう読んだ方がいいのか?」


フリージア:

「かまいませんわ」


ジェームス:

「んじゃ、シア嬢ちゃん」


フリージア:

「何ですの?その上から目線な呼び方は」


ジェームス:

「いや、俺もう10歳だし、お嬢ちゃんは5歳だろ?俺、年上年上」


フリージア:

「それでも嬢ちゃん呼びは何だかムカつきますわ」


ジェームス:

「わかったよ。ならお嬢で良いだろ」


フリージア:

「そういえば先程もそう呼んでましたわね。まあ、良いですわ」


エル:

「あ、あの私は…」


ジェームス:

「エル様はエル様だな」


フリージア:

「そうですわね」


エル:

「あ、う」


フリージア:

(何故かジェームスにエル様呼びされて照れているエル様が非常に可愛いいですわね)


 その後、下町で流行っているという遊びを教えて貰い3人で盛り上がった。


 いつの間にかエル様がスヤスヤと木陰で眠っていたのでジェームスと近くでヒソヒソとお喋りしていたらルーベンス様とお父様が一緒にやって来た。


 ルーベンス様はエル様をお姫様抱っこして礼を言ってきた。



ルーベンス:

「ありがとう、フリージア嬢。エルザもずいぶんと楽しんだようだ」


フリージア:

「いいえ、余りお構いも出来ませんでしたわ」


ルーベンス:

「ふふ、そうなのかい?」


フリージア:

「ええ、ですのでまた遊びにいらして下さいね」


ルーベンス:

「ああ、こちらこそよろしく頼むよ」


 こうして、私達はルーベンス親子をお見送りして元の生活に戻るのであった。


 ◇◇


「ヤバい美少年キタワァ━━━━━━(n'∀')η━━━━━━ !!!!」


 だけど、誰だろ?


「エル様なんて登場人物いたっけ?」


 何気にブックレットを開いてみたが攻略対象にはそんなのいない。


「えー?あんな美少年なのに攻略対象じゃないとかスタッフ何考えてるんだ?あ!それかあれか?シークレット的な!いやいやいや!1人攻略するのにも2ヶ月は掛かる計算なのに攻略対象5人コンプの後とか辛すぎるんですけど!何?1年かけろって言うの?攻略に……ふふふ。良いじゃない、やってやろじゃない、目の前に人参ぶら下げられて食いつかないのは私の主義に反するのよね!エル様1年後に必ず落としますから待っててねぇ」


 そして、この時の私は全く気付いていなかった。

 エル様がエルザ様だったなんて!


 というか、私には結局フルコンプなんて出来なかったのだ。


 物理的な意味で。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る