第8話 初めてのお友達。

 良く分からないまま、次の日のイベントが始まっていた。


 ◇◇


 マリア:

「お嬢様、お着替えしましょうね。ハアハア」


 フリージア:

「マリア、貴女は半径3m以内に近づかないよう言ったはずよ。リリ、アルミラよろしくね」


 アルミラ・リリ:

「「かしこまりました」」


 マリア:

「そ、そんなぁ〜お嬢様の生着替えがぁ」


 フリージア:

「マリア」


 マリア:

「は、はい!お嬢様!」


 フリージア:

「非常に気持ち悪いですわ」


 マリア:

「具合が悪いのですか!?お医者さんよびますか?それともお医者さんごっこしますか?ハアハア」


 フリージア:

「はぁ。話も通じないとは全く頭が痛くなるわね」


 リリ:

「お察し致します。お嬢様」


 アルミラ:

「なるべく近づけないようにいたします」


 フリージア:

「ありがとう。でも貴女達が怪我をしても困るわ。気に止める程度で問題ないから」


 アルミラ:

「お力に成れず申し訳ございません」


 フリージア:

「問題ないわ。それより」


 アルミラ:

「はい」


 フリージアと以心伝心と言わんばかりの速度でそそくさとマリアに袋を被せて目隠しをするアルミラ。


 マリア:

「な!これでは見れません!」


 フリージア:

「見る必要はないわ」


 マリア:

「見れなければ私の今夜のオカズはどうすれば!」


 フリージア:

「……駄目だ此奴。早く汚物は消毒しないと」


 そんな中、着替え自体は滞りなく終わった。

 着替え自体は。


 マリア:

「ああ、お嬢様の生着替えの音が!絹の擦れる音が艶かしい!滾るわぁ!ハアハア(//∇//)」


 流石に皆、普段のマリアの言動に慣れていてもドン引きである。


 フリージア:

「なんだか陵辱された気分よ」


 アルミラ:

「おいたわしやお嬢様」


 リリ:

「申し訳ありません。私達が弱いばかりにあの様なものにお世話係など」


 フリージア:

「気にしないで。今は貴女達もお世話係でしょ」


 アルミラ・リリ:

「「お嬢様!」」


 フリージア:

「まあ、慣れているからいいわ……これって慣れていいものなのかしら?」


 アルミラ・リリ:

「「お嬢様……」」


 ◇◇


「何故だ!何故、イベント視点がマリア視点なんだ!暗転ではイベントスチルの手抜きじゃないか!お着替えシーンをみせろぉ!」


 フリージアの寝巻き姿から暗転後、可愛い目のドレス姿に変わっていた。


「く、ギャルゲじゃないからそういうシーンはカットされるのか?だが、しかしR18指定だったら……ま、まさか幼女の肌はR18でも不可なのか!?」


 驚愕の事実を前に目が眩む。

 そんな私を無視してイベントは続く。


 そして、その日はルーティンが出来無く客人の接待の為の準備をする事になった。


 ゲーム内、朝10時過ぎ、その人達はやって来た。


 ◇◇


 ???:

「初めましてだね。可愛いレディ。私はルーベンス・バード・フレグスだ。よろしくね」


 フリージア:

「お初にお目にかかります。フリージア・ピュア・ホワイトです」


 ルーベンス:

「おや、これはずいぶんと出来たお嬢さんだ。ほら、お前もご挨拶しなさい」


 ルーベンス氏の後ろにへばりついていた美少年がチラチラとこちらの様子を伺っていた。


 ???:

「は、初めましてエルじゃ……です」


 フリージア:

(あら、噛んじゃいましたね。お可愛い事)


 フリージア:

「エル様ですわね。フリージアと申します。以後よろしくですわ」


 エル様は顔を赤くして父親のルーベンス氏の後ろにジモジしながら隠れてしまいました。


 ルーベンス氏の片足に抱きついているエル様のお姿は大変愛らしいです。


 ◇◇



「半ズボン美少年キタ━━( *´∀`)・ω・)゚∀゚);゚Д゚)・∀・)゚ー゚) ̄ー ̄)=゚ω゚)ノ━━ !!!」


 これは間違いなく出逢いフラグでしょう!!


 ようやく乙女ゲーらしくなったな!


 ◇◇



 フリージア:

「エル様はお花はお好きでしょうか?」


 エル:

「え?は、はい。好きです」


 フリージア:

「では、一緒にお庭の散策をいたしませんか?よろしいでしょうか、お父様?」


 アシュレイ:

「ああ、そうだな。ルーいいか?」


 ルーベンス:

「ああ、構わない。ではレディフリージア、うちの子をよろしく」


 フリージア:

「はい。お任せ下さい。きちんとエスコート致しますわ」


 ルーベンス:

「おや、これは頼もしい」


 アシュレイ:

「すまないな。シアはどうにも勝気が強くてな」


 ルーベンス:

「ははは!良いじゃないか子供は元気が1番だよ。うちの子はどうも引っ込み思案でね。良き友になってくれるとこちらも助かる」


 フリージア:

「では、エル様、参りましょう。お手をどうぞ」


 エル:

「う、うん。ありがとう」


 こうして私達はお手手繋いでお庭の散策に出かけ庭を案内しながら、途中でジョン親子と会いジェームスを借りて散策を続けた。


 フリージア:

「ジェームス、あれは何かしら」


 ジェームス:

「あれは初めて俺が親父に任されたミニ薔薇の囲いだ」


 エル:

「可愛いいお花」


 フリージア:

「あら?エル様はこの花が気に入りまして?」


 エル:

「う、うん」


 フリージア:

「ジェームス、少しエル様の為に貰えないかしら」


 ジェームス:

「あー。そうだな、この辺なら大丈夫かな?」


 剪定鋏で表から余り目につかないミニ薔薇を三本程切り取り棘を削いで渡してくれた。


 私は頭のリボンを1本外してミニ薔薇の茎を括り最後に蝶々結びをしてエル様に差し上げた。


 フリージア:

「どうぞ、エル様」


 エル:

「いいの?」


 フリージア:

「ええ、勿論ですわ。良くお似合いですわ」


 エル:

「あ、ありがとう!」


 ジェームス:

「お前、男の癖に花貰って喜ぶうぐぅ!」


 ジェームスの腹に肘鉄を入れるフリージア。


 フリージア:

「ジェームスはお馬鹿さんですの?いえ、お馬鹿さんでしたわね。人の好みは十把一絡げですわ。誰が何を好もうと批判する事は自分のかくを下げますことよ」


 マリア:

「では!お嬢様をくんかくんかするのも受け入れてくださるのですね!大好きです!お嬢様!」


 フリージア:

「貴女は一体何処から湧いたのですか、マリア!貴女は論外ですわ!」


 マリア:

「な、何故ですか!私はこんなにもお嬢様を愛していますのに!」


 フリージア:

「他人に引かれる様な趣味は人様に迷惑のかからないとことでおやりなさい!」


 エル:

「だ、誰?」


 ジェームス:

「あ〜。伯爵様の所の変態メイド。伯爵家の唯一の汚点って言われてる」


 フリージア:

「あら、ジェームス復活してたのね」


 ジェームス:

「してたのね、じゃないぞ!思っきしド突きやがって!めちゃくちゃ痛かったんだからな!たく昨日今日会ったばかりの人間に躊躇いなく攻撃してくるとか、昨日かーちゃんから聞いた噂通りだったな」


 フリージア:

「あら?どんな噂になっているのかしら?」


 ジェームス:

「なんか毎日走りながらメイドをボコボコにしている鬼姫と、ボコボコにされて悦入ってる変態メイド」


 フリージア:

「へぇ〜〜」


 ジェームス:

「いや!俺が言ったんじゃないからな!そういう噂があるって!かーちゃんが」


 フリージア:

「ふむ。早朝だからと侮っておりましたわね。マリア」


 マリア:

「は、はいお嬢様!」


 フリージア:

「貴女、明日から私の訓練には参加しないように」


 マリア:

「そ、そんなぁ!そしたらこれからお嬢様の息苦しくハアハアされてるお姿も流れる汗の艶かしいさも目に焼き付けられないじゃないですか!ずっとぺろぺろしたいの我慢してたのに!」


 フリージア:

「〜〜〜っ」


 ジェームス:

「お前、汗なんか舐めても塩っぱいだけだぞ?」


 エル:

「あ、あの、えと」


 フリージア:

「………エル様」


 底冷えするかの様な笑みを湛えてエルに話し掛けるフリージア。


 エル:

「ひゃ!ひゃい!」


 フリージア:

「申し訳ございませんが、少しの間、後を向いて耳を塞いでいただけませんでしょうか?」


 エル:

「え?え?」


 フリージア:

「お願いしますね」


 強制的にエル様をクルリと逆方向に向かせ耳を塞がせた。


 フリージア:

「マリアさん?」


 マリア:

「お、お仕置ですね!ハアハア」


 フリージア:

「そうですわよ〜」


 目を据わらせた状態でニッコリ笑うフリージア。


 ゴッ!バキっ!ドカっ!ガスっ!!


 フリージア:

「ハアハアハアハア」


 ジェームス:

「なあ、お嬢」


 フリージア:

「何でしょう」


 ジェームス:

「これ、お仕置じゃなくてご褒美なんじゃね?」


 そこには恍惚な顔を浮かべ、アヘアヘとひくついているマリアの姿があった。


 フリージア:

「だとしても私の気が収まりませんので」


 ジェームス:

「怖ァ〜」


 フリージア:

「あら?ジェームスもご褒美が欲しいのかしら?」


 ジェームス:

「勘弁してくれ」


 そして、何事もなかったかの様に庭散策は続けられ良い時間になったのでリリに頼んでお茶の支度をしてもらい3人でお茶を楽しんだのだった。

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