無法中毒者

作者 白木錘角

9

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★★★ Excellent!!!

 マフィアに支配された無法の街で、危険な薬物の運び屋として生きる男が、別の運び屋の少女に〝奇妙な仕事〟を持ちかけるお話。
 現実ではないどこか、架空の街を舞台にした、現代ものの作品です。約11,000文字の短編で、綺麗にまとまった内容が魅力。主題と言っていいのか、作品を通じて描かれているもの、『無法中毒者』という語の持つ意味そのものに惹きつけられるお話でした。
 面白いのが『主人公』の扱い方。少なくとも、本作単体の物語の主人公としては、おおよそミノイがその役割を担っていること。対して、視点保持者であるネロークは、狙いの読めない存在として描かれています。ある種の「信用できない語り手」のような、この構造がただ独特であるだけでなく、主題に対して強く作用しているところがもう本当に好き。
 彼の行動理念や、伏せられていた狙い。終盤、それが明らかになる瞬間のあの心地よさ。『無法中毒者』という独特の概念について、冒頭で全部説明されて知っていたはずのそれを、でももう一段、感覚として理解し直す体験の楽しみ。
 伝えたいもの、書き表したい何かが最初からはっきりしていて、そこに対してブレずに誠実に物語を進めてゆく、その姿勢が気持ちいいお話でした。