左腕

バブみ道日丿宮組

お題:左の血 制限時間:15分

左腕

 腕の感覚が徐々に薄れてきた。

 これはもう切り取ってしまう以外にいい案はなさそうだ。

「むむむ、お兄ちゃんだいぶやられちゃったんだね」

 飼い主である幼女が嬉しそうな顔をみせる。

「これ痛いの?」

 つんつんと、皮だけが残った腕をつつかれる。痛みのせいか、つつかれたという現象は感じなかった。むしろ、より一層に皮が剥がれかけてるのではないかと興味があった。

「腕上げてもぶらぶらだね。もう取っちゃったらどう?」

「そうだね」

 ぶちりという音と、鈍い痛みとともに左腕は肩から外れた。

「魔術が使いたいって言ってたし、そこらへんに転がってる魔術師の腕を移植してみてはどうだろうか? もしかすると魔術が使えるようになるかもしれないぞ」

「そういうものか?」

 地面に転がるまだ温かみがある魔術師を見つめる。ちょうど良さそうな腕はあるだろうか?

「これがいいと思うよ。この人上級魔術士。このチームのリーダーだったはずだよ」

 少女の足元に近づいて、そのリーダーを見てみる。

 刀で切り裂いたこともあって、なんともいえない死体だった。

「左腕から切って」

「切るのはかまわないけど、肌にぶつけても再生するわけじゃないよ?」

「わかってる。そのために施術魔法だ」

「そういや、君も魔術師の端くれだったか」

 ふふと、少女は笑う

「異端者扱いされてるがな。人間のキメラを作ろうとしてるのだから当たり前だろうな」

 死者に神族の残骸を集めて、1つのクローンを作るーーまぁ未だに成功はしてないらしい。

 自分の遺伝子が悪いのか、素材として拾ってきた死体が悪いのか、あるいは神族の残骸がとてもオーパーツといったりと。

「ほれ、左手でこいつの腕をつけてみろ」

 差し出された腕をいわれるがままに左肩へとくっつける。

「あとはこれだ」

 少女はカバンから取り出した魔術刻印の布が大量に書かれたものを僕を中心として、両腕をぐるぐると巻いた。

「効果あったろう?」

「すごいな。もう皮膚と骨の間隔がある。下手したら指を動かせそうだ」

「まぁまだそのままにしるんだな。ついでに傷の手当も行ってる」

「助かる」

 そういって床に寝転ぶ。

「疲れたー。どうして魔術師ってやつはめんどくさい方法でばかり攻撃してくるのだろうか」

「そりゃ疲弊させたりして、油断を作るということを念頭に置くのだろう」

 そのまま布を30分はつけておくようにと、少女は廃ビルからでていった。

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左腕 バブみ道日丿宮組 @hinomiyariri

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