とあるお昼
とある昼下がり。
「うわぁ! いっぱい載ってるよ?」
「だろ? ここのランチメニューは豊富なんだ」
少しずつ混み合い始める店内には、拓都とフェリシティの姿。
「本当だね!? それにこういう雰囲気……なんか好きだな」
「だったら良かった。味の保証もするからさ」
そんなことを口にしながら、2人が今まさにお昼を堪能しようとしている場所は、黒前駅前にある居酒屋『ど真ん中』。
ランチタイムとなれば、学生やら会社員の姿が多く見られる場所で間違いない。ただ、男女比率で行けば6対4位か。思いの他拮抗はしている。
とは言え、初デート。しかもイギリスから転校して来た女の子を連れて来るには少々レベルが高い気がするのだが……それでも拓都はお昼ご飯を食べる場所としてここを選んだ。
その選択は新による助言でもなんでもない。拓都自身が決めたこと。
「ここに書かれている物、全部700円? 海鮮丼に豚カツ定食。親子丼!? 凄い凄い」
「確か15種類だったかな? それプラス季節によっては限定メニューも追加されるんだ」
「うわぁ」
その理由は至って簡単だ。
その味は勿論、拓都にとってフェリシティは良い意味で特別な人物ではないという意思表示だった。
外国の子だとか、女優だとか……関係ない。ここに居る以上日本人として、黒前市民として接する。
だからこそ、ここに連れて来たかった。
もちろん、行先を告げた時の表情が曇っていたら別の場所も考えてはいた。しかしながらフェリシティの反応は予想以上のモノで、拓都が求めていたそれに近い。
その光景だけでも、拓都は十分に嬉しさを感じている。
「さんちゃん! 何がおススメ?」
「んー味は間違いないからな……強いて言うならチキン南蛮定食かな?」
「チキ……あっ! 滅茶苦茶美味しそう!」
「海鮮丼セットも捨てがたいけどな」
「海鮮……はうっ! こっちも美味しそう!」
「だろ?」
「うぅ。チキン南蛮……海鮮……迷う……」
「ははっ」
「んー! さんちゃん! 提案があります! というよりお願いっ!」
「ん? どうした?」
「さんちゃんは何を頼む予定?」
「俺は……チキン南蛮かな?」
「じゃあ、どうでしょう? 私の海鮮丼と半分こしませんかっ!」
「おっ? シェアってこと?」
「うっ、うん。そういうの嫌だっていう人も居るから、その……差し支えなければ……」
「良いよ」
「えっ?」
「良いに決まってるじゃん」
「さっ、さんちゃん……」
「むしろこっちからお願いしたい位だぞ?」
「あっ、ありがとうー!!」
「どういたしまして。じゃあ、呼ぶか?」
「うん!」
「「すいませーん!」」
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