とある午前中




「よっ、フェリ……シティ」

「おはよう! さんちゃん」


「ごめん、待たせたか?」

「全然。私が早く来過ぎたせいだよ」


「そっか。じゃあ……行くか?」

「うんっ!」


 ……やっべぇ! フェリシティの奴、いつものTシャツとジーパン姿じゃないだと!? 雰囲気変わり過ぎだろ? って、当たり前か。相手は人気女優なんだ。おしゃれな服装も着慣れてる……って! 違う違う。なんだ? 雑誌やらテレビの画面越しに見るオシャレな姿とは違うくないか? 何というか……マジでオフモードの女優ティー・キュロチャーチ? 


 くっ! タンクトップにちょっと透けてるシャツ。しかもスカートとか反則だろ! セクシー+キュートか? 最高の組み合わせじゃねぇか! 

 一瞬谷間に目が行っちまったよ。バレてるか? バレてないよな? 


「どうしたの? さんちゃん?」

「ん? なんでもないよ」


 何とか慣れろ。何とか頑張れ。


「ふふっ。ねぇさんちゃん?」

「なんだ?」

「楽しみだねっ」


 ……ヤバい。鼻血出そう。






「うわぁ! 可愛いぃ!」

「可愛過ぎだろ?」


 ……どっちがとは言わないけどさ。けど、まずは順調にプラン通り来れた。

 新の言う通り、ペットショップで硬い空気を壊す。確かに子犬やら子猫を見れば頬も緩むわな。

 事前にフェリシティがペット大丈夫なの聞いてたし、微妙な反応だったらプランBに変更。ただ、この反応は……まずは正解だ。


「見てこの子! しっぽフリフリ」

「いやぁこっちの子も負けじと振ってるぞ?」


「さんちゃんは犬猫どっち派?」

「甲乙つけがたいな。家では親がペット飼うの反対だし、どっちも欲しい位だ」


「本当? 私のトコも共働きって事もあってペット駄目だったんだ。どっちも欲しいな」

「おっ、気が合うな?」


「ふふっ。将来は……ペット飼いたいね? さんちゃん」

「おっ、おう」


 低い姿勢から上から目線!? その表情に隣の子犬。さらに胸元が……ゴクリ。まさに一石三鳥かよっ!






「んー可愛かったぁ。名残惜しい位」

「癒しの宝庫だったな」


 ふぅ、初手は大成功だった。そんじゃ次は、


「そういえばフェリシティ、小腹空かないか?」


 今日、約束の時間はいつもより早い10時。そして今は10時45分。

 何とも計画通りの進行だ。そして、


「確かに! ちょっと空いたかも」


 予想通りの返事! となればこのままプランA続行。次の行先は……


「ハフハフッ。うんまぁ」

「だろ?」


 行きつけのたこ焼き屋台! これに関して言えば、女優ティー・キュロチャーチの公式プロフィールで確認済み。幸か不幸か俺もたこ焼きは好きで、ここのたこ焼きのレベルの高さは知っている。


「外カリ中トロ最高ー」


 ……なんだ? 食べてる姿も可愛くね? もうちょっとこの光景を見ていたい気がする。


「物足りないな? 俺もう1つ買ってくるよ。お昼もあるし6個入りで良いかな?」

「あっ、待って? 今度は私が……」


「良いって良いって」

「えっ? いいの? ありがとうっ」


 こんな光景拝めるなら、お金いくら使ってでもお釣りがくるわ。


「どういたしまして」






 いいぞ。プランAは順調だ。更には幾度とないサービスショットも拝められたし、最高過ぎる。

 それにフェリシティも楽しんでるみたいだな。


 となれば、追い打ちと行こうか。

 ここは普通に来ればギャンブルの様な場所だけど、今日は違う……らしい。いや? 情報通の新の情報を信じろっ!


「おっ、フェリシティ! 見ろ!」

「あっ! これはガッチリ掴んでるっ……やったぁ!」


 きっ、来た!


「ほら」

「モフモフな犬のぬいぐるみだぁ」


 すげぇぞ新! どこから仕入れてきた情報かは知らないが、このゲームセンターは毎月最後の水曜日にアームの調整が入り、大盤振る舞い状態になるっての本当じゃねぇか! 取れずに変な雰囲気になる事もないぞ?


「取れて良かったよ」


 しかも300円位か? フェリシティも嬉しそうだし、


「ありがとうっ! さんちゃん!」


 完璧だ……完璧すぎる。じゃああとは……



 ≪あと、焦るなよ?≫

 ≪大体分かるだろ? 遊びに行って即キスやらそれ以上は……≫



 はっ! なぜ新の言葉が……って、いやいや有り得ないだろ? 流石に……


『……状況ねぇ。って、俺何考えてんだよ。あぁ、新の奴が変な事言うから変に意識しちまうじゃねぇか。まだ手も握った事ないっての』

『ん? 手? 2人きり……デート……手を繋ぐ……あれ? 付き合ってるなら当たり前?』

『待て待て? 手を繋いでデート? フェリシティと? そりゃそどうせなら繋ぎたいけど……』


 流石に……手は……


「さんちゃん! あっちにモフモフな猫ちゃんがっ!」

「えっ? おう! 任せろ」




 繋ぎたいなぁ……




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る