とある日~初めての……~
「―――なんだよぉ?」
「そっ、そうか」
いつもと変わらない時刻と気温。そして見える2人の姿。
ただ、今日はどういう訳か拓都の表情は重く、どこか冴えない。
ここ数日の軽快な言葉は鳴りを潜め、心ここに在らずと言ったところか? それとも体調でも悪いのだろうか。
事実、フェリシティは最初に言葉を交わした時点で異変を感じ取っていた。
……あれ? さんちゃんなんか変だな? 具合悪い……のかな?
とは言え、折角ここまで来て貰ったのだから、要らぬ心配はしない方が良いのでは? そう思い、いつも通り声を掛け、笑顔を見せ、話題を提供し続けた。
だが、それでも拓都の様子は変わらない。
やっぱり変だよ。考え事? それともやっぱり体調不良? 心配させたくなくて来てくれたとか? だとしたらこれ以上無理はさせれないよ。
こうして、思い切ってその話題に触れようとした瞬間だった、
「ねぇ、さ……」
「なぁ、フェリシティ?」
被せる様に、拓都が声を洩らす。
その表情は見た事もない程真剣な……捉え様によっては思い詰めたモノにも見える。
その表情を見たフェリシティの脳裏には最悪なイメージが浮かび上がる。
えっ……どうしたのさんちゃん? 体調不良だよね? まさか……いや……まさか……
「どっ、どうしたの?」
フェリシティの心臓の音が一気に大きくなる。
「あの……さ?」
「うっ、うん……」
胸が締め付けられ、血の気が……
「明日どっか遊びに行かないか?」
「えっ!?」
血が……
「いやその、だから公園で話してるのも楽しいけど、どうせならどっか遊びに行きたいなって思ってさ?」
「あそ……び……? それってそれって……デート!?」
「えっ? あっ、あぁデー」
「行きたい行きたい!」
一気に沸き上がる。
そして、その思いがけない反応に驚いたのは拓都。
やっ……やったぞ? 言えた! いやいやまだだ、フェリシティに断られたら意味な……って、うおっ!
まぁ単純な話、彼がいつもと違っていたのは、どうやって遊びに誘うかという戸惑いと緊張。それらからくるものだった。
だからこそ、一時の安堵感に包まれていた彼にとって、フェリシティの反応は予想外。良い意味での予想外。
そして一瞬驚いたものの、フェリシティの雰囲気が、声が、表情が……何を表しているのかはすぐに理解が出来た。
「おいおい、喜びすぎじゃね?」
「だって……デートだよ? さんちゃんが誘ってくれた!」
「そりゃ誘うだろ!? つっ、付き合ってるんだし……」
はっ! うぅ……ヤバいヤバイ顔暑い! 正直言うとこの公園で話してるだけでも幸せで、満足感で溢れてたよぉ。でもそうだよね? 色んな所に一緒に行くのも付き合ってるのなら当たり前なんだよね?
あれ? そう言えばさんちゃんとどこか行くの初めて? 小さい頃もこの公園でしか遊んでなかったし、黒前に来てからも学校と公園って事は……初デートだぁ!
って、ダメよ? 落ち着いてフェリシティ。このままだとテンションのおかしい子だって思われちゃう。後でお部屋で喜びに浸りましょう? ゴホン!
「そっ、そうだよね? でも嬉しいな。じゃあ明日デート……しよっ?」
ぐっあぁぁぁ! なんだよその笑顔! 可愛すぎだろ? 心臓2~3個持っていかれたぞ? ちゃんとあるか? 俺の心臓? うん。あるな。
にしても、予想以上に喜んでくれてる……んだよな? 正直女の子誘うなんて小さい頃のフェリシティ以外にした事ないぞ? この歳になるとその重みも恥ずかしさも倍増だな。こういうメンタルだけは幼き自分を見習いたいよ。
けど、まぁとにかくOKは貰えたな。となると……
OKしちゃったっ! ふふっ。あれ? でもそうなると……
「おっ、おう。じゃあここ集合で良いか?」
「うん。楽しみだなぁ」
「俺もだ」
「ふふっ」
家帰ったら、最高のデートプランを考えないと!
家に帰ったら、着ていく服選ばないと!
これはどうやらどっちも……十分に寝られそうにないかもしれない。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます