魚座は燃えているか。

「敵エース接近!」

 コロニーに到着直前、敵エースの反応がレーダーに映り始める。


「レーヴァテイン、近接特化型だよ」

「確認したら、どうするん?」

「一人はコロニー内部へ侵入して動力部の破壊を」

「ほな、後二人はエースの相手やな」

 問題は誰がエースを相手にするか。


「先に言っておくとね、私は貴方達三人があのエースに負けてるって思ってない、勝てるって確信さえしてるよ」

 もしかしたら、確かにアイとヤタさんの腕前ならなんとかなる可能性はあるかも知れない、それでもリスクは高いと思うけど。


「スノウ、自分は無理だって思ってるでしょ? 違うよ、スノウだって対処できるって私、信じてるんだからね」

「あはは、ありがとうございます」

 お世辞でも持ち上げられると嬉しく感じる。


「だから采配はこうだよ、アイがコロニーに潜入して内部から動力部を探し出して破壊して、ヤタとスノウは…レーヴァテインの相手を」

「な……っ!」


 自分がヤタさんとペアとは言えエースの相手をしろって? 無茶だ、レオニダスの時は回避するだけだし、Archeの方が若干有利だったからまだなんとか出来た、でも今回は純粋に腕も機体性能も勝ててない。


「聞いて、敵Archeは連戦により疲弊してるしエネルギー残量だってもう残り少ない、この状態なら十分勝機はあるの」

「………はい」

 イチゴさんにも考えがあって自分をエースと戦わせるのだとわかる。

「コロニー内部は激しい抵抗と室内戦が予測される、これは近接距離の遭遇戦ができるアイの機体が一番向いてるの、というか二人の機体があまり向いてないの」


 アイの兵装はショットガン二丁に基地内の破壊が簡単に可能な近接武器だ、確かにこの中で一番向いてるし、自分とヤタさんの機体は遠距離向けで基地内の破壊工作が簡単にできる装備は積んでいない。


「わかりました」

「よし、予測30秒後に射出方式でまずヤタとスノウが出撃、その後10秒後にアイはカタパルトの射角45度発進を」

「「「了解」」」


 まだ不安はある、ただいつかどこかのエースと戦うことにはなる、それがちょっと早くなっただけ、地球にいた頃に呼んだ記憶がある入門書によれば1年ぐらい経てば一度くらい経験を持つ可能性がある程度だっけか、アテにならないなアレ。


 戦艦がコロニーのシールドに反応し、シールド同士の干渉で緩和しながらシールド内に侵入していく、強い衝突に寄る反動が身体を襲うのを堪えながら侵入が完了するのを待つ。暫くすると幸いなことにあの戦車のように途中で止まらずに済み、無事コロニーのシールド内に到達する。


「コロニーのシールド圏内に到着、これよりヤタ、スノウ出撃」

「ヤタ、出る」

「スノウ、行きます」


 二人で垂直方面にロボットアームと台座によって射出させられる、すぐ背後にはコロニーの虹色に光る半透明なシールドの光が見える。

「当たるなよ、一瞬で弾き飛ばされる」

「はい」


 ヘルメットのレーダー上に警告メッセージと赤い点が表示される、高速で迫ってくるエースの表示だ。エースは真っ直ぐにコチラへ向かってくるが、途中で急カーブをしながら軌道を変化させる、向かっている方向は予定通りカタパルトで真っ直ぐコロニーへ向かったアイだ。

「止めるぞ」

「はい!」


 二人でそのエースに向かって近づきながら射撃を斉射するが、距離とRKSのせいで中々有効な攻撃が入らない…が、敵に回避行動をさせ接近を遅らせる事自体は出来ている。


「ちぃ! 今日はこんなのばっかりか!」

 共用通信のチャンネルから、敵のパイロットの声が聞こえる。

「通信?」


 敵エース、レーヴァテインのパイロットはこちらの方向を見ながら叫んでくる。

「…っち、だったらお前らから…殺してやるッ!」

 来る、クイックブーストをかけ、急な方向転換をしながら迫ってくる。

「来い」


 ヤタさんが自分の前に立ち、弾幕を張りながらレーヴァテインをひきつけてくれる。「お前から死ぬかぁ!?」

 レーヴァテインの最初の一撃を回避して、ヤタさんは銃を撃ちながらクイックブーストを使い後方に一気に飛ぶ、しかしだが数が勝負のフルオート射撃では敵のRKSシールドが強力すぎて節分の豆ぐらいにしか効いてないように見える。


「だったら…」

 実弾でダメならエネルギーライフルを試してみよう、こっちはチャージ式でトリガーを離したら発射されて使い勝手が変わるが、その分貫通力と威力は高い。


「ヤタさん!」

「大丈夫だ!」

 ヤタさんは当たれば一撃で落ちる攻撃の中、引き付けながら回避に専念している。

「くらえ!」


 3秒のチャージをしてレーヴァテインに向かって放つ、エネルギー弾は激しく動くパイロットの動きに対して当てづらかったが、キチンと頭に命中してくれる。

「なっ……!?」

 レーヴァテインのパイロットが驚愕の表情でコチラを見てくる、信じられないとゆう様子で一度距離を取ってくる。


「ダメージは、軽そうだな」

 ヤタさんが言う通り頭に命中したのに殆どダメージ入って無さそうに見える、強力なシールドに阻まれて普通なら一撃で頭を吹き飛ばせるような威力も、精々金属バットでフルスイングしたぐらいの威力しかなさそうだ、それもヘルメット越しなのでダメージはあまりない。


「っち、キルマークもねぇ雑魚じゃねぇか…!」

 コチラを見て、上下左右にクイックブーストをかけて頻繁にフェイントをかけてくる、落ち着け、大丈夫。

「ラッキーショットぐらいで…調子にっ!?」


 フェイントの後コッチへ直進してくるタイミングに合わせて射撃する、今度も頭に命中してくれて加速と同時に当たったことで、レーヴァテインは縦に一回転してから、再びブーストを起動して離れていく。


「……っち、嘘だろ?」

 直撃してからヤタさんの追撃を避けるように退避したのは流石に思える、しかし加速に合わせて撃ったのにそれでも対してダメージは与えられないのか。


「どういうことだ…? オートエイムじゃ今のフェイントは捉えれねぇ、よっぽどの高級品を詰んでるってボンボン機体には…みえぇねぇよな」

 …悪かったな、最新式なだけでカスタムもろくに出来てなくて。


「…っち、今日は骨のあるザコが多い」

 レーヴァテインは旋回しながら牽制がてら腕に装着してあるサブマシンガンをばら撒いてくるので、慌てて回避行動をするが数発掠ってしまいアラームが鳴る。

「回避の方は大した事ねぇな…」


 このまま、距離を保ちつつサブマシンガンを連射されていれば面倒だったのだが、相手はサブマシンガンを撃ちながら近づいてくる。

「こっちは時間がねぇんだよ! とっとと落ちやがれ!」

 サブマシンガンを20mぐらい手前まで撃ちながら接近し、近づいたら両手で大剣を振りかぶってくる、だけど弾幕がないなら迎撃ができる。


「いまっ!」

「っぐ…!」


 武器を切り替えた瞬間に今度は胴体にエネルギー弾を当て、動きを止めその間に相手から距離を離す、相手からしたら時間をかければ自分を堕とす事は簡単なのだろう、けれどコロニーへ侵入したアイや自身のエネルギー残量を考えるとそんな時間を掛ける時間もない。


「…クソがッ!」

 それでも同じ様にサブマシンガンから大剣への連携を、今度は10m程の近距離まで粘ってきたが、それでも俺なら当てられる…!


「ここだ!」

「ちぃ!」

 再び攻撃を当てるが今度は剣に攻撃を阻まれる、それでも距離を離すのに十分な時間は稼げるとともに。


 ズドン…!


 ヤタさんがその間に狙撃用でもある単発式のライフルに切り替え、自分が止めた瞬間に肩口に攻撃を命中させた。

「っが……っう!」


 共通通信のチャンネルから、レーヴァテインのパイロットのうめき声が聞こえる。

 レーヴァテインの左肩のパーツは吹き飛び、赤く染まりながらパイロットスーツは血を滲ませる、直様パイロットスーツに流れる液体が宇宙空間に露出することでジェルになって固まり、宇宙空間への生身の露出は防ぐが傷を治すわけじゃないので左肩から下はもう満足に動かせないだろう。

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