我が家爆走。
「次、前方2時の方向、上方角30度」
イチゴがそう宣言すると同時に自分で操縦し、既に次の獲物へと突進している。
こうなると
「大人しく掴まれえええええええええ!」
ハイウェイでカーチェイスをするがごとく逃げるが、少しでも掠った瞬間に死が待っているし、相手の方が最高速も早いというオマケつきだ。
「ひぃぃぃぃぃいぃぃぃ!」
イチゴ達には聞こえていないが、追いかけられる方は悲鳴をあげていた、唯一持たされた兵器は取り回しが悪く、背後に撃つならば機体ごと旋回するか、スピンターンを決める必要があるが、そんな事して減速すれば即ぶつけられる、そうでなくてもシールドを減少させようと戦艦と上にいるArcheからの射撃が鬱陶しい。
「インサイドループ…そんなんで振り切れないよ!」
かと言って曲技飛行と呼ばれるようなループやバレルロールなどの回避行動を取っても匠に追い付いて来ており、水瓶座のパイロットには打つ手がない、しかも。
突如として、水瓶座のパイロットの視界が白に染まる。
「うっ…あぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」
それが閃光弾だと、水瓶座のパイロットは瞬時に理解して絶望する、当然水瓶座のパイロットは閃光弾に対する訓練は山程積んできているし慣れている、だがここは乱戦地帯であり冷静な対処をするなら減速する必要がある、減速しなければどこかの
「捉えたよ!」
イチゴの操縦による突撃がパイロットを捉えた、クリーンヒットした機体は爆発しながら戦艦を沿うように四散していく、実際にパイロットが取った行動が減速だった、いつもの訓練通りの動きを反射的に取ったがための減速、それで命を落とすことになった。
「ナイスヤタ!」
閃光弾を撃ったのはヤタだ、相手の進行方向に上手く閃光弾を撃ち込んでいた。
それから戦場は動いた。
中型以上の戦艦が一斉に後方へ引き始め、代わりに高速移動が可能な小型艦が前に出始める、敵機体の攻略法をイチゴ達が示したのを真似し始めたのだ。
それからは戦場は一方的だった、勝ち目のない死の鬼ごっこが始まり、永遠に追いかけ回される水瓶座のパイロット達、幾人かは素早く撤退し始めるのだが、実害を出された連邦側の戦艦の執念は凄まじく、月の重力圏外を離れても追いかけ回した。
月の重力圏外では、Archeがいる。
月の重力圏内では重さで行動が制限されるArcheでも重力圏外では別だ、撤退しようとした水瓶座は複数のArcheに接近戦を挑まれて破壊されていった。
終わってみれば一見、宇宙空間での戦闘は圧勝に見えるが、その実態は精々痛み分けがいいところだろう。
なにせ最初に落とされたり、内側で行われたテロ工作の被害が大きすぎる。
イチゴ達PMC自体は利益になったのは間違いないのだが、連邦国側の被害は甚大で、早期対策と責任追及問題で頭を悩ませることになりそうだ。
「結局三機撃墜なら上々か…」
「そうだね…」
ワダツミのブリッジで戦闘終了時のスコア報告と記録を、合衆国側に送信しているところで、そこに機体を脱いだヤタも戻ってくる。
「「お疲れ様」」
「お疲れ」
イチゴの目線にあるのが、雨の基地の被害にあったドームだ、現在応急処置がとられ、穴は塞がっているが地上の被害は甚大で未だ煙と炎があがっている、ドーム自体も大型艦が大量のワイヤーで引っ張り上げることでコレ以上の不可を抑えている。
「黙祷しとくか」
「うん」
三人でデータが送信し終わるまで黙祷をし、帰還する、時刻は深夜2時を回ったところだ。
「そう言えばスノウ達から連絡は?」
「無事だってさ、ただ寝るところがないから経費は出すって言っといた」
「りょ~かい」
ゆっくりと戦艦は帰投を始める、今だと待ち時間は1時間ぐらいだろう。
「一応寝てると思うが連絡だけは送っとくか」
「そうだね」
【戦闘終了コレより帰投する、寄港の待ち時間は1時間ぐらいになると思う】
そうやってメールをしてすぐ、連絡が返ってくる。
【よかった、助かります、基地で待ってます】
「どうやら宿は見つかってなかったらしいよ」
「ありゃ、そうだったんだ」
実際、実はこの時スノウとアイは本格的にラブホテルに宿泊する覚悟を決めていたのだが、もっと簡単な解決法が既にあったのだ。
「ねえ、セントラルタワーに二人って巻き込まれたんだよね?」
「そうだな」
「だったら警察に取り調べされてたら泊めてくれたんじゃなかったっけ?」
「その筈だな、てことは取り調べ受けなかったんじゃないか?」
「じゃあ事件に巻き込まれてなかったのかな、病院にも行ってないし」
「いや、なんかテロリストとは戦ったって報告は来てるんだよな…」
「あれ、なんで泊まるとこないの?」
「…さあ?」
実は警察では取り調べの結果により、深夜になったり宿泊先を確保できない場合宿泊する事が認められる場合がある、なんなら怪我もしてたり爆破に巻き込まれたので、念の為検査をしたいと申し出れば病院にも泊まれただろう、実際、パンゲアのベッグは相方と警察に宿泊している。
二人がその事を知らされるのは、深夜三時を回ってワダツミに帰った時なのだが、ソレを聞いた脱力と疲労で二人はそのまま暫く立ち上がれず、二人してソレゾレのベッドに運び込まれることになる。
二人は我が家の爆走を待つ必要もラブホテルに入るか悩む必要も、本来ははなかった筈だった。
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